撮影日記


2010年04月03日(土) 天気:ハレ

ソルントンシャッターを使う

この日記を読んでくださっている方のなかには,シノゴ判(4×5判)などの大判カメラを使っている人も少なくないと思う。では,ちょっとお尋ねするが,シノゴ判を使うのはどんなときだろうか?もちろん仕事や作品つくりのために,つねにシノゴ判での撮影をするという方もおられることだろう。しかし,大多数の方にとっては「ここイチバン」の大切なときに使いたいものである,と考えているのではないだろうか。つまり「ハレの日」のカメラなのである。
 4月5日に迫った「大判写真の日」。これは要するに,ふだんあまり使う機会のない4×5判での撮影をもっと気軽に楽しもう,ということをねらったものである。

気軽に撮るためには,遠くの有名な撮影ポイントに出かけるようなことはしたくない。できるだけ近くの,身のまわりのものを気軽に撮ってみたいものだ。ただ,大判写真を撮影するための「手間」は楽しみたい。
 そうなると,できるだけ「手間」のかかるカメラを使いたくなる。だからといって,TOYO-VIEW 45Cを持ちだすような根性は,あいにく持ちあわせていない。TOYO-VIEW 45Cは,この種のモノレール型カメラとしては比較的コンパクトなものらしいが,それでも十分に重いものである。また,重いだけではなく,持ち歩きを考慮したような形態ではない。だからこんなカメラは,自宅あるいは駐車場から数10m以内の範囲で使いたい(笑)。
 4月1日には,これまでほとんど使うことのなかったOKUHARA CAMERAの組立暗箱での撮影をおこなった。このとき,4×5判の撮影では個人的によく使うFUJINON W 150mm F5.6を使ったこともあり,とくにいつもと違和感なく,すいすいと撮影ができてしまったものである。撮影の「手間」が,十分に楽しめなかったのだ。
 そこで,ソルントンシャッター(2010年4月2日の日記を参照)を使うことになるのである。今日は晴天。まさに「ハレの日」(笑)。あちらこちらで,サクラが見ごろを迎えている。道路沿いにある小さな神社に小さなサクラが覆いかぶさっている。そんな平凡な光景を,「ハレの日」にふさわしいカメラで撮るのである。

この神社のサクラにカメラを向けている人を見かけることは,あまりない。それはそうだろう,背後に電線が密集しており,きわめて目ざわりである。また,道路も狭く歩道もなく,三脚を立てるポジションがほとんど選べない。ふつうに考えて,「絵になる」ようなサクラではない。枝ぶりがよく,背景がすっきりしていて,三脚を立てやすい,そんなサクラなど,ほかに行けばいくらでも見つけられるというものだ。このサクラを撮る人があるとしても,ご近所の人がお散歩がてら,携帯電話機のディジタルカメラ機能を使って記録するくらいのものである。
 そんなことを考えながらも冠布を被り,構図を整える。このような組立暗箱は,必然的にアオリが可能になっている。そもそも,レンズボードとフィルムバックの平行をきちんと出さなければ,ふつうに撮ることはできないのである。FUJINAR 21cm F4.5は,いつも使うF5.6のレンズよりは気持ちほど明るい。そのせいか,ピントグラスの像がよく見える。だがよく見ると,周辺部の描写がややあやしい。それでも絞りこめば,十分な描写を見せてくれそうだ。というか,絞りこまざるを得ない。ソルントンシャッターのシャッター速度は,最高速でも1/90秒。今日のような晴れの日には,必然的に絞りこまねばならないのだ。
 使い慣れないソルントンシャッターでの撮影は,「手間」を十分に楽しめるものとなった。そして得られた写真を眺めれば,平凡なはずの光景も,いつもと違って見えてくるのであった。

OKUHARA CAMERA, FUJINAR 21cm F4.5, NEOPAN100 ACROS


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