撮影日記


2006年09月24日(日) 天気:晴

シュミレーションってなによ?

福山市の,広島県歴史博物館で,特別展「よみがえる源氏物語絵巻」がおこなわれている。現在はすっかり色褪せてしまい,色や絵柄の剥離もある「源氏物語絵巻」の図を,描かれた当時の状態に復元したものを展示したものである。復元にあたっては,現存する「源氏物語絵巻」の図を蛍光撮影したりX線分析をしたりすることなどによって,剥離したり褪色したりした部分のもとの絵柄や使われていた顔料等を調べたとのことである。
 復元された図は,線は細く明瞭で,植物や着衣の絵柄なども細かく描きこまれており,色は鮮やかで,まるで最近描かれたマンガを見るかの如き錯覚すら覚える。いや,それは,実際に最近描かれたものであり,当時としては現代のマンガにも通じるような「娯楽」のための図だったのかもしれない。
 1000年前に,このような華やかな絵を見て楽しんでいた人(そしてそれを制作した人)がいたのだと感心する一方で,古くなってしまったものが現存しているという「ありがたさ」がうすれたような気もするのであった。

以前から訪れようと思いながら,ようやく今日,訪れることができたのだが,今日はこの特別展の最終日である。会場は予想ほど混んでいなかったものの,列が全然進まない・・・。みなさん,1枚1枚じっくりご覧になられているようである。それぞれの絵をじっくり見て,説明をきちんと読む,それだけではないだろう。「源氏物語」そのものが好きな人たちが,自分が読んだ各場面の物語と,その絵を頭のなかであわせて楽しんでいるのであろう。とにかく,列は進まない。だからといって,殺伐とした「ふいんき」じゃなくって,殺伐とした雰囲気もなく,ゆっくりと鑑賞することができた。
 復元された図の展示の先では,復元の過程が説明されている。科学的な分析によってもとの絵柄や使われた顔料を割り出したあとは,何度も描き方を変えて,もっとも原図に忠実と思われる濃度や技法を「シミュレーション」していたとのことである。そんな解説の中に,「シュミレーション」と書かれたものもあったのは,ご愛嬌か(笑)。ちゃんと「シミュレーション」と書いてあるものもあったので,そこを担当した人の勘違いか,あるいは単なるミスタイプだろう。まあ,最近は「雰囲気」ではなく「ふいんき」なることばも流行しているらしいので,こういうのも許されるということだな。

ところで,広島県歴史博物館の「みどころ」は,芦田川の中州から発掘された,「草戸千軒」とよばれる遺跡を調査し,当時の町並みが復元された展示室であろう。復元されたのは,職人さんの住む区画で,初夏の黄昏時という設定になっている。建物内も復元されており,立ち入ることもできる。建物や夜具,衣服等は,現在の感覚でみれば,かなり質素なものに見える。しかし,食事はそれにくらべると充実して見える。そこは,交易が盛んにおこなわれていたそうで,景気がよい時代もあったということであろう。
 なお,この展示室に関しては「撮影可」と書いてある。もちろん,「展示物に触れないでください」とも書いてある。


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