撮影日記


2012年07月29日(日) 天気:晴

ディジタルカメラが一眼レフである必要は?
C-1400Lの魅力を再確認

最近,立て続けに「一眼レフとミラーレス,どっちがいいの?」と質問されることがあった。質問主は,写真やカメラのマニアなどではない,普通のユーザである。コンパクトカメラよりもちょっと「いい」カメラがほしくなったとき,一般的には「一眼レフ」を選ぶしかなかったわけだが,いまでは「一眼レフ」と「ミラーレス」の2つの選択肢があるということだ。

かつて一般の人にとって,カメラは2種類あった。「コンパクトカメラ」と「一眼レフカメラ」である。以下は,その2種類だけを意識して話を進めたい。
 「コンパクトカメラ」は,小型軽量化や自動化が進んで,だれもが簡単に使えるカメラになっていた。それに対して「一眼レフカメラ」は,コンパクトカメラと同様に自動化が進んだものの,コンパクトカメラにくらべればやはり大きく重く,そして高価であった。一般的にはおおむね,コンパクトカメラはとくにカメラや写真を趣味や仕事にしていない人が使うもの,一眼レフカメラはマニアやプロが使うもの,とみなされていたと言っていいだろう。
 「コンパクトカメラ」と「一眼レフカメラ」と違いは,大きさ,重さ,価格だけではない。「一眼レフカメラ」は多くの場合,多くのアクセサリ(周辺機器)が用意された,システムカメラとして商品化されていた。そのもっともわかりやすい要素としては,「交換レンズ」がある。たとえば発表会や運動会などで,自分の子どもを大きく写してやりたい,と考える人は少なくないだろう。きれいに咲いた花を画面いっぱいに大きく写してやりたい,と考える人も少なくないだろう。「コンパクトカメラ」ではむずかしくても,「一眼レフカメラ」なら,「望遠レンズ」や「マクロレンズ」につけかえることで,それらは簡単に実現されるのであった。「コンパクトカメラ」でも,ズームレンズが内蔵されるようになってある程度の望遠撮影ができるようになったり,被写体に接近してある程度のマクロ撮影ができるようになってはいったが,それでも「一眼レフカメラ」と「交換レンズ」との組みあわせで得られる像にはおよばない。写る像の大きさも小さければ,ピントもどことなく甘いなど,画質も劣る。さらに,中心においたはずの被写体が隅の方に写っていることもある。それは,「下手くそ」なのではない。「コンパクトカメラ」を使う限界と考えるべきだろう。誤解を恐れずにあえて言えば,「一眼レフカメラ」で「望遠レンズ」あるいは「マクロレンズ」を使うのに適した場面で「一眼レフを選ばずに,コンパクトカメラを選んだ」ことが,「写真の撮り方がわかっていない」ということなのである。
 写る像の大きさや画質について,「コンパクトカメラは安物だから」と勝手に納得する人もあるだろう。しかし,それは必ずしも正しくない。「コンパクトカメラ」と「一眼レフカメラ」とには,機構上の大きな違いがある。「コンパクトカメラ」は,フィルムに像を結ぶためのレンズとは別に,ファインダーのレンズがある。それに対して「一眼レフカメラ」では,1つのレンズをフィルムに像を結ぶためと,ファインダーに像を結ぶためとに兼用しているのである。つまり「コンパクトカメラ」のファインダーは,「だいたいこんな範囲が写るよ」ということを示しているにすぎないのだが,「一眼レフカメラ」のファインダーの像は「実際に写るものにかなり近い」ものなのである。写る範囲にずれはないし,ピントがあっているかどうか,そこで確認することが可能である。ここが,「一眼レフカメラ」の本質であるといえよう。
 「コンパクトカメラ」では「だいたいちゃんと写るけど細かいことは運任せ」的なところがあるが,「一眼レフカメラ」ならばちゃんと使えば失敗をかなり避けることができるともいえる。

「ミラーレス」の話にもどろう。
 「ミラーレス」とは,「一眼カメラ」とよばれることもあるタイプのディジタルカメラをさす。とくに「一眼カメラ」とよばれるディジタルカメラは,一眼レフカメラ風のスタイルをもちながらも,「一眼レフ」の機構をもたないカメラである。「一眼レフカメラ」の「レフ」は,「反射」を意味する。一眼レフカメラは,撮影用のレンズを通して得られる像を,ミラーを用いてファインダーに導くしくみをもったカメラである。一眼カメラには,そのミラーがないのである。つまり,「ミラーレス」だ。「ミラーのない一眼レフカメラ」という意味になるわけで,ミラーがないのに一眼レフ?という,やはり意味不明の名称である。したがって個人的には「一眼カメラ」はもちろん,「ミラーレス」という言葉も使いたくないのだが,世間ではそういう呼び名が流通しているのだから,しかたない。
 ともあれ,最初の「一眼レフとミラーレス,どっちがいいの?」という質問には,基本的に「ミラーレスが使いやすいだろう」と返事をすることにしている。そもそも,ディジタルカメラが一眼レフである必要など,どこにもないはずだ。ではなぜ,私はディジタル一眼レフカメラを使っているか?それは,「一眼レフカメラ」という撮影するためのインタフェースに,長年なじんでいるからにほかならない。今までと同じ感覚で使える,それだけのことだ。だからそこにこだわりのない人は,無理に一眼レフカメラを使う必要はないだろう,と思うわけである。

「一眼レフカメラ」のメリットは,なんだっただろうか。先にも書いたように,ファインダーで見える像が「実際に写るものにかなり近い」ということだ。それが,「コンパクトカメラ」と「一眼レフカメラ」との本質的な差なのである。
 ところが,ディジタルカメラの時代になって,状況がかわった。カメラに,「液晶モニタ」というものが搭載されたのである。「液晶モニタ」は,撮影した画像を表示させるためにつけられたものだが,撮影中の画像も表示させられるようにもなった。「コンパクトカメラ」であっても,「実際に写る像」を見ながら撮影できるようになったのである。「一眼レフ」にしかなかった大きなメリットが,「コンパクトカメラ」にもやってきたのである。
 だから,見やすい液晶モニタがついているなら,別のファインダーなど不要なのである。ましてや複雑な,一眼レフというメカニズムなどなくて済むならないほうがよい。その分,機械が軽くなるだろうし,動作する部分が減れば故障も少なくなるだろうし,価格も下がることだろう。「一眼カメラ」や「ミラーレス」という呼び名は認めたくないが,それはディジタルカメラとして必然的な姿なのだと思うところだ。
 しかし,「コンパクトカメラ」でも,光学ファインダーのついた機種は少なくない。光学ファインダーがついていると,それだけ機械が重くなり,価格も高くなるはずである。なくて済むならないほうがよいのだが,使う機会は少なくても,やはり必要だから光学ファインダーがついているということだ。光学ファインダーを使った撮影は,従来からのカメラと同じ感覚で使えるというメリットがある。また,光学ファインダーでの撮影は,カメラを顔に押しつけておこなうことになり,それだけカメラブレしにくくなる。さらに,液晶モニタをオフにしておけば,電池の消耗を抑えらえる。

初期のディジタルカメラでは,「電池の消耗」は大きな問題だった。また,液晶モニタやカメラ内部の画像処理機構も発展途上にあり,液晶モニタの反応が悪く,動きの速い被写体を液晶モニタで追いかけるのが困難な場合もあった。液晶モニタでの撮影が便利なことはわかるのだが,問題点も多かったのである。だから,ぜひとも「一眼レフ」のディジタルカメラが登場してほしかったものだ。いや,あるにはあったが,きわめて高価で,個人で手軽に買えるような代物ではなかった。ようやく手軽に買うことができた「一眼レフ」のディジタルカメラは,これだった。

オリンパス「C-1400L」である。型番の「1400」から想像つくと思うが,140万画素クラスのディジタルカメラである。また,末尾の「L」は,オリンパス「L-1」にはじまるシリーズと同様の,L型ボディのズームレンズ一体型一眼レフカメラであることをあらわしている。オリンパス「C-1400L」は「一眼レフカメラ」であるが,一般的な「一眼レフカメラ」のイメージとは大きく異なる。1つは,ズームレンズと一体型で,レンズ交換ができないこと。もう1つは,ファインダーへ像を導くのが可動式のミラーではなく,固定されたプリズムであるということだ。とはいえ,これでも1つのレンズを撮影のためとファインダーのためとに共用する「一眼レフカメラ」の本質は実現されている。あまり見やすいものではないとはいえ,ピントが大きく外れていないことや,被写体を意図したところに配置することなどは,十分にできるのである。
 オリンパス「C-1400L」は液晶モニタを内蔵しているが,この液晶モニタをファインダーとして使うことはできない。不便ではあるが,オリンパス「C-1400L」は一眼レフカメラだから,それは重大な問題とはならない。実際に使うと,かなり電池を消耗するカメラだと感じるので,液晶モニタは基本的にオフにしておくのが無難だろう。
 さて,オリンパス「C-1400L」を久しぶりに使ってみたが,やはりこれはよいディジタルカメラである。「マクロモード」もあり,この程度の画像は簡単に撮れてしまう。像の具合も,悪くない。

OLYMPUS C-1400L, 9.2〜28mm F2.8〜3.9
OLYMPUS C-1400L, 9.2〜28mm F2.8〜3.9

これくらいの像が簡単に得られるのだから,私はもっと,オリンパス「C-1400L」を積極的に使うべきだったのだ。だからと言って,今後,これを積極的に使えるかと考えれば,それは否である。
 オリンパス「C-1400L」の問題点として,まっ先に指摘しておきたいことは,記録メディアの制約である。使うメディアは,SDカードやCFカードではない。スマートメディアである。しかも,(メーカー改造を経たもので)最大32MBまでしか対応しない。オリンパス「C-1400L」のいちばん高画質のモードでは,1つの画像の大きさがおよそ1MBになる。32MBのスマートメディアを使っても,せいぜい34〜35カット程度しか記録できない。私の手もとにあるのは8MBのスマートメディアなので,1枚のスマートメディアに8コマ程度しか記録できないのである。ディジタルカメラの場合,間違いなく,フィルムカメラよりも速いペースで撮影をおこなうことになる。8コマごとにメディアを交換するなんて,まったく冗談ではない。
 また,オリンパス「C-1400L」にはUSB端子がない。そのかわりについているのが,RS-232C端子である。そういう時代なのだ。この機種のころは,パソコンも含めたディジタルカメラとしてのシステムが,全体として発展途上だったとも考えられる。
 それに対して,電源が単3乾電池4本というのは,たいへんよい面である。専用バッテリーを使うようなディジタルカメラには,本体が故障していないのに電池が寿命になって(しかも後継機のバッテリとは仕様が異なっていたりして)使えなくなるという悲劇が待っている。
 ともあれ,これほどのカメラが登場してまだ15年というのに,もう「使い物にならない」状態であるのは寂しいものがある。いや,「カメラ」と考えれば15年は短いのだが,パーソナルコンピュータないしその周辺機器と考えれば,15年は十分に長いと考えるべきだろうか。


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