撮影日記


2006年09月19日(火) 天気:晴

ラジオを聞きながら写真を撮る

私は,カメラというものに興味をもちはじめたころ,Pentax,Olympus,Canon,Nikon,Minoltaをカメラの「5大ブランド」として認識していた。それは,35mm判一眼レフカメラのシステムが充実していたブランドであると言い換えてもいいだろう。私は生意気にもこれらを「一流品」と考え,これら以外のブランドの一眼レフカメラは「二流品」と見なしていたものである。具体的には,Konica,Cosina,Fuji,Mamiya,Yashica/Kyocera,Ricohなどが該当する。なお,外国ブランドのカメラについてはよく知らなかったうえに,Rolleiflexはシンガポール製だし,CONTAX(Contaxではない)はYashica製だし,Leicaは自分が大人になってもきっと無縁だろうと思わせる価格だったなどの理由で,興味の対象とはならなかった。
 一眼レフカメラからコンパクトカメラに目を転じれば,Konicaの印象が強い。「ピッカリコニカ(C35EF)」や「ジャスピンコニカ(C35AF)」は,まさに大ヒットだったようだ。それを追いかけるかのように,Yashicaの「ズバピン(Yashica AutoFocus)」や,Fujiの「ピカピン(Flash Fujica AF)」など,「ジャスピン」をパクったかのような印象を受ける名前のカメラが登場し,Konicaに対する印象がさらに強くなったものである。コンパクトカメラでは,これらのブランドのほかに,Olympus,Canon,Minoltaも目立っていたと思う。
 これらのほかに,松下電器(Panasonic/National)からも35mm判全自動コンパクトカメラが何機種か発売されていた。しかし,フラッシュ装置ほど,Panasonic/Nationalブランドのカメラは,市場では目立たなかったのではないだろうか。

Panasonic/Nationalブランドのカメラとして,忘れられないものとしては,「ラジカメ」がある。「デジカメ」のミスタイプではないし,「ラジカセ」のミスタイプでもない。「ラジカメ」は,ラジオとカメラが一体化した製品であった。当時の広告(1981年「写真用品ショー総合カタログ No.11」)を見ると,「音楽やスポーツ実況を楽しみながら・・・」などと称している。

そこで,ラジオを聞きながら,実際に「ラジカメ」で撮影してみることにした。

私の手元にあるラジカメC-R3は,回路が劣化してしまっているのか,感度や音が少々よろしくない。弱い電波はあまり受けられず,少し強い電波(NHK第1放送)だと音が割れてしまうのである。そこで,ちょうど聞きやすい強さの電波だった,RCCをイヤホンで聞きながら,川に沿って歩いてみた。そして,適当にカメラを向けてシャッターレリーズボタンを押した。

その瞬間,雑音とともに,放送は聞こえなくなった。

雑音が消えてしばらくすると,ふたたびRCCが聞こえるようになったのである。
 ラジカメC-R3は,モーターによる巻き上げができる,ラジカメシリーズの3代目モデルである。当時としては先進的な機構を盛りこんでいたわけだが,巻き上げのモーターが消費する電力は,ラジオを受信するための電力を奪い取ってしまったようである。「ラジオを聞きながら写真を撮ることができる。」という意味のセールスコピーは,「ウソ」であったのだろうか・・・・・。

いや,待てよ。
 やはり回路が古くなったことが影響して,巻き上げ動作が受信動作に影響するようになったのかもしれない。

いやいや。
 1981年「写真用品ショー総合カタログ No.11」に掲載されていたラジカメは,手動巻き上げのC-R2である。「ラジオを聞きながら写真を撮ることができる」というのは,これらのセールスコピーである。電動巻き上げのC-R3のセールスコピーがこれと同じとはかぎらないのである。

ともあれ,私の手元にあるナショナル・ラジカメC-R3では,「ラジオを聞きながら写真を撮る」ことは不可能という結論になる。

ソニーからディジタル一眼レフカメラ「α-100」が発売されたのは,今年の7月下旬のことであった。つづいて,松下電器もディジタルカメラ「DMC-L1」を発売している。カメラではなくディジタルカメラという分野であるが,いわゆる家電メーカーが,光学メーカーと同じ土俵で戦うようになったことを象徴するできごとであろう。遠い昔のラジカメは,このような日が来ることを知っていたのであろうか。

National Radicame C-R3, GOLD ULTRA
National Radicame C-R3, GOLD ULTRA

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