撮影日記


2023年11月25日(日) 天気:晴

平地が紅葉の季節

例年,常清滝,三段峡あるいは筒賀神社や大朝のテングシデ群落など,芸北・備北方面に紅葉(黄葉)など秋の風景を撮りに行くようにしている。そのため,「11月3日は晴れの特異日である」という日記を書く年が多くある。しかし今年は,それらを訪れる機会をつくることができなかった。いちばんの見ごろ撮りごろといえる11月3日を含んだ連休を利用して,大阪の家を片づけていたためである。今年は全国的に,人が住んでいる近くにまでクマがあらわれ,クマと遭遇することで怪我人などが発生する事例が多いようである。芸北・備北という地域は,クマの生息域である。以前から「熊出没注意」の看板はよく見られる(2022年11月3日の日記を参照)。今年はとくにクマの出現が多いからといって,それを理由に芸北・備北方面を訪れなかったわけではない。この秋はあくまでも,大阪の家に行く必要を優先したためである。ともかく,11月3日を「晴れの特異日」であると意識する機会も得られなかった。

そうこうしているうちに,11月もほとんど月末になっている。例年であれば,芸北・備北方面の紅葉は,とうに見ごろを過ぎているはずの時期である。おおむね,山のなかのほうでは11月第1週ごろ,山を下りた集落付近などで11月第2週ごろが見ごろ撮りごろだと考えればよい。そして,11月も第3週をすぎるころになると,芸北・備北方面にかわって,広島市内など南部での紅葉が見ごろ撮りごろの時期になってくる。紅葉に染まる雄大な山々を眺めることはできなくても,きれいに色づいた葉を眺めるにはじゅうぶんである。とくに,木の一部分にしか着目しないのであれば,いわゆる名所などを訪れる必要はない。近所の公園などに色づいた木々を見つけても,それ相応に楽しめるものである。むしろ,思い立ったときにすぐに撮りに行けるのだから,近所で被写体になりそうな手ごろな木を把握しておき,それらを楽しむようにするのがよいだろう。
 ところでこの時期は日没が早く,太陽の高度も全体に低い。夕方の低い光線を利用して逆光で撮ると鮮やかな色彩を楽しめるが,すぐに建物などの陰にはいってしまいやすい。撮影を楽しむのは,時間との勝負でもある。

Kodak DCS Pro 14n, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

また,町なかの公園にある木を撮るとなると,どうしても背景に,木々以外のものがいろいろと入りこんでくることになる。こういうときの撮影のポイントは,いかにして背景に意図しないものが不用意にはいってこないようにするか,そこに気をつけることである。するとどうしても,広角レンズよりも望遠レンズのほうが都合がよい。せっかくなのでいろいろな撮り方を試してみようと,わざわざ高倍率のズームレンズを用意してみるのだが,安直にもその長焦点側ばかりを使って,短焦点側をほとんど使わないということになりがちである。

Kodak DCS Pro 14n, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

望遠レンズで撮ると,圧縮効果といわれる視覚的な効果がある。手前の被写体に,背景が近づいて見えるわけで,つまりは背景にあるボケが大きく見える。このとき,ピントを重視すると,被写界深度を大きくするために絞り込んで撮ることになるが,そうすると多角形である虹彩絞りの形状がボケに反映してしまう。ボケが丸ではなく,多角形になってしまうのである。それを避けるためには,基本的に絞りを開放にして撮ることになる。絞りを開放にして使うのは,より激しくボケさせるためではなく,ボケを丸くするのが主目的である。だから,このような目的では,無理に大口径比なレンズである必要はない。明るさは欲張らず,中央だけでもかっちり写ってくれれば,雰囲気を伝えるにはじゅうぶんなのである。ただ,明るいレンズであれば,それだけ速いシャッター速度を使えるので,風などによる被写体ブレの影響をおさえられるというメリットがある。ここで抑えたいのは被写体ブレであり,カメラブレではないから,手ブレ補正機能は意味がない。

Kodak DCS Pro 14n, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

ズームレンズの長焦点側での撮影ばかりではおもしろくないので,広角レンズでも撮ってみようと思うものの,余計なものがどうしてもいろいろと写りこんでしまう。この日は結局,なるべく低い位置にある紅葉を中心に,見上げるような構図をつくるしかなかった。手前の紅葉はかなり近い位置にあるので,短焦点側は24mmという超広角域のものになるが,それでも背景はほどよくボケてくれて,主となる紅葉を浮かび上がらせることはできた。

Kodak DCS Pro 14n, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

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