撮影日記


2017年07月20日(木) 天気:晴れ

チノンのワンテンは珍しい?

ブックオフのジャンク品コーナーで,CHINONのカメラを救出した。よくありがちな横型の110(ワンテン)カメラであるが,108円ならば,救出すべきか否か迷う必要はない。

カメラ正面の「tele」という文字からすぐにわかるように,このカメラは「望遠」撮影モードをもっている。上部のレバーによって,「標準」レンズと「望遠」レンズとを切りかえられる。正面に大きな発光部があることから,フラッシュ撮影のための電池が必要であることもわかる。巻き上げはカメラ底面のレバーでおこなうので,ここに電池は不要だ。シャッターの動作にも,電池は必要としないようである。絞りを切りかえる「お天気マーク」のようなものもなければ,測光用のセンサのようなものも見あたらないので,シャッター速度と絞りは,固定されていると思われる。フラッシュを使わないかぎり,電池は不要だろう。
 この種のカメラでは,フィルムのパーフォレーション(小さく開けられた孔)を利用してシャッターをチャージするものがある。このCHINONのカメラでは,底面のレバーをいっぱいまで押しこむとシャッターのチャージもおこなわれるので,パーフォレーションのない自作フィルムでの撮影ができそうである。
 そのことを確認するには,フィルム室内に,フィルムのパーフォレーションに対応するピンなどがあるかどうかを見ればよい。ところが,フィルム室の開け方がわからない。フィルム室の蓋のすぐそば,あるいはカメラの端などに,ロックを解除するボタンやレバーなどがあるはずだが,それがどこにも見つからない。フィルム室の蓋そのものを少しスライドすることでロックが解除されるのかと考えたが,それも違う。

フィルム室の蓋のロックは,この窓をスライドすることで解除されるのであった。

なかを見ると,フィルムのパーフォレーションに対応しそうなピンがある。シャッターのチャージは巻き上げレバーの操作だけでおこなわれるので,これは巻き止めに関するものかと思われる。ためしに巻き上げレバーを少しずつ,小刻みに動かすと,フィルムを送るギアはどんどん回るが,シャッターはいつまでたってもチャージされない。このピンは,小刻みに巻き上げてしまったときに,フィルムの送りを適正なところで留めるためにはたらくようだ。そうしておいて,あらためていっぱいまで巻き上げレバーを押しこむことで,シャッターがチャージされる。

巻き上げを一気におこなうことさえ意識しておけば,パーフォレーションのない自作フィルムでも撮影できそうである。ただし,コマ送りが一定にならない懸念はある。

CHINONは一時期,業績不振になって自社ブランドの商品を発売できない状況になっていた。2014年に発売されたディジタルビデオカメラ「チノン・ベラミ HD-1」は,CHINONとしておよそ20年ぶりのカメラ製品とのことである(*1)。
 CHINONはもともと,カメラの部品を供給するメーカーとして創業している。その後,音声を同時に記録できる8mmムービーカメラの分野で,よく知られる存在になった。「チノン・ダイレクトサウンド」という名称に,聞き覚えのある人も,少なくないと思われる。そのほか,さまざまなカメラを自社ブランドや他社ブランドで供給していた。CHINONのカメラで有名なものとしては,ズームレンズ一体型一眼レフカメラ「チノン・ジェネシス」や,正面が観音開きのデザインが魅力的なコンパクトカメラ「チノン・ベラミ」などがある。なお,「チノン・ベラミ」の綴りは「Bellami」となっていたが,のちに発売された「チノン・ベラミAF」(2004年8月28日の日記を参照)では「Belami」という綴りになっていた。2014年に発売の「チノン・ベラミ HD-1」では「Bellami」になっており,「l」の数が2つになったり1つになったりを繰り返している。

ともあれCHINONは,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」に製品を掲載し続けてきたメーカーである。これをたどっていけば,今日,保護してきたこのワンテンカメラの正体もはっきりするだろう。カメラの上面には「Pocketpak flash」という文字があるので,これがカメラの名称と思われる。

ところが,これと同じカメラの掲載が見つからない。そもそも,CHINONのワンテンカメラは,1988年版の日本カメラショー「カメラ総合カタログ」に「チノン・ポケットパック110TF II」が掲載されていたのみである。今日のカメラと似たようなスペックのカメラであり,商品名に「II」が含まれることから,本来は前モデルがあったのだろう。そうすると,この「Pocketpak flash」がその前モデルに該当すると想像できる。
 はっきりしたことはわからないが,今日,保護したカメラは「チノン・ポケットパックフラッシュ」という望遠レンズとフラッシュを内蔵したワンテンカメラであり,発売時期は1980年代後半(1985年〜1987年ころ)であろうと推定できる。
 CHINONはOEMで他社ブランドのカメラを製造することもあったようだから,その全貌をつかむことは容易ではなさそうだ。

*1 会社紹介 (株式会社チノン)
http://chinon.co.jp/?page_id=209


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