撮影日記


2023年06月22日(木) 天気:曇

これがはじめてのAF一眼レフ
AF RIKENON 50mm F2とRICOH XR6

きれいな写真を撮るためには,露出とピントを適切な状態にあわせる必要がある。これらを自動的に調整することができれば,だれにでもきれいな写真を撮ることができるようになる。
 自動露出機構をもったカメラは1930年代に登場しているが,一般的な存在になったのは1960年代以降のことと考えてよいだろう。その当時,自動露出機構をもったカメラは「EE(Electric Eye)カメラ」とよばれていた。当初の自動露出は,シャッター速度ではなく絞りを自動的に調整するようになっていたものであり,それを「電気の眼」と表現していたようである。のちに,シャッター速度も自動的に調整するようになったころには,EEではなくAE(Automatic Exposure)とよばれるように変化している。
 ピントを自動的に調整する「自動焦点機構」をもったカメラとして,世界ではじめて市販されたものは,よく知られているように1977年に発売されたKonica C35AF(初代ジャスピンコニカ)である。それまで実現されていなかったことが実現されたのだから,当然のように大ヒット商品になった。自動焦点機構は,オートフォーカスともよばれ,AF(Auto Focus)と略されることも多い。だが,初代ジャスピンコニカにおけるAFの精度は,現在のレベルから見ればけっしてじゅうぶんなものではない。最短撮影距離から無限遠まで,数段階程度のピント位置が選択されるだけである。それでも,どちらかというと広角で無理に大口径ではないレンズ(38mm F2.8)で撮影し,サービスサイズくらいの大きさにプリントするのであれば実用的といえる程度の性能は満たしていた。
 プロやマニアが使う,一眼レフカメラでオートフォーカスが取り入れられたのは,それよりのちのことになる。ところで,世界ではじめて市販されたオートフォーカス撮影のできる一眼レフカメラはなにか。1985年に発売されたMINOLTA α-7000ではない。オートフォーカスの一眼レフカメラとして交換レンズもじゅうぶんに用意されるなど完成度は高かったが,1983年4月に発売されたNikon F3AFのほうが先である。さらに前,AFレンズは1本しか用意されていなかったが,PENTAX ME-Fは1981年11月に発売されている。
 じつは,「世界ではじめて市販されたオートフォーカス撮影のできる一眼レフカメラ」はなにか,それを決めることは困難である。困難であるが,強いて決めるならば,1981年4月発行の,日本カメラショー「カメラ総合カタログ vol.71」に掲載されている,「リコーXR6 スクープアイ」ということになるだろう。

RICOH XR6は,このとき新発売になった絞り優先AE専用の,シンプルで低価格な一眼レフカメラである。同時期に発売された,AF RIKENON 50mm F2というレンズと組み合わせることで,オートフォーカス撮影ができるようになる。このセットが「リコーXR6 スクープアイ」として掲載されていた。ただ,このレンズは,Kマウントのものであれば,たいていのカメラで使える(のちの,フラッシュを内蔵したカメラなどでは,その部分が飛び出しているためにこのレンズを装着できないことがある)。だから「世界ではじめて市販されたオートフォーカス撮影のできる一眼レフカメラ」は決められないのである。当時のKマウントのカメラ,ほぼすべてが該当することになる。強いて決めるならば,「スクープアイ」のセットとしていちばん上に掲載されいてたRICOH XR6になるわけである。実際にそのすぐ下には,RICOH XR500やRICOH XR1000Sと組み合わせた「スクープアイ」も掲載されているのである。いうまでもないが,RICOH XR500やRICOH XR1000Sはそれぞれ「リコーのサンキュッパ」「リコーのヨンハッパ」として低価格をセールスポイントにしたカメラである。

ともかく,「スクープアイ」の中核になるものは,この交換レンズAF RIKENON 50mm F2である。
 レンズの上部に,距離を測定するためのセンサの窓がある。これによって被写体との距離を計測し,その結果をレンズに反映させるようになっている。極端に言ってしまえば,一眼レフカメラの交換レンズとして,ジャスピンコニカを装着しているようなものということになるだろうか。このレンズの電源として,2本の単4形電池が必要である。これは,カメラの電源とは独立したものである。電源だけではなく,このレンズの測距動作とカメラのシャッターレリーズボタンなどとの連動もない。そのため,Kマウントのカメラであれば,どのカメラででもオートフォーカスでの撮影ができるわけである。

オートフォーカス撮影の手順は,シンプルなものである。
 AF RIKENON 50mm F2の電源スイッチをONにすると,ピントリングは無限遠の位置にセットされる。そこでレンズの横にあるボタンを押すと被写体までの距離を測定し,ピントリングが自動的に適切な位置まで回るようになっている。そして,ボタンを押すのをやめると,ピントリングは無限遠の位置に戻る。ピントを合わせたいところにピントがあっているかどうかは,ファインダーに見える像で確認できる。もし,期待するところにピントが合っていないようなら,レンズの横にあるボタンを押しなおせばよいわけである。
 このボタンは,もう少し低い位置にあったほうがよいと思う。かなり手が大きな人でなければ,押しにくいと感じる位置にある。

ピントリングの動きは,思ったよりも速いものである。測距窓で測定した距離にピントを合わせるようになっており,ピントに迷うような動作はない。ピントが合わないときには,合わないのである。ボタンを押しなおすことを繰り返しても,ピントが合わないこともある。そのようなときは,狙う位置を少し変えると,思ったところにピントが合うようになることも多い。また,薄暗い室内でも,そこそこピントがあってくれるが,明るい屋外で使うほうが,動作が確実なように感じている。
 AF RIKENON 50mm F2の最短撮影距離は0.6mであるが,オートフォーカスで撮影するときは近距離側は1mまでしか測距しない。また,ジャスピンコニカよりは細かくピント調整をしてくれているようだが,あまり細かい調整はできないようである。だから,少し絞り込んで使うのが無難だろう。RICOH XR6は絞り優先AEのカメラだから,そのときの明るさや使用するフィルムの感度にもよるわけだが,F5.6からF11くらいの絞りで使うことが多くなるのではないだろうか。ともかく,「世界ではじめて市販されたオートフォーカス撮影のできる一眼レフカメラ」のオートフォーカス撮影は,まだ発展の余地はあるだろうが,想像していたよりもはるかに快適なものである。

なお,AF RIKENON 50mm F2の電源スイッチをOFFにすると,ピントリングを手動で動かせるようになる。しかし,モーターとの連動が完全に切られるわけではないようで,ピントリングを動かすのはかなり重いものである。細かなピントの微調整は,苦行としか思えない。


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