撮影日記


2009年07月29日(水) 天気:曇ときどき雨

レンズを押さえる謎のリング

ツァイス・イコン(ZEISS IKON)社は,第一次世界大戦後にドイツの有力メーカーがカール・ツァイス財団を中心に合併してできた,有力なカメラメーカーであった。
 ツァイス・イコン社の代表的な製品には,コンタックスやイコンタがある。コンタックスといっても,日本のヤシカ(京セラ)が製造していたCONTAXではない。ライカによって実用性が広く認められるようになった35mm判小型カメラにおいて,ライカより高性能なものをめざしてつくられた,当時としては最先端のカメラである。イコンタは,蛇腹をもった古いスタイルのカメラであるが,ボタンを押すとバネの力でレンズボードが起き上がって自動的に撮影態勢になるという,後にスプリングカメラとよばれる新しい機構をはじめて実現した製品である。
 ネッターは,ツァイス・イコン社の製品で,イコンタの廉価版として位置づけられるスプリングカメラである。

ネッターとよばれるカメラには,画面サイズや搭載されているレンズ,シャッターなどの違いによるさまざまなモデルが存在する。ここに取り上げたネッターは,120フィルムを使って6cm×4.5cmの大きさの画像が得られる,セミネッターと通称されるカメラで,カメラの背面の革には「Nettar 515」という文字が記されている。
 廉価版のカメラらしく,搭載されたレンズはNettar-Anastigmat 7.5cm F6.3という3枚構成のもの。シャッターは,T,Bのほかは1/25,1/50,1/100の3段階だけのDERVALシャッターである。しかし,中判カメラとしては驚異的な小型軽量なカメラという大きな魅力をもったカメラである。

そんな魅力的なカメラであるが,惜しむらくはレンズが激しく汚れ,カビも見られる状況であった。
 しかし,ピント調整は前玉回転式,搭載されたレンズは3枚構成というシンプルな機構のカメラだから,簡単に分解して清掃が可能なはずである。さっそく,ピントリングについた小さなネジをゆるめ,前玉をはずして清掃をおこなう。

前玉をはずしたら,次は中玉である。
 前玉をはずせば,そのまま中玉をはずせるようになるカメラもあるが,ネッターの中玉はしっかりとレンズボードに止められているようで,簡単には出てこない。では,なんらかのネジで止められているのかと思えば,こんなリングで止められているのであった。

ところが,このリング。しっかりと止まっていて,動く気配がない。力を加えても,引っこむわけでもなく,回転するわけでもなく。このままじゃ夜も寝られないぞと思いながら,リングの切れ目に細いドライバをさしてちょっとひねってみれば,難攻不落とも思われたリングはいとも簡単にはずれたのであった。

中玉がはずせれば,その両面も,後玉も,きれいに清掃できる。
 このカメラは,ペルレ(2009年06月29日の日記を参照)やセミレオタックス(2009年07月09日の日記を参照)のような,蛇腹の問題は抱えていないようである。
 セミネッターが最初に発売されたのは1934年とのこと。今回のセミネッターがいつごろ製造されたものかはわからないが,おおむね70年前のカメラということだ。


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