撮影日記


2006年03月14日(火) 天気:曇

「写ルンです・くまのプーさん」から
APSフィルムを取り出す

「写ルンです」は,機能面に大幅な割り切りがあるが,写真を撮ることができる立派なカメラである。しかし,メーカーでは「カメラ」とはよばずに,「レンズ付きフィルム」とよんでいる。その理由として,発売当初はユーザに「使い捨てカメラ」とよばれていたのだが,「使い捨て」というイメージが悪いので,「カメラではない」という名称を推奨するようになった,ということがよく言われているようだ。だが,メーカーがなんと言おうとも,ユーザはこれを「カメラ」と認識していたことは間違いない。また,駅や観光地の売店などでは,「カメラあります」などと書かれた札がぶら下がっているのを見かけることも多いだろう。この「カメラ」は,もちろん「レンズ付きフィルム」を指しているのである。ちなみに,ジャスコというスーパーマーケットで売られていたものには,「使いきりカメラ」という名称が与えられていたのを見たことがある。さすがに「使い捨て」という表現は避けたようだが,「カメラ」であることをはっきりと認識できるので,この表現はなかなかいいと思う。

さて,「レンズ付きフィルム」には,「カメラ」としての基本的かつ重大な機能が欠如している。それは「フィルムの交換ができない」ことである。だからこそ「使い捨てカメラ」(あるいは「使いきりカメラ」)などとよばれることになるのである。
 メーカーでは,「フィルムを詰め替えて売られるのを防ぐ」ことや「本体のリサイクル」などのために,「フィルムの詰め替え」を禁止している。ところで,初代の「写ルンです」は110カートリッジフィルムだったが,2代目の「写ルンですHi!」以降は,パトローネ入りの35mmフィルムが使われた。これは,110カートリッジを使った「写ルンです」にくらべれば,詰め替えが難しいと言えるだろう。
 その後,APSフィルム(IX240カートリッジフィルム)も「レンズ付きフィルム」に利用されるようになった。APSでは,プリントサイズ指定機能やフィルム途中交換などの多くの「先進的」な機能が用意されていたが,カメラとしての機能を徹底的に割り切っている「レンズ付きフィルム」では,それらの機能は当然ながら,すべて使えない。そもそも,カートリッジフィルムは,パトローネ入り35mmフィルムにくらべてフィルムの装填を容易にするという,大きな機能的特徴を与えるために登場したもののはずである。フィルム交換という機能すら割り切った「レンズ付きフィルム」では,APSフィルムのごくごく基本的な特徴までも,スポイルされてしまっているのである。

そういう先進的なAPSフィルムを,「レンズ付きフィルム」で使うのはもったいない。そこで,先日買った,「写ルンです・くまのプーさん」から,フィルムを取り出すことにした。以下,その手順を簡単に紹介する。

「レンズ付きフィルム」では,フィルムはすべて引き出された状態で装填されている。撮影しながらカートリッジにおさめていくようになっているのだ。そこでまずは,フィルムを使いきらねばならない。レンズをパーマセルテープなどで覆い,巻き上げてシャッターを切る動作を最後まで繰り返す。

次に,「写ルンです」本体に貼られたシールをはがず。本体の前部と後部にまたがる部分だけはがせばよい。そして,ひっかかりの部分を精密ドライバで押さえてやれば,簡単に前後2つの部分に分離することができる。この状態で,電池も取り出しておくとよい。


注:フラッシュ関係の電気回路には,高電圧が加わっていることがある。レンズ付きフィルムを分解するときは,感電しないように注意が必要である。

そして,フィルムを取り出すには,ここを開ければよい。

APSフィルムには,フィルムが「未使用」「撮影途中」「撮影終了で現像前」「現像済み」のどの状態かを記録する部分がある。そこを「未使用」状態に戻してやる必要があるのだが,そのためには,先の細いドライバなどで,下のように動かしてやるとよい。

このようにして取り出したフィルムを「ネクシアQ1」に装填すると,新しいフィルムとして認識してくれたようだ。

初代「写ルンです」が登場したとき,「110カートリッジフィルムの在庫処分だ」「110カートリッジフィルムは滅びるんだ」などといううわさをよく耳にした。そんなことを思い出すと,「レンズ付きフィルム」は,APSフィルムに残された,貴重な生き残る道なのだろうか?という気がしてくるのである。


注:レンズ付きフィルムを分解して再利用したりすることは,メーカー補償の範囲外のことになるので,あくまでも自己責任でおこなうこと。


← 前のページ もくじ 次のページ →