2006年03月31日(金) 天気：曇
何が故に「ビンテージ」成るか？
いろいろと迷走を続けた「電気用品安全法」の「移行措置期間」であるが，そのうち最短の「５年間」の期限が，いよいよ明日で終了することになる。これによって，多くの「中古家電製品」が，販売できなくなる。
それに対して，一部の音楽家が中心になって，「中古製品の販売を規制対象から外す」という措置を求める動きをおこした。それは「署名活動」という形でおこなわれたが，その署名を経済産業省に提出する前日に，経済産業省は１つの方向性を示した。これがまるで，「署名という，人びとの圧力に屈したんじゃないよ」と，自分たちのプライドを死守するかのようなタイミングであるように見えるのは，少々，穿った見方すぎるだろうか。
そのとき，経済産業省が示した方向性は，「ビンテージと認められる製品に関しては，その規制を緩和する」というものである。一部の音楽家たちの主張に，「ビンテージといわれる機械でなければ出せない音がある。そのような製品の流通を阻害することは，音楽文化の損失だ。」という意味が含まれていたので，たとえ「署名が提出される前」に経済産業省が態度を変えたとしても，事実上は，「署名が提出される」という，人びとの力に屈したにほかならない。
ところで，経済産業省が示した方向性にも，多くの疑問点が指摘されている。そのなかに，「ビンテージの基準が不明確である」というものがある。ところで，「ビンテージ」とは，どういう意味の言葉なのだろうか。さっそく辞書で確認してみると，「年代ものの」「良質の」などの意味が含まれていることがわかる。つまり，ある程度古いもので，「傑作」とよばれるべきものが「ビンテージ」とよばれるべきものになるのだろう。しかし，「傑作」などという評価は，１つの官庁が機械的に決めることができるものだろうか？ここに，疑問点が残るのである。
さて，最近になって，「ビンテージ」の基準が示された。それによると，原則として楽器の場合は「1989年以前に製造が終了した」ものが該当するそうである。するとさらに，「1989年の根拠がない」などという批判があらわれ，経済産業省はひたすら迷走を続けているのである。
さて，具体的な「ビンテージ」に該当する製品のリストも発表されているので，参照してみよう。
(http://www.meti.go.jp/policy/consumer/seian/denan/tetsuduki_annai/vintage/list.pdf, 特別承認に係る電気楽器等一覧)
カシオの製品には，次の機種がリストアップされている。
AZ-1
CZ-1000
CZ-101
CZ-5000
FZ-1
RZ-1
SK-1
VZ-1
なんと，私が所有している「ＣＺ−１０００」は，経済産業省様によって，「ビンテージ」楽器に認定されているではないか（笑）。
ちなみに，カシオの「ＣＺ」シリーズは，「ディジタルシンセサイザー」である。「カシオトーン」のような「おもちゃ」ではなく，「楽器」として発売されたシリーズで，MIDIにもちゃんと対応している。ちゃんとした「楽器」なのだから，「ビンテージ」楽器として認定される資格はあるわけだ。しかし，このリストをよく見てみると，妙なことに気がつく。「ＣＺ−１０００」は，ＣＺシリーズのなかでは「廉価版」の位置づけである。ＣＺシリーズ最上位機種の「ＣＺ−１」が含まれていないのは，どうしてだろうか。「ＣＺ−１」より後の「ＶＺ−１」や「ＦＺ−１」（16ビットサンプラー）は含まれているので，「古くない」という判断をされたのではないだろう。ＣＺシリーズには，ほかに，「ＣＺ−３０００」「ＣＺ−２０００Ｓ」「ＣＺ−２３０Ｓ」などのモデルもあったが，これらもリストからは漏れている。
いったい，「ビンテージ」の基準って，なんだったんだ？
このリストを，もっとみてみよう。「ＡＺ−１」はMIDIコントローラーで，「ＲＺ−１」はMIDIドラムマシンである。どちらも，「楽器」であり，「ビンテージ」に認定される資格は十分にあるのだろう。
ところで気になる存在は，「ＳＫ−１」である。ほかの機種と似たような名称であるが，これは一般には「楽器」とは認識されていないはずだ。これは，初代の「サンプルトーン」という，どちらかというと「おもちゃ」と認識されるキーボードである。８bitでサンプリングし，その音で演奏できるという意味では，優れた製品といえるだろうが，その音質はあまりにチープで，サンプリングした音を保存する機能もない（電源をオフにすると消えるらしい）。性能面や品質面では「おもちゃ」であっても，「画期的な機能を実現した」などの重要な意味があれば，「ビンテージ」楽器として認定されることもあるのだろう。
いったい，「ビンテージ」の基準って，なんだろう？
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