撮影日記


2023年11月18日(土) 天気:晴

印画紙で観葉植物を撮る

オモトは,観葉植物として栽培される多年草である。日本では江戸時代の半ばころから,栽培が流行していたとされる。葉にはいろいろな変化が見られ,たとえば葉に白い部分が生じる斑入りのものや,葉の表面に突起が生じて二重の葉になっているように見えるものなどがある。花を咲かせて赤い実をつけることもある。地味なようでいて,案外と見飽きない植物である。オモトの葉や根茎には薬効があり,外用薬として使われることもあるようだが,有毒性が強いものなので,素人が薬草として使うことを考えるのは,やめたほうがよいようである。
 暗箱の後部アダプタをつくりかえて,縦位置撮影ができるようにした(2023年10月9日の日記を参照)。これを使って,オモトを撮ろうと考えていた。二重になった葉の造形や,斑入りの状況などは,モノクロ撮影の被写体して似合いそうに思われる。しかしこの時期は,日没が早い。また,太陽の高度が全体に低い。そのため,お休みの日と,撮るのに都合のよい天気とのタイミングが,なかなかあわずにいた。

撮影に使ったのは,Thomson Brothersのレンズである。このレンズには虹彩絞りがなく,絞り板をはめこんで使うようになっている。本来の絞り板は失われていたので,1枚だけ自作したものを用意しているが,これはおよそF32相当になるものである(2023年4月29日の日記を参照)。また,使った暗箱は,一般的な組立暗箱よりもベースボードが長く,蛇腹をうんと伸ばすことができ,かなりの接写が可能である。原版がカビネサイズ(装填した印画紙のサイズは165mm×120mm)なので,これでもかなりの接写である。

Exp.: no name camera, Thomson Brothers lens, F32, 12sec, FUJIBRO WP FM2 / Dev.: Microfine 1:1, 18℃, 420sec

いつものように,フィルムのかわりに印画紙「フジブロWP FM2」を使うので,感度はISO 3ないし1.5程度に相当すると考えて露出を決めることになる。具体的には,よく晴れた日であれば,F22で1秒の露出を基準に,露出を増やしたり減らしたりすると,具合がよい場合になることが多い。
 今日はよく晴れているが,真夏ほどの強い日差しではない。レンズの明るさがF32相当であり,さらに接写域での撮影になるので,露出は通常よりも長めにする必要がある。そこで,露光時間を12秒とした。風はほとんどなく,吹いても弱いものである。オモトは背が低いので,それくらいの風であれば,被写体ブレを気にする必要はなさそうである。

Exp.: no name camera, Thomson Brothers lens, F32, 12sec, FUJIBRO WP FM2 / Dev.: Microfine 1:1, 18℃, 420sec

さらに,せっかく縦位置でも撮れるようにしたのだから,縦位置の撮影もおこなっておく。

Exp.: no neme camera, Thomson Brothers lens, F32, 12sec, FUJIBRO WP FM2 / Dev.: Microfine 1:1, 18℃, 420sec

強い日差しで昼間は暖かくても,夜になるとずいぶんと気温が下がる。室温も下がってくるので,現像液を一定の低い温度に保たせやすくなる。ゆっくりと現像を進行させられるようになり,セーフランプの下で像の出現具合を見ながら処理ができるのは,扱いやすくて好都合である。今回は,ミクロファインを1:1に希釈した現像液を18℃に保ったところ,現像時間が420秒でほどよい濃度になったと判断した。
 号数印画紙では,黄から赤にかけての色に対する感度は著しく低い。フィルムでいえば,すべての色に均等に感度があるパンクロマチックではなく,紫から青にかけてしか感度のないレギュラータイプに相当する。緑の感度もあまりないはずであるが,緑色の濃淡であらわされる観葉植物を撮る場合には,それは大きな問題にならないようである。


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