撮影日記


2015年09月14日(月) 天気:晴

使ってわかる電池の消耗
FUJI FinePix S2 Proは電池食い虫だ

先日,いまさらながらFUJI FinePix S2 Proを入手したのだが,これは思ったよりも使い心地がよさそうである。私がこれまでに使ってきたディジタル一眼レフカメラはNikon D70だけだから,どうしてもNikon D70だけとの比較になる。Nikon D70はラインアップの下位に位置するエントリーモデルであるが,FUJI FinePix S2 Proはどちらかというと中級機から上級機に該当する。だからそもそも,比較の対象にすることが間違っていると言われればそれまでだ。どちらも旧製品であるし,いまさら比較することは無意味かもしれないが,Nikon D70とくらべて気になったところなど,ぼちぼち語っていきたいと思う。

FUJI FinePix S2 Proは,Nikon F80をベースにつくられたディジタル一眼レフカメラである。したがって撮影のためのインタフェースは,Nikon F80そのものである。露出モードの切り替え,露出補正の方法,ダイアルの操作,フィルム感度の切り替えなど,まったく同じようにおこなうことができる。
 ディジタルカメラのもつ大きなメリットの1つに,1コマごとに感度の設定を切りかえることができる,というものがある。ディジタル一眼レフカメラを使うときには,フィルムのカメラを使うときと違って,頻繁に感度設定を変更する人も多いと思う。Nikon D70では,背面にある「ISO」のボタンを押しながらメインダイアルを回すことで,スムースに感度の設定を変えることができる。それに対してフィルムカメラであるNikon F80では,モードダイアルをさらにまわして,カスタムセッティングの部分をこえたいちばん奥に,感度設定のモードがある。そしてメインダイアルを回して設定する。FUJI FinePix S2 Proも当然ながら,そこは同じ操作になっている。これはわかりやすいのだが,扱いにくい。露出モードを一定にして感度設定を切り替えながら撮るような方法は,非常に面倒になる。
 感度設定の操作については,フィルムカメラを流用していないNikon D70のほうが都合よくできている。ただしNikon D70では,設定できる感度の範囲がISO 200〜ISO 1600となっており,ISO 100にできない。ISO 100のフィルムを使うことが多い私にとっては,わずかの差だが違和感がある。その点,FUJI FinePix S2 Proは,ISO 100,160,200,400,800,1600が設定できるのでありがたい。ISO 160という設定があるのは,プロ用カラーネガフィルムの感度にあわせて,それを常用している人にも違和感なく使えるようにという配慮だろう。
 ともかく,ISO 100に設定してまずはなにか撮ってみよう。

FUJI FinePix S2 Pro, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

言うまでもないが,まったく違和感なくふつうに撮ることができる。
 さて,FUJI FinePix S2 Proの撮影に関する操作はNikon F80と同じものである。つまり,Nikon D70ではできなかった多重露光もできるのである。

個人的に,多重露光は好きである(2014年7月24日の日記を参照)。

Nikon FM, Ai Micro-NIKKOR 200mm F4, EBX

好きなものはもちろん,意図的におこなう多重露光であり,操作ミスやカメラの不調による意図しない多重露光は基本的に好きではない。フィルムを使った多重露光は,現像しなければ結果がわからないので,どうしてもヤマカン一発勝負になってしまう(2006年10月1日の日記を参照)。

Nikon F3, AF Micro-NIKKOR 105mm F2.8S, EB

ディジタル一眼レフカメラで多重露光ができるならば,その都度結果を確認し,いろいろ試行錯誤して撮ることができる。これはとても,好都合である。

FinePix S2 Proでの多重露光は,次のような手順になる。
 まず,1コマ目を撮る。撮った画像は背面の液晶ディスプレイに表示され,その画像を「記録」するか「KEEP」するか「破棄」するかを選択する。「KEEP」すれば,次に撮影した画像が重ねられることになる。重ねられた画像が表示されるので,こんどは「記録」「KEEP」「破棄」のうち,「記録」を選択する。

FUJI FinePix S2 Pro, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED (multiple exposure)

これは,2回の露光をおこなっている。1回目はよく茂った木を下から,ボケのかたちが手ごろに丸くなるようにピンボケにして,ややオーバー目に撮影。2回目はちょうど通りがかった人をややアンダー目に撮影している。こうすることで,人物を明るい緑のなかでシルエットにできると考えた。その向こうを走る自動車は邪魔であるが,多重露光の実験だからこれでよいことにする。
 多重露光の方法については,「カスタムセッティング」で変更することができる。初期値は上の手順のように,「1コマ撮影」(1回露光するごとに確認する)になっている。これを「連続撮影」(1回露光するごとの確認をせず,連続的に多重露光する)に切り替えることができる。その場合は,シャッターレリーズボタンを押したままにすると0.5秒ごとに連写され,連写された画像が重ねられた状態で表示され,記録する。

FUJI FinePix S2 Pro, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED (multiple exposure)

走っている電車を,連続撮影で多重露光したものである。うむ,この場合には横着せずに三脚を使うべきだったが,これも多重露光機能の確認が主目的だから,これでよいことにする(笑)。ここでは4回の多重露光をしているので,露出補正を-2.0EVにしてAE撮影している。

こうやっていろいろ試し撮りをしているうち,電池残量の警告がでるようになってきた。電池がフルに充電された状態ではなかったからある程度は覚悟していたが,言いかえればまったくのフル充電した状態でないならば,予備の電池をもっておいたほうが安心できるということになる。

ところで「一眼レフカメラ」というと,プロやマニアが使う高級システムカメラをイメージするだろう。プロやマニアが一眼レフカメラを使ってきた理由の1つには,フィルムに写る像と同じ像をファインダーで確認できるから,正確にピントをあわせ構図を整えることができるという点が考えられる。これは,一眼レフカメラではない,ビューファインダーカメラや二眼レフカメラでは,どうしても越えることのできない点である。一眼レフカメラでは,レンズの後ろにミラーがあり,それがファインダーへ像を導く。シャッターレリーズボタンを押すと,そのミラーがあがり,シャッターが開いてフィルムに像が記録される。一眼レフカメラの「一眼」は,撮影のためのレンズ1つが,フィルムへもファインダーへも像を導くことを意味している。「レフ」は,レンズの後ろのあるミラーによる反射を意味している。
 最近のレンズ交換が可能なシステムディジタルカメラのなかに,「一眼カメラ」「ミラーレスカメラ」「ミラーレス一眼カメラ」とよばれるものがある。一眼レフカメラと同じように撮影のためのレンズ1つで,実際に記録される像を結び,ファインダーに表示させることができるカメラだが,一眼レフカメラと違ってレンズの後ろのミラーがない。そのため,一眼レフカメラから「レフ」を取り去った一眼カメラを名乗ったり,ミラーがないことを明瞭にあらわすためにミラーレスカメラを名乗ったり,あるいはそれをあわせてミラーレス一眼カメラと名乗ったりする。ディジタルカメラのあり方として,1つの方向性を示した優れた発想の製品だと思うが,その名称から「一眼レフカメラ」の高級なイメージに便乗し誤解を誘うような意図を感じてしまうので,個人的に印象がよろしくない。とくに「一眼カメラ」という名称については悪意すら感じてしまうので,はっきり言ってその名称は嫌いである。「ミラーレスカメラ」なら,違和感があるものの一眼レフカメラとの違いがわかりやすいので,許すことができる。
 繰り返すことになるが,「ミラーレスカメラ」とよばれる製品は,ディジタルカメラとしてとてもよいコンセプトの製品だと思う。以前にも書いたが,一般的な用途においては,ディジタルカメラは一眼レフである必要などこれっぽっちもないと思う(2012年7月29日の日記を参照)。それでも私がディジタルカメラにおいても一眼レフという形態にこだわっているのは,フィルムを使う一眼レフカメラと同じようなユーザインタフェースであり,そのユーザインタフェースに慣れているからという理由が大きい。また,フィルムを使う一眼レフカメラ用にそろえた交換レンズなどがそのまま利用できることも,理由としては大きなものになっている。
 私はまだ「ミラーレスカメラ」を所有し使っているわけではないが,それは「ミラーレスカメラ」が嫌いだからというわけではなく,「ミラーレスカメラ」というものを認めていないからでもない。「ミラーレスカメラ」でなければいけないという場面に遭遇しておらず必要としていないからであり,あるいはごく安価に入手できるような「よい出会い」がないだけのことである。どうしても必要であると感じたら購入するだろうし,「よい出会い」があれば衝動的に購入してしまうかもしれない(笑)。

一眼レフカメラは,フィルムに像を結ぶにもファインダーに像を結ぶにも,1つのレンズを使うようになっている。そのため,フィルムに写るのと同じ像を確認できるという大きなメリットがあった。一方,コンパクトカメラでは,フィルムに像を結ぶためのレンズとは別に,ファインダーのためのレンズがある。ファインダーは写る範囲を示すためのものだから,当然ながらフィルムに写るのと同じ範囲が見えているのだが,やはり正確さが足りない。とくに画面のギリギリにあるものが写るか写らないかは,判断が難しい。
 ところがディジタルカメラでは,状況が逆転する。
 コンパクトディジタルカメラは,撮影レンズで結ばれた像を撮像素子が受け,それを背面に設けられた液晶ディスプレイに表示させるようになっている。撮影者は,その液晶ディスプレイを見ながら,構図を決めたりピントを確認したりできる。撮影用にもファインダー用にも,1つのレンズを使っている。そういう意味では,コンパクトディジタルカメラも「一眼カメラ」なのである(「ミラーレスカメラ」でもある)。そして,一眼レフカメラでは,撮影レンズが結ぶ像はファインダーへ導かれてしまい,シャッターレリーズをおこなうまで撮像素子に届かない。コンパクトディジタルカメラでは「これが写りますよ」という像そのものを見られるのに対して,一眼レフカメラでは「これが写るはずですよ」という像を見ているのである。
 このようにディジタルカメラの背面に設けられた液晶ディスプレイは,とても重要な存在なのである。

ところが初期のディジタルカメラでは,別の問題が存在していた。液晶ディスプレイに像を表示させていると,電池が激しく消耗するのである。CASIO QV-10において,ファインダーを設けずに背面の液晶ディスプレイをファインダーとして使うスタイルが提案されたと言えるが,電池の消耗はかなり問題視されていたようである。そのため後の製品には,ファインダーを設けてフィルムを使うコンパクトカメラと同じようなスタイルにし,液晶ディスプレイをOFFにできるようなものもあらわれている。さらには,省電力と低価格化のために,画像を表示するための液晶ディスプレイをもたない製品も登場している。一昨日の日記で「クラデジ」として紹介した,FUJI CLIP-IT DS-10SやTOSHIBA Allegretto PDR-2などが該当する。
 1997年に発売されたOLYMPUS C-1400Lは,その問題への1つの解答と言えるものだろう。OLYMPUS C-1400Lは,一般向け製品としてはじめてのディジタル一眼レフカメラで,140万画素の撮像素子をもつ。128,000円というその価格は,同時期の業務向けディジタル一眼レフカメラとされる1996年発売のFUJI DS-505A (130万画素)の890,000円(*1)とくらべると,驚異的に安価である。ただしC-1400Lではピントも露出も,手動での調整はできない。ファインダーは素通しに近い見え具合で,ピントがあっている位置がどこであるかは判別できるが,微妙なピントの具合やボケ具合などの確認は困難である。液晶ディスプレイを使わなくても,構図をきちんとつくることができるところに,C-1400Lが一眼レフのスタイルを採用した意味があるというわけだ。
 それでも,C-1400Lでは電池の消耗がすさまじい。新品のアルカリ単3乾電池を使っても,あまり安心していられない。それではと,単3型Ni-Cd充電式電池を使ったら,1日の間に何回も交換が必要になる。単3型Ni-MH充電式電池を使うようになって,ようやく安心して持ち歩けるようになったものだ。C-1400Lは記録メディアとして,2MB,4MB,8MBのスマートメディアを使用できる。最高画質で撮影すると1コマあたりの画像データの大きさが1MB弱になるので,8MBのスマートメディアを使っても8コマ(場合によっては9コマ)しか記録できない。もし,もっとたくさん撮影できるような記録メディアがあったなら,Ni-MH充電式電池を使っても予備の電池を大量に持ち歩く必要があったかもしれない。

その後,ディジタルカメラでは汎用的な単3型乾電池ではなく,専用のリチウムイオン充電式電池が使われるようになった。本体の省電力化と電池の高性能化とによって,電池についてあまり心配する必要がなくなった。そのかわり,充電式電池が劣化したときに,あらたにその電池を購入できるのかどうかが気になるようになった。実際には,ほどほどに使っている限り,リチウムイオン充電式電池は意外と長持ちするようである。私が使っているNikon D70の電池は,途中でいちどリコールがあって新品に交換された(*2)こともあるせいか,いまでも問題なく使えている。だから,専用の充電式電池を使うようになっているからといって,あまり神経質になる必要はないのかもしれない。とくに,新品を充電器や充電式電池も含めたセットで購入する場合には。
 そうは言っても,ディジタルカメラ本体がまだ使えるのに,専用の電池の寿命が尽きて使えなくなった,という状況になるのはやはり悲しい。幸い,Nikon D70は専用の電池EN-EL3のほかに,CR2リチウム電池(3個)で使うこともできる。CR2型充電式電池を使えば,電池の価格をあまり気にする必要もないかもしれない(2015年3月1日の日記を参照)。新品で購入するときには,CR2リチウム電池で使うためのアダプタが付属しているが,中古品で買うときにはそれが失われている可能性もあるので,気にしておきたいところだ。

前置きが長くなったが,FUJI FinePix S2 Proでもっとも気になる点として,「電池」のことを指摘したい。FinePix S2 Proは,専用の充電式電池ではなく,汎用の電池で使うようになっている。具体的には,単3型電池4本と,CR123Aリチウム電池2本である。
 はじめにも書いたようにFinePix S2 Proは,Nikon F80をベースにつくられたディジタル一眼レフカメラである。乱暴に言ってしまうと,ニコンの一眼レフカメラに,フジのディジタルカメラを内蔵させている。CR123Aは,Nikon F80を動作させるためのもので,単3型電池4本はフジのディジタル回路を動作させることになる。電池の消耗は激しいようで,撮影で持ち歩くときには,予備の電池を用意しておきたい気分になる。CR123Aも単3型電池も充電式の電池を使うことになるが,とくに単3型電池についてはNi-MH充電式電池を使っても,何日も入れっぱなしにできるようなものではないようだ。それでも汎用の電池で動作してくれる点は,とてもありがたい。また,CR123Aを使わずに,単3型電池4本だけでも動作させることはできる。ただしその場合は,数カット撮っただけですぐに電池残量の警告を発するようになり,動作がスムースではなくなり,あまり実用的な状況ではない。また,内蔵のフラッシュも使えない。撮影にでかけて電池が切れたというときにでも,コンビニエンスストアでアルカリ単3乾電池を買ってくれば,とりあえず撮影は続行できるという,非常措置のためのものである。Nikon F3にある「緊急動作レバー」(電池がなくなっても機械制御で1/60秒の露光ができるレバー)のような,万が一のときになんとか撮影が続行できるというようなものと考えればよいかもしれない。
 FinePix S2 Proの「Pro」は,伊達や酔狂で名乗っているものではないのだろう。しばらく活躍の場がなかったNi-MH充電式電池が,ひさしぶりに忙しくなってきたようだ。CR123A型充電式電池も,この機会に追加で購入した(2015年6月25日の日記を参照)。

そういう厳しい制約があるものの,単3乾電池4本で動作させられるディジタル一眼レフカメラは,貴重な存在だ。この点は,高く評価したい。先にも書いたように,単3型Ni-MH充電式電池4本だけで使っていると,すぐに電池残量が少ないという警告が出ることをお忘れなく。

*1 VT方式 130万画素 2/3インチCCD搭載「フジックス デジタルカードカメラ DS-505A」新発売 (富士フイルム株式会社)
http://www.fujifilm.co.jp/news_r/nrj110.html

*2 ニコンデジタル一眼レフカメラ用 Li-ion リチャージャブルバッテリー EN-EL3ご愛用のお客様へ (株式会社ニコン)
http://www.nikon-image.com/support/whatsnew/2005/wnew051108_bp.html


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