撮影日記


2008年02月17日(日) 天気:晴ときどき雪

雪降るなかでキエフとゾルキーを使った

本通方面に用事があったので,キエフ5とゾルキーをもって出かけた。キエフ5には,NEOPAN 100 ACROSが,ゾルキーにはDNP CENTURIA 100を装填してある。KIEV 5にはJupiter-12 35mm F2.8,ZORKYにはInduster-22 50mm F3.5と思われるレンズをつけてある。
 なぜ,「と思われるレンズ」と書いたのか。
 このZORKYには「Leica」と書いてあるのだ(笑)。「らいか」とひらかなで書いてあるのではない。筆記体のアルファベットで「Leica」と刻まれているのである。いかに筆記体で,本物に似せたように「Leica」と書いていても,正面にシンクロ接点があって,ファイダー部の背が高い外見をしたカメラが,バルナックライカであるはずがない。どこからどう見ても「ゾルキー(ZORKY)・エス」(ЗОРКИЙ С)である。それをわかっていて楽しむのが,このカメラに対する礼儀というものであろう。そして,ZORKYに「Leica」と書いてあるように,レンズにも「Leitz Elmar 5cm 1:3.5」と書いてあるのだ。その正体は,たぶんInduster-22 50mm F3.5だと思うのだが,外見だけではそこまで判断できない。

ゾルキー・エス
カメラにはLeicaと書いてある。
レンズにはElmarと書いてある。

ZORKYでも,最初のモデルは,もっとバルナックライカに似たカメラだったようだ。似てはいるが,細部にまで忠実にコピーをしているわけではない。たとえば,マウント内部に見える距離計に連動する部分の先端は,バルナックライカは回転するコロになっていてよりスムーズに連動するようになっているのに対し,ZORKYでは丸い形になっているだけである。だから,シンクロ接点のない初期のZORKYに「Leica」と書いてあっても,そこを見ればそれがバルナックライカでないことには容易に気がつくことであろう。このZORKYは,そんなカメラにシンクロ機構がつけられた「改良型」である。
 ということで,「Leica」と書いてあってもこれはあくまでZORKYなのだが,バルナックライカに似せたカメラだけあって,そのコンパクトさは十分に活かされている。シンクロ接点がついて若干背が高くなっているけれど,それでも十分にコンパクトである。とくに今日は,KIEV 5といっしょに持ち歩いているのだから,それがなおさら目立つ。ZORKYがコンパクトであることと比較すれば,KIEV 5が無駄に大きく感じられるわけだ。ZORKYのシャッター速度はBと1/25〜1/500秒なので,KIEV 5のBと1/2〜1/1000秒にくらべると,かなり劣っているように見える。しかし,この種のカメラはおもに手持ちでスナップ的に撮ることが多いと考えれば,シャッター速度の範囲はZORKYのもので十分であろう。
 KIEV用のレンズは,ドイツのカール・ツァイスの優秀なレンズを模倣したもので,流通している中古品には「はずれ」な製品もあると言われているが,その本来の性能はかなり高いものとされている。ZORKY用のInduster-22レンズも,カール・ツァイスの製品を模倣したものとされているので,レンズに関しては,KIEVもZORKYも,互角であると言えようか。

さて,「原爆ドーム」の周辺では,おもにJupiter-12 35mm F2.8付きのKIE 5を使う。KIEV 5のファインダー内には50mmレンズの写野を示すブライトフレームが見えているが,このファインダー全体の視野は,ほぼ35mmレンズの写野に相当する。ブライトフレームの範囲をはみ出すくらいに主要な被写体を入れておけば,あとはトリミングでなんとでもなりそうだ。そのかわり,35mmレンズの写野いっぱいを使おうにも,どこまでが写る範囲なのか正確にはつかめない。
 「原爆の子の像」付近では,カラーネガフィルムを装填しているZORKYの方をおもに使う。捧げられている折り鶴の色を楽しみたいからである。2003年8月1日に起きたいわゆる「折り鶴放火事件」以降,ケースに収めるようにして捧げられている折り鶴であるが,それ以前は野積み状態であった。青空の下,折り鶴との色の対比がおもしろかったのだが,そういう写真を撮ることはもうできない。ちゃんと撮っておけばよかった,と悔やまれる。
 ZORKYのファインダーの視野は,50mmレンズの写野に相当する。KIEV 5のファインダーにくらべて小さく,見難い。KIEV 5ではファインダー内に二重像合致式連動距離計が見えているが,ZORKYは構図用のファインダーと二重像合致式連動距離計は別になっている。KIEVは,初期のKIEV 2やKIEV 3,その原型でもあるContax IIやContax III,さらにその元になったContax Iのころから,ファインダー内で二重像合致式連動距離計を見ることができる「一眼式ファインダー」になっていた。それに対して,ZORKYや,それが手本としたバルナックライカなどのような形式は「二眼式ファインダー」とよんで区別されている。
 ともあれ,コンパクトで使いやすい点についてはZORKYの方が好ましいが,それ以外の機能性はおおむねKIEVの方が好ましく感じられる。そんな違いをのんびりとは味わわせてやるものかとばかりに雪が舞う,平和公園のお昼前であった。

Zorky S, Industar-22 50mm F3.5, DNP CENTURIA100
Kiev 5, Jupiter-12 35mm F2.8, NEOPAN 100 ACROS

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