撮影日記


2006年11月15日(水) 天気:晴

「可部線の四季彩」
展示作品01 安野

こんどは,2004年5月1日,2日におこなった,「新・広島お気軽写真クラブ 第1回写真展」で展示した写真を紹介していこうと思う。いまさらではあるのだが。
 このときは,「可部線の四季彩」というテーマと,「三段峡・水景色」というテーマで展示をおこなった。まずは,「可部線の四季彩」の方から紹介しよう。
 このテーマでは,全紙サイズのプリントを4点展示した。我ながら「○○の四季」というテーマばかり選んでいるのではないか?という気がする。まあ,これがわかりやすくていいのだ(安直ということか?)。
 ちなみに,ここでいう「可部線」とは,2003年11月30日をもって運行が終了した区間(可部−三段峡)を対象にしている(一般には,「可部線廃線区間」といえば通じるだろうか)。以下,この関連の記事中で「可部線」というときは,とくに指定していない場合はこれをさすものとする。

Tachihara Fielstand45, FUJINON 210mm F5.6, E100VS

1点目は,春のシーンである。おそらく,可部線において,もっともよく知られているシーンの1つであろう。手前(横川方面)から,レンギョウ,モモ,サクラが植えられており,これらがそろって開花すると,じつに美しい空間となる。サクラは開花したときの華やかさが魅力だろうが,開花直前のほんのりと赤いこの瞬間の落ち着いた美しさも捨てがたい。とくにここでは,レンギョウやモモとたがいに引き立てあうことができるのがいい。
 朝,6時25分,加計駅から可部駅へ向かう一番列車が到着する。この時期のこの時刻は,まだ十分には明るくない。そのかわり,よく光がまわっている。フォーマットは大判だが,レンズはかなり古典的なものであるため,かなり絞りこんだ状態で使う。その結果,露光時間は4秒間。停車時間はそこそこあるのだが,4秒間も露出をおこなうのであれば,撮影チャンスは1カットしかない。フィルムもシートなので,その1カットだけを消費することになり,自然に気合も入るというものだ。列車が到着するまでに,ピントや露出を決めておき,あとはチャンスがくるのをひたすら待つだけである。これは駅に停車したところを撮るので,まさに待つだけでいい。
 休日の早朝の列車であるが,乗降客はいた。それは,4秒間という露光時間に吸いこまれて,かすかな赤い像を見せているだけとなっている。
 ちなみに,サクラも開花すると,雰囲気はさらに明るくなる。

Mamiya Universal Press, Mamiya-sekor 250mm F5, E100VS

もともと,「可部線」は,私にとって主たる被写体ではなかった。主たる被写体の1つとしていた「三段峡」への通り道にあったのである。だから,たまには「三段峡」へ行くために利用することもあった。そんな「可部線」をぼちぼち撮っておこうかなと思い始めた矢先に,「廃止」の話しが具体化してきたのだった。したがって,それからしばらくは,「可部線」の撮影に時間を費やすようになった。
 なぜ,「可部線」を撮ろうと思うようになったのだろうか?単に,「なくなるから」というだけではない。「なくなるから」は,行動を起こすための大きなきっかけにはなったし,最初のうちはそれくらいの意識しかなかったものと思う。ところが,「可部線」の背景についていろいろな話が聞こえてくるうちに,「可部線の廃止は,沿線だけの問題」のような風潮を感じたのである。そこに,少し疑問が沸いた。これは,都市部に住む者にも,なんらかの影響があるのではないか?少なくとも,影響があるかないかくらいは,考える必要があるのではないか?ということである。
 「可部線」の先には,「三段峡」がある。それは,広島市の水源である太田川の源流の1つである。広島市に住む者として,そのことに無関心でいてもいいのだろうか?と,漠然とした疑問であるが,写真を公開することで,自分自身にも,写真を見てくださった方にも,なんらかの形で関心をもつきっかけにしたいという気持ちができてきたのであろうと思う。


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