撮影日記


2009年07月27日(月) 天気:晴のち曇

カメラは「レンズ交換」の有無で分類される

1960年3月1日から6日まで,東京日本橋の高島屋8階催し物場で,最初の「日本カメラショー」が開催された。当時の日本写真機工業会加盟メーカーによる,カメラに関する総合的な見本市である。このとき発行された総合カタログ「カメラ総合カタログvol.1」(2007年08月09日の日記を参照)は,1960年当時の日本国内のメジャーなカメラメーカーが,どのような製品を発売していたかを知ることができる貴重な資料である。
 現在,「日本カメラショー」は,「フォトイメージングエキスポ(PIE)」としてカメラ映像機器工業会(CIPA)などによって開催されるように変化している。

この「カメラ総合カタログ」を全年度分そろえると,日本で流通した主要なカメラの変遷がよくわかる便利な資料になるはずである。現在,1960年版から2008年版のうち,1963年版から1966年版の4年分がまだ入手できていない(2009年05月26日の日記を参照)。また,複数の版が発行された年度もある。同一年度であっても,版が違えば掲載されている製品が微妙に変わっていることもある。だから,どうせなら完全にそろえたいものであるが,すべての版をそろえるとトータルで100冊を軽くこえるものになってしまう。入手するのもたいへんだし,保管しておくのもたいへんだ(笑)。だから,版が違っても,すでに手もとにある年度のものであれば,無理に入手するようなことはせずにいた。
 ところが,同じ1960年度版でも,vol.1とvol.3の内容は,まったく異なっていた。これは,入手しておかなければならない。

左:「カメラ総合カタログ」vol.1(1960年03月01日発行)
  右:「カメラ総合カタログ」vol.3(1960年10月12日発行)

「カメラ総合カタログ」vol.1は,はじめての「日本カメラショー」にあわせて発行されたものである。そのためか,メーカーごとに形式が異なっており,各社の広告を寄せ集めただけのような内容になっている。
 それに対して,「カメラ総合カタログ」vol.3では,各ページのレイアウトが統一されるようになっている。
 さらにおもしろいことに,「カメラ総合カタログ」vol.3では,製品のカテゴリごとに掲載されている。カテゴリは,次の7つにわけられている。

 (1) 35ミリフォーカルプレーンシャッターカメラ
 (2) 35mmミリレンズシャッターカメラ
 (3) 6×6判レフ,小型カメラ
 (4) 特殊判カメラ
 (5) アクセサリー
 (6) 8ミリ撮影機
 (7) 8ミリ映写機,スライド映写機

 (1)に含まれるものはフォーカルプレーンシャッターを搭載した,一眼レフカメラやいわゆるレンジファインダーカメラなど交換レンズ等が充実したシステムカメラで,アサヒペンタックスS2,キヤノンPポピュレール,ニコンFなど14機種が掲載されている。(2)に含まれるものは,レンズ交換のできないタイプのカメラで,ニコレックス,オリンパスペンS,フジカ35-SEなど39機種が掲載されている。(1)と(2)の区分はシャッターの形式の違いによるものであるが,レンズ交換ができるかできないかが重視されているようにも思われる。(2)に含まれるカメラは,オリンパスエースEやリコー999を除いて,一眼レフカメラも含めてレンズ交換ができないものばかりである。当時,レンズ交換ができるものは「プロ」や「マニア」用,レンズ交換ができないものは「一般」用という解釈がされていたのかもしれない。
 (3)には,まだ発売が続けられている,6×6判や4×4判の二眼レフカメラが含まれる。さらに,6×6判や35mm判のフジペット,16ミリカメラのマミヤ16オートマットなども掲載されている。どちらかといえば,(1)や(2)がこれから主流になるカメラであると見られていたのに対し,(3)は旧規格のものも含めた「その他大勢」という見方がされていたのかもしれない。
 (4)に含まれているのは,トプコンホースマンプレスとマミヤプレスだけである。リトレックIIAが(4)ではなく(3)に含まれていた理由は,よくわからない。

「カメラ総合カタログ」vol.3では,カテゴリごとに掲載されている。

最近,反射光学系をもったファインダーをもたないタイプのディジタルカメラ(一眼レフではないディジタルカメラ)で,レンズ交換のできるものが各社から登場している。これらは,いわゆるコンパクトディジタルカメラよりも1クラス上をねらった製品として位置づけられているようだ。「一眼レフカメラ」ではないこれらのディジタルカメラは「一眼カメラ」と名乗って,コンパクトディジタルカメラの仲間ではなく,一眼レフディジタルカメラの仲間であると自己主張しているように見える。
 「一眼カメラ」という名称が適切かどうかという問題はあるが,「レンズ交換ができる」「レンズ交換ができない」という特徴でカメラを分類することは,どうやら古くからおこなわれていることのようである。


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