撮影日記


2023年03月17日(金) 天気:曇

関式サロン露出計にVB型は存在しない

写真をきれいに撮るためには,ピントと露出をきちんと調整する必要がある。適切な露出の基準を示した,露出表というものがあった。これは季節,時間帯,天気と被写体の状況ごとに,フィルムの感度に応じた適切なシャッター速度(露光時間)と絞りの値を示したものである。月刊誌に,その月の詳細な露出表が掲載されていたことがあるし,その簡易的なものは現代でも,フィルムのパッケージなどに印刷されている。

フィルムのパッケージに印刷されている程度の露出表であれば,いつも携帯していても邪魔にはならないし,慣れればこれくらいはすぐに覚えるだろう。いわゆる「俺が露出計だ」状態である。さらに厳密に露出をあわせたければ,月刊誌に掲載されているくらいの詳細な露出表を参照したくなるが,それは持ち歩くのも適切な値を読み取るのも,すこしばかり面倒である。
 そこで,詳細な露出表をコンパクトにまとめ,参照しやすくした「露出計」がいろいろと考案された。日本国内で発売された露出計で有名なものの1つに,写真関係の出版社である玄光社から発売された「関式サロン露出計」がある。その最初のモデルは1938年10月下旬に発売され,次のようにモデルチェンジを重ねながら1960年代まで発売された。

モデル発売時期
(初期型)1938年10月下旬
(新型)1940年03月ころ
(戦後型)1948年04月?
UA型1950年10月ころ
UB型1951年09月ころ
VA型1954年04月ころ
WA型1956年04月ころ
WB型1959年03月ころ

初期型からVA型までは,戦後型を除いて,実際に入手したり実物を借りたりする機会があった。これらについては,雑誌の広告や取扱説明書の奥付などから,発売時期をかなり絞り込めている(2022年12月31日の日記を参照)。戦後型については詳細な画像を見る機会はあったものの,,雑誌の広告や取扱説明書から新発売時期を特定することはできていない。しかし,日本ではごくかぎられた期間にしか採用されていない「サマータイム」(2021年10月20日の日記を参照)に対応しているので,ある程度は絞り込める。
 WA型やWB型については,実物を入手したり観察したりする機会が得られていないが,「写真工業」誌の新製品を紹介するコーナーに記載があることがわかったことから,新発売の時期が特定できている。

このようにモデル名を眺めてみると,UA型,UB型があり,WA型,WB型があるのだから,「VB型は存在しないのだろうか?」という疑問が生じる。また,WA型については書籍に掲載されている不鮮明な画像でしか確認できておらず,WB型についてはそういう画像を見る機会もないため,前のモデルとの違いや特徴がわからない。
 該当する「写真工業」1956年5月号および1959年4月号は入手できなかったが,同じ時期の「アサヒカメラ」や「日本カメラ」を入手することができた。

「日本カメラ」1956年5月号によって,「関式サロン露出計」にVB型が存在しないことが確認できた。そこに掲載された広告には「驚異的WA型新発売」として,「…定評あるVA型を…使いよく正確なWA型に改良した!」と書かれている。また,新製品を紹介するコーナーで「サロン露出計WA」が取り上げられていて,「…好評を続ける関式露出計VA型の改良品で…」と書かれている。これらの表現により,VA型のつぎはWA型になり,VB型は存在しないということがわかる。WA型での改良点としては「被写体分類を一段と合理化」「オープンフラッシュ,高速シンクロ撮影の場合も…わかるよう新考案が加えられた。」と説明されている。

「アサヒカメラ」1959年3月号に掲載された広告には「新型発売 サロン露出計WB型」という文言があり,新製品を紹介するコーナーでは「…WB型ができた。…操作順序番号,シネ目盛,ライトバリュー目盛が加えられ…」という説明が書かれている。

ともかくこれで,関式サロン露出計のWA型およびWB型の発売時期と特徴が確認できた。また,VB型が存在しないことも,確認できた。WA型とWB型は,目盛の改良がされたようだが,具体的にどのように変更されているのかは,やはり実物を手にしなければ確認できそうにない。とくにWB型で取り入れられたとされる「操作順序番号」がどのように表現されているのかについては,大いに興味がある。ただ,2020年の秋以降,インターネットオークションなどで,WA型やWB型を目撃していない。


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