撮影日記


2023年12月31日(日) 天気:曇一時雨

2023年に入手したカメラと撮りおさめ

例年のように12月31日には,今年1年間にお迎えしたカメラ,レンズなどについてまとめてみようと思うのだが,あらためて振り返ってみると,今年はあまりたくさんのカメラやレンズを入手していないことに気がついた。とはいえ,数は少ないながらも,中身はそれなりに「濃い」ものだと思っている。個人的にとくに重要であると感じたアイテムは,2つある。

そのうちの1つは,AF RIKENON 50mm F2である。RICOH XR6ボディとセットで入手した(2023年6月22日の日記を参照)。このセットは,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」vol.71には「リコーXR6スクープアイ」として掲載されている。これこそが,「オートフォーカス撮影ができる一眼レフカメラとして,さいしょに発売されたモデル」である。MINOLTA α-7000よりも4年早く,PENTAX ME-Fよりも1年早く発売された,オートフォーカス撮影ができる一眼レフカメラなのである。

とはいえ,RICOH XR6を「オートフォーカス一眼レフカメラ」とよぶわけにはいかない。このカメラボディには測距センサなど,オートフォーカスに関する機能はまったく含まれていないのである。だからもし,このレンズ,AF RIKENON 50mm F2が別の機種とセットで発売されていたら,そちらのほうが「オートフォーカス撮影ができる一眼レフカメラとして,さいしょに発売されたモデル」ということになる。とはいえ,一眼レフカメラがオートフォーカスになってもよいのではないかということを市場に投げかけた功績は無視できないだろう。

今年のうちに入手したものとして特筆しておきたいものが,もう1つある。それは,「Thomson Brothers」という銘のはいったレンズである(2023年4月30日の日記を参照)。これは,19世紀中につくられた可能性が高いのではないかと思っている。

以前から,「日本カメラショーのカタログに掲載された,すべてのメーカーのカメラを体験すること」(すべての機種をと言いたいところだが,それはあまりにもハードルが高いので,せめてすべてのメーカーのカメラをとしている)と「なんでもいいから,19世紀のカメラを体験すること」を目標としている。もちろん,いまだにどちらも達成していない。たとえば,35mm判一眼レフカメラに限定したところで,ペトリやミランダ,ライカなど,未体験のメーカーがたくさんある。また,写真というものの発明は,ダゲールがダゲレオタイプを完成させた1837年(公表は1839年)とされている(2010年9月5日の日記を参照)ので,19世紀に製造されたカメラもそれなりの数が存在していたはずである。19世紀も末期になれば,コダックによるロールフィルムを使うカメラも量産がはじまっているはずである。だがいまだに,19世紀に製造されたカメラは入手できていない。19世紀中につくられたものではないかと思われるGOERZ製のレンズはなんとか入手できたものの(2020年9月26日の日記を参照),いまだにほんとうに19世紀中のものなのか,具体的な製造時期が確認できていない。
 この「Thomson Brothers」のレンズが実際に19世紀のものだった場合,これとセットで入手した暗箱(2023年4月29日の日記を参照)は,19世紀のカメラなのかもしれない。しかし,もしそうであったとしても,暗箱そのものには製造者や製造時期を示す刻印などがなく,確認する術がなさそうである。この暗箱はかなり古そうな形式のものであるとはいえ,後の時代に模倣された可能性もあるわけで,その形式だけで判断することはできない。

今日は天気予報の通りに,朝から曇空が広がっており,少し雨も降った。明日以降は晴れ間も出るらしいが,今日の晴れ間は期待できそうになかった。それでも午後になるとときおり,日ざしが見える瞬間もあった。そこで初日の出ならぬ,末日の入りとでも表現すればよいのだろうか,その年最後の日没を今年の「撮りおさめ」にしようと考えた。今日は,近鉄の「新春おでかけ京阪奈1dayパス」というフリー切符を買っている。

これは,大阪府,京都府および奈良県内の近鉄全線に乗り放題(特急を利用するときには,特急料金が別途必要)という切符である。この「近鉄全線」には,近鉄「生駒ケーブル」線も含まれている。向かうは,生駒山上遊園地である。

このケーブルカーに乗車するのは,何10年ぶりのことであろうか。車内はとても空いていたので,先頭のいわゆる「かぶりつき」席に,楽に着席することができた。レールの間にワイヤーが見えるのは,ケーブルカー特有のことである。また,窓の下部が丸くなっていることから生駒ケーブルであることもすぐにわかる。いまこのケーブルカーの車両の外観は,イヌおよびネコをモチーフにしたものになっており,車両の正面がメガネをかけたその顔になっているのである(*1)。
 生駒山上駅に着いたのは,16:36である。これは,山上線の最終列車の1本前である。日没は16:57くらいのことなので,17:09発の最終列車にはじゅうぶんに間に合う。ともあれ展望台へ急ぐが,残念ながら空は厚く曇ったままであり,「末日の入り」を見ることはできなかった。

Kodak DCS Pro 14n, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

もっと早く来ていれば,少しは晴れ間も見えたのかもしれないが,ともかく風が強い。今日はそもそも,やや荒れ気味の天気が予報されていた。そのうえ,見晴らしのよい山の上である。このような寒くて風の強い場所に長時間とどまっているのも考えものというものなので,これでよかったのかもしれない。
 「末日の入り」を見ることはできなかったが,ケーブルカーで山を下るときに,ちょっとした夜景を楽しめたことになるので,これでよしとする。

なお,この「新春おでかけ京阪奈1dayパス」有効期間は,12月31日から1月8日までの「乗車当日限り」であるが,「12月31日に使用開始の場合は,翌日1月1日まで有効」になるというものである。これは,初詣のために12月31日の終夜運転を予定している近鉄ならではのことであろう。つまり明日も,この切符でおでかけができるのである。

カメラやレンズの入手とは直接には関係しないが,「関式サロン露出計」に「VB型が存在しないこと」を確認できた(2023年3月17日の日記を参照)のは,1つの大きな収穫である。一方で,「奥原写真機製作所」については,それが存在していたはずの現地で簡単な聞き取りをしてみたものの,大きな収穫は得られなかった(2023年5月3日の日記を参照)。今年も,いろいろなカメラや写真用品について知ることができた。逆にて,あらたな知識を積み重ねられなかったものもあったが,いずれにしても楽しむことができた。来年もまた,いろいろなことを知って楽しむことができればよいと考えている。

*1 近鉄生駒ケーブル (近畿日本鉄道)
https://www.kintetsu.co.jp/senden/ikoma_cable/


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