2021年08月20日(金) 天気:曇
独自センサが気になるNikon D2H
Jim McGarvey氏によって書かれた「The DCS Story」は,Kodakのデジタル一眼レフカメラが開発されていった過程を記録した文書である。Jim McGarvey氏は,kodak DCSのシステム開発にかかわってきた人なので,この文書は,公式な内容のものであるとみなしてよいだろう(2019年11月4日の日記を参照)。この文書で,はじめに紹介されている装置は,1988年につくられたElectro-Optic Cameraである。それは,「1987年にコダックは,世界ではじめてのCCDイメージャを開発した」という文章からはじまっている。
CCDとは,撮像素子のことそのものではない。CCDは「電荷結合素子」というもので,そのしくみを利用してつくられた撮像素子が,CCDイメージャということである。のちに,CMOSというしくみを利用してつくられたCMOSイメージャが主流になっていく。
ここで,ニコンが発売した,デジタル一眼レフカメラを眺めてみよう。
ここでは,富士フイルムと共同で開発したという,Nikon Eシリーズ(FUJIX DS-505にはじまるシリーズ)は除いて考える。Nikon D1以降の機種について,その仕様をまとめると,つぎのようになっている。撮像素子の大きさや有効画素数の値は,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」に掲載されているものを記載する(ただし,Nikon D1だけは「266万画素」という表記だったので,ここでは四捨五入したうえでほかにあわせて「2.7メガピクセル」という表現に置きかえた)。また,イメージセンサの種類についても,「カメラ総合カタログ」で使われていた表現を利用している。
年 | 機種 | イメージセンサ | 有効画素数 (メガピクセル) | 大きさ (mm×mm) |
1999 | D1 | 原色CCD | 2.7 | 23.7×15.6 |
2001 | D1X | 原色CCD | 5.3 | 23.7×15.6 |
2001 | D1H | 原色CCD | 2.7 | 23.7×15.6 |
2002 | D100 | 原色CCD | 6.1 | 23.7×15.6 |
2003 | D2H | JFETイメージセンサ「LBCAST」 | 4.1 | 23.3×15.5 |
2004 | D70 | 原色CCD | 6.1 | 23.7×15.6 |
2005 | D2X | CMOSセンサ | 12.4 | 23.7×15.7 |
2005 | D2HS | JFETイメージセンサ「LBCAST」 | 4.1 | 23.3×15.5 |
2005 | D70s | 原色CCD | 6.1 | 23.7×15.6 |
2005 | D50 | 原色CCD | 6.1 | 23.7×15.6 |
2005 | D200 | 原色CCD | 10.2 | 23.6×15.8 |
2006 | D2XS | CMOSセンサ | 12.4 | 23.7×15.7 |
2006 | D80 | 原色CCD | 10.2 | 23.6×15.8 |
2006 | D40 | 原色CCD | 6.1 | 23.7×15.6 |
2007 | D40x | 原色CCD | 6.1 | 23.7×15.6 |
2007 | D3 | CMOSセンサ | 12.1 | 36.0×23.9 |
2007 | D300 | CMOSセンサ | 12.3 | 23.6×15.8 |
2007年に発売された,Nikon D3以降の機種は,COMSセンサを採用している。単純に,有効画素数が1000万画素以下の時代はCCDイメージャが使われており,有効画素数がそれを越えるようになった時代からは,CMOSイメージャが使われるようになっているようすがうかがえる。
そのように眺めてみると,Nikon D2Hが採用している「JFETイメージセンサ LBCAST」が気になる存在となってくる。LBCASTは,ニコンが独自開発した撮像素子とのことである。「進化したJFETイメージセンサー "LBCAST"搭載。」(*1)と宣伝しているからには,きっとCCDによる撮像素子よりもすぐれたなにかがあったのだろう。しかし,Nikon D2H(およびそのマイナーチェンジモデルといえるNikon D2HS)だけに採用されるに終わっている。すぐれたなにかがあった一方で,なにか問題点もあったということだろうか。あるいは,CMOSによる撮像素子の進化が,速かったということだろうか。
素子の詳しいしくみなどはわからないが,なにか特徴的な写りをするのかどうか,試してみたくなる。運がよいのかよくないのか,インターネットオークションにちょうど「よい出会い」があった。
本体のほかに付属しているのは,ストラップとバッテリーパックだけで,充電器はない。バッテリーパックを充電できないので,動作未確認という扱いだった。同じバッテリーパックを使うNikon D2Xがあるので,充電器が付属していないことは問題ない。付属していたバッテリーパックは,完全に放電していたようだが,充電してみたところまだじゅうぶんに使えそうである。
とりあえず,屋外で適当に写してみる。喫茶店の店頭に置かれた黒板には,季節ごとにいろいろなメッセージが書かれている。これくらいは拡大すると楽に読めそうな気がしたのだが,思ったよりも見えにくい。これは,400万画素の限界ということだろうか。同じような条件で,600万画素や1000万画素の機種で撮ったものと,比較したいところである。
Nikon D2H, AF-S DX Micro-NIKKOR 40mm F2.8G
2464ピクセル×1632ピクセルの画像を,600ピクセル×400ピクセルにリサイズしたもの。
2464ピクセル×1632ピクセルの画像から,600ピクセル×400ピクセルの範囲を切り抜いたもの。
なお,独自の撮像素子「LBCAST」による画像の特徴らしきものは,まだわからない。
*1 D2H デジタル一眼レフカメラ(株式会社ニコン)
→https://www.nikon-image.com/products/slr/lineup/d2h/
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