撮影日記


2014年6月1日(日) 天気:晴

ミノルタ「PROD 20's」
「撮る気にならない」その理由を考える

私がコンパクトカメラに求めるものは,まず,とにかく「携帯しやすい」こと。そして,「きっちりと写る」ことである。
 「携帯しやすい」ためには,小さいことも重要だが,突起が少なく全体的に薄いことが望ましい。多少厚みがあっても,レンズが飛び出ていないデザインのものが好都合だし,沈胴式ほどうれしいものはない。
 「きっちり写る」ためには,レンズなどの品質が一定以上のものであるのは当然として,露出やピントが合っているかどうか確認できること,あるいは自分で調整できることが望ましい。露出は少しくらいずれていてもプリント時に調整できる可能性もあるが,ピントはできるだけきっちりと合わせられることが望まれる。
 そのうえで,安価に流通するカメラが「理想のコンパクトカメラ」ということになる。

「ニコン ミニ」(Nikon AF600)は,私にとって理想的なものに近いコンパクトカメラの1つである。

まず,なんといっても小さい。発売当時,「世界最小最軽量の35mmフルサイズフルオートカメラ」(*1)である。レンズは沈胴式で,収納時にはボディがほぼフラットになる。搭載されたレンズは,28mm F3.5という広角レンズ。広角レンズの場合,漫然と撮るとただ広範囲が写っているだけの写真になってしまいがちだが,「ニコン ミニ」は最短撮影距離が0.35mなので,被写体に接近して遠近感を強調するような撮影が楽しめる。そして,写りもシャープ。コンパクトカメラとしては,上出来である。
 惜しい点としては,ボタン類が押しにくいことがある。どのボタンも,かなりしっかり押しこまないと,反応しないようだ。また,シャッターレリーズボタンを押してから実際に露光がおこなわれるまでのタイムラグが気になる。コンパクトで軽いカメラなので,シャッターレリーズはできるだけそうっとおこないたいのだが,どうしてもやや荒い扱いになりがちである。あと,最短撮影距離がかなり短くなっているだけに,おおよそでいいから測距結果が表示されると安心できる。

「オリンパス XA」(OLYMPUS XA)も,私にとって理想的なものに近いコンパクトカメラの1つである。

レンズキャップを不要にした「カプセルタイプカメラ」というスタイルを確立し,後のカメラに大きな影響を与えてきたカメラである。専用フラッシュをつけていないときのコンパクトさは,大いに評価できるものである。このサイズでありながら,ピント調整に連動する二重像合致式距離計を内蔵し,露出調整は絞り優先AEになっている。ファインダー内の露出計はシャッター速度を示すようになっているので,任意の絞りを選べると同時にシャッター速度も確認できるのだから,文句のつけようがない。
 惜しい点は,フラッシュ。フラッシュ(A11)の電源が単3乾電池1本であるため,チャージが遅い。また,日付写しこみ機能がない。「作品」を撮るためならば不要かもしれないが,日常の記録のために使うときには,ぜひとも欲しい。また,二重像合致式距離計や絞り優先AEという仕様は,マニア層には歓迎されてもふつうのユーザには使いにくいものだろう。これもシャープな写真が撮れるので,個人的には高く評価したいのだが,一般的なコンパクトカメラとしては惜しいところだ。
 そういう意味では,廉価版である「オリンパス XA2」のほうを,高く評価するべきかもしれない。

京セラ「コンタックス Tvs」(CONTAX Tvs)は,コンパクトカメラとしての理想をほぼ叶えてくれているように思う。

「ニコン ミニ」や「オリンパス XA」にくらべればずいぶんと大きいのだが,沈胴式レンズのために撮影しないときはほとんどフラットになり,カバン等へのおさまりはすこぶる良好となる。ここは,非常に重要な点だ。全体的に小さくても,出っ張った部分が大きいと,携帯しにくく感じるのである。
 ピント調整は,オートフォーカスとマニュアルフォーカスを切り替えることができる。オートフォーカス時にもマニュアルフォーカス時にも,ファインダー内の合焦インジケータが利用できるので,具合がよい。露出調整は,プログラムAEと絞り優先AEが使え,露出補正専用のダイアルもあり,これも好都合だ。レンズは,広角28mmからの2倍ズームレンズで,標準域までをカバーする。そして,これもシャープな写真を撮ることができる。いつでもお手軽に写真を撮りたい,という機能的には大満足なカメラである。「写真を撮ろう」という気分を強くしてくれるカメラだ。
 惜しい点は,オートフォーカスとマニュアルフォーカスの切り替えにある。オートフォーカスの位置にクリックストップはあるのだが,カバン等の出し入れの際に,これが動いてしまうことがよくあるのだ。とっさに取り出してささっと写したい,と思うときに,オートフォーカスの状態からはずれていると撮り損ねてしまう。もう1つ残念なのは,このカメラが高価であること。最近でこそ,中古品にきわめてお手軽な価格がつけられているのを見ることが増えたが,もともとのメーカー希望小売価格は170,000円(*2)で,「オリンパスXA」(フラッシュなし,35,800円,*3)や「ニコンミニ」(37,000円,*1)の約5倍である。長い間,中古品であっても,お気軽に買えるような価格ではなかったのである。「17万円くらいは,いつでも気軽に出せる金額だよ」と感じている人とは,残念だがたぶん友だちになれない。
 ともかく,価格以外はほぼ「理想的なコンパクトカメラ」だと言いたい。

ここしばらく「CONTAX Tvs」を使うことが多かったので,「ここしばらく使っていないカメラ」や「入手して以後,いちども使っていないカメラ」にもフィルムを装填してみた。そうして使っているカメラに,「ミノルタ PROD-20'S」や「京セラ TD」がある(2014年5月30日の日記を参照)。
 「CONTAX Tvs」が「撮りたくなる」カメラであるのに対して,「ミノルタ PROD-20'S」はほんとうに「撮る気にならない」カメラである。
 ファインダーを覗いて,シャッターレリーズボタンを押すだけ。それ以外,なにもすることはない。フラッシュは勝手に発光し,強制的に発光させることも,発光を禁止することもできない。それに加えて,ファインダーになにも情報が表示されないことも,「撮る気にならない」ことにつながる。この種のコンパクトカメラに,露出の具体的な値の表示などは求めていない。ほかのごく一般的なコンパクトカメラと同様に,「合焦しましたよ」「フラッシュのチャージができましたよ」という程度のものでよいのだ。それも,ほんとうにそういう情報がほしいからではなく,シャッターが動作する直前になにか合図をしてほしいだけなのかもしれない。
 「ミノルタ PROD-20'S」は,ほんとうに,手ごたえのないカメラなのである。
 シャッターレリーズボタンには,「半押し」という感触がない。インジケータ等による合図もない。そして,なんといってもシャッターの感触がほとんどないのである。ここはもしかすると,「動作時のショックや音がきわめて小さい」という,「ミノルタ PROD-20'S」唯一最大の利点といえるだろう。そうであれば舞台などの撮影に適しているのかもしれないが,フラッシュの発光を禁止することができないから,そういう場面では使えそうにない。
 それでも,ものすごく小さいのであればそこが魅力になるわけだが,京セラの「CONTAX Tvs」よりもさらに大きいのだからどうしたものか。「小さすぎても使いにくいんだ,これくらいがちょうどいいんだ」という印象も受けない。まったく,「外見だけ」(それも,なんかいまひとつ,好意的な見方ができない…)が特徴だ,といわれてもしかたないだろう。

なお,「ミノルタ PROD-20'S」にくらべれば,「京セラ TD」はじゅうぶんに「撮りたくなる」カメラである。まあ,たいした機能は用意されていない。電源スイッチとシャッターレリーズボタンのほかに,フラッシュの「強制発光」ボタンと「発光禁止」ボタンが用意されているだけ。ファインダー内には,おおよその測距結果が表示されるようになっているだけ。「CONTAX Tvs」とくらべればまったく物足りないが,「ミノルタ PROD-20'S」と並行して使っているせいか,これでも大いに満足できている。
 「京セラ TD」に装填したフィルムの消費も,着々と進んでいる。「中判写真週間」がはじまるまでに使い切って,そのあとは「中判写真週間」に集中したいものである。

*1 日本カメラショー「カメラ総合カタログ Vol.106」(1993年)による。

*2 日本カメラショー「カメラ総合カタログ Vol.108」(1994年)による。

*3 日本カメラショー「カメラ総合カタログ Vol.91」(1988年)による。


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