撮影日記


2006年04月15日(土) 天気:雨

雨のなかのサクラが美しい

今日は朝から雨が激しい。広島市内のサクラも満開の時期をすぎており,新しい葉が広がりつつある。いま,残った花のかすかなピンクと,新緑の対比がいちばん美しい瞬間だ。しかし,今日の雨で,残った花は,ほとんどすべて落ちて流れていってしまうであろう。
 住宅の密集したなかに,小さな神社がある。そこのサクラも,激しい雨に打たれて,花を次々に落としている。地面には水たまりが生じており,まだ汚れていない,落ちた花が漂っていたり,水面を埋め尽くしていたりする。この瞬間は美しいのだが,もう何時間かすれば,落ちた花は汚れはじめて,この美しさは消えてゆくのであろう。
 枝に目を向ければ,残った花と新緑が,雨に濡れてたいへん艶やかに見える。こういう瞬間も,写真に撮っておきたいものだ。

雨のなかで写真を撮ることは容易ではない。片手で傘を持って撮るのは,操作が難しく,ブレやすいだろう。雨合羽を着たところで,こんどはカメラを濡らさないような注意が必要となる。
 ところでここのサクラは,どことなく風格があるのだが,悲しいかなどちらから見ても,背景は一般の住宅ばかりになり,写真は撮りにくい。また,この神社はごく小さいもので,引きも確保しにくい。しかし,ごく小さいおかげというべきか,屋根のある手水場のすぐ近くにまで,サクラの枝が手を伸ばしてくれている。
 つまり,手水場から撮れば,雨に打たれるサクラを撮ることが可能になるというわけだ。ただし,背景が限られてくるので,どうしてもマクロ撮影的なものになるだろう。
 今日は,ぬめっとした印象に写ってくるように感じる,いわゆるロシア・レンズを使ってみようと思う。M42マウント中望遠レンズのJupiter-9 85mm F2と広角レンズのMIR 1-B 37mm F2.8を用意した。これらのレンズは,最短撮影距離が約0.9mと長いため,被写体に近寄った写真が撮りにくい。そこで,49mm径のクローズアップレンズも用意しておいた。

カメラは,コシナ製のVivitar XC-3を使うことにした。今日,このカメラを選んだのは,いまもっているM42マウントのカメラのなかで,もっとも信頼できるものであるからにほかならない。
 このカメラが発売されたのは,1976年のことである。1976年というと,キヤノンAE-1の発売年だ。(日本製の)M42マウントのカメラとしては,最末期の製品といえるだろう。シャッターは布幕ながら,電子制御となっており,電池切れになるとシャッターが開かなくなる(しかし,シャッターは動作するので,気をつけておかないと危険である)。電子制御のシャッターであれば,絞り優先AEも実現されそうなものだが,このカメラの本体には,AE機構は内蔵されていない。そのかわり,オプション品に,外付けのAEユニットある。これを接続すると,AEユニットに内蔵されたモーターがシャッター速度ダイアルを機械的に回して,適切な露出を与えてくれるしくみになっている。この動作は,なかなかに愉快である。
 このカメラは,クイックリターンミラーや自動絞り連動機構は当然のようにもっているが,今日,使う予定の2本のロシアレンズは,プリセット絞りとなっており,自動絞りレンズではない。

さて,手水場からサクラを撮ってみよう。

Vivitar XC-3, Jupiter-9 85mm F2, Kenko Close-up Lens No.3, JX100

Jupiter-9は,F2という比較的大口径の中望遠レンズである。ファインダー像も見やすく,ピントの山もつかみやすい。また,自動絞りではないメリットとして,絞り羽根の枚数を多くできるということがある。絞り羽根の枚数が多いため,絞ってもその断面は,円形に近い。そのため,絞りこんでもボケが汚くなるなどの影響は少ないものと考えられる。

Vivitar XC-3, Jupiter-9 85mm F2, Kenko Close-up Lens No.3, JX100

手水場を出て,傘をさしながら撮るのは,やはり難しい。

今日は,85mmと37mmレンズを用意したわけだが,結果として,85mmレンズばかりを使うことになってしまった。やはりここは,背景の処理がどうしても難しいのである。


← 前のページ もくじ 次のページ →