撮影日記


2006年08月25日(金) 天気:晴

ローライフレックスSL35Mをながめてみる

「ローライフレックスSL35」のシリーズは,1976年から発売されている。ところでこのシリーズは,ローライによって新しく開発されたものではない。1971年に,ツァイス・イコンは「SL706」という名称の一眼レフカメラを最後に,一般向けカメラの製造から撤退した。その「SL706」をベースにつくられたものが,「ローライフレックスSL35」であった。ところで「SL706」は,「イカレックス」というシリーズの最終モデルであるといえる。「イカレックス」は,安価な一眼レフカメラとして発売されてきた。つまり,「ローライフレックスSL35」は,本来,廉価版一眼レフカメラである。
 「ローライフレックスSL35M」は,絞込み測光だった「ローライフレックスSL35」を開放測光にあらため,ボディカバーにプラスチックを使用したモデルである。つまり,「ローライフレックスSL35M」は,TTL開放測光式露出計を内蔵した,機械制御式のフルマニュアル一眼レフカメラということで,たとえば「ニコマート」やキヤノン「FTb」あたりと同クラスのカメラだと考えればいいだろう。手に持ってみると,大きさは「ニコマート」やキヤノン「FTb」などと同じくらいに感じる。しかし,重さについては,ずいぶんと軽く感じられる。カメラの上下のカバーにプラスチックが使われていることが,その原因の1つになるだろうか。
 とりあえず正面からながめてみると,ファインダー部分が平たいところに,デザイン上の特徴がある。大がらなカメラであるが,威圧感をあまり受けない,やさしい印象のフォルムであるといえる。

Rolleiflex SL35M

さて,「ローライフレックスSL35M」のシャッター速度ダイアルは巻き上げ軸の周囲に配置されており,シャッター速度は1/2〜1/1000秒が使用できる。このクラスのカメラのシャッター速度は,1〜1/1000秒となっているものが多いので,低速シャッターが1/2秒からというのは,物足りない気がする。もっとも,1秒というシャッター速度を使う機会は多くないと思うし,1秒であればB(バルブ)でも対応できるだろう。シャッター速度のポジションに,スピードライトや閃光電球をイメージする絵が描かれていることは,大きな特徴といえるだろう。これは,シャッター速度ダイアルのポジションによって,シンクロのタイミングを切り替えられるということで,スピードライトと閃光電球を使い分ける必要がある場合には便利である。ただし,どういう場面でそういう必要が生じるのかは,よくわからない(笑)。また,今さら,閃光電球を使う機会は訪れないであろうから,もはや意味のない特徴といった方がよいかもしれない。
 低速シャッターが1/2秒からという点や,巻き上げ軸の周囲にシャッター速度ダイアルが配置されるというデザインは,いにしえの「Contax」(CONTAXではない)以来のこだわりなのかもしれない。しかし,シャッターレリーズボタンの位置は,「Contax」(CONTAXではない)にあわせて巻き上げ軸の位置に置く,ということは選ばなかったようである。このことによってシャッターレリーズボタンの位置がやや遠くなっており,レリーズのストロークがやや長く感じられることもあって,シャッターを切る動作に関しては,やや不快感をもつ。巻き上げには滑らかさを感じることもなく,このあたりは「高級機」とされるカメラとは違う,廉価版カメラだと考えるのがよさそうである。

左:シャッター速度ダイアル。B,M,Xおよび1/2〜1/1000が刻まれている。
右:巻き上げレバーを引き出すと,露出計のスイッチがONになる。

「ローライフレックスSL35M」は,開放測光に対応した露出計を内蔵している。マウント面の上部に埋めこまれているようにみえる小さな突起は,開放測光のための絞り値を伝達するものである。残念なことに,同時に入手したレンズ「Carl Zeiss Planar 50mm F1.8」は,シリーズ初期のもので,開放測光に対応していない。
 マウント内部のベロのようなものは,レンズについたピンを押しこんで絞りを動作させるためのものである。この部分のメカニズムは,M42マウントと同じようなものに見える。ツァイス・イコン「SL706」はM42マウントのカメラであった(「イカレックス」シリーズにもM42マウントのモデルがあった)。「ローライフレックスSL35」シリーズには,それらのカメラの名残りが含まれているということであろうか。

マウントのようす

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