2007年05月12日(土) 天気:曇
高倍率ズームレンズの変遷
1982年,トキナー「35mm-200mm F3.5-F4.5」が登場したそのとき,「高倍率ズームレンズ」というカテゴリが誕生した。と,私は思う。しかし,トキナー「35mm-200mm F3.5-F4.5」(5.7倍)よりもズーム比の大きいニコン「Zoom-NIKKOR AUTO 50mm-300mm F4.5」(6.0倍)は,それよりはるか以前の1967年に登場している。
そこで今回は,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」から,実質的な「高倍率ズームレンズ」を探してみることにする。
なお,ここでの「高倍率ズームレンズ」は,「ズーム比が4倍以上」のものを指すものとする。
ズーム比4倍以上のズームレンズ (「カメラ総合カタログ」より(※1))
メーカー | レンズ | 構成 | 重さ | 価格 | 掲載年 |
コニカ | 58mm-400mm F4 | 9群14枚 | 4300g | 受注生産 | 1968 |
ニコン | 50mm-300mm F4.5 | 13群20枚 | 2270g | 120,000円 | 1968 |
ミノルタ | 100mm-500mm F8 | 10群16枚 | 2000g | 200,000円 | 1973 |
ペンタックス | 135mm-600mm F6.7 | ?群?枚 | ?g | 229,000円 | 1974 |
シグマ | 55mm-300mm F4.5 | 10群15枚 | 1800g | 92,000円 | 1974 |
フジ | 54mm-270mm F4.5 | 12群15枚 | 1460g | 120,000円 | 1974 |
タムロン | 70mm-350mm F4.5 | 13群15枚 | 2500g | 145,000円 | 1975 |
ペンタックス | 135mm-600mm F6.7 | ?群?枚 | 4070g | 255,000円 | 1976 |
ニコン | 50mm-300mm F4.5 | 11群15枚 | 2200g | 280,000円 | 1978 |
サン | 35mm-140mm F3.5 | 11群13枚 | 810g | 85,000円 | 1980 |
トキナー | 35mm-200mm F3.5-F4.5 | 13群16枚 | 690g | 88,000円 | 1982 |
ハニメックス | 75mm-300mm F5.6 | 9群13枚 | 740g | 59,800円 | 1982 |
ペンタックス | 28mm-135mm F4 | 15群17枚 | 820g | 101,000円 | 1983 |
オオサワ | 60mm-300mm F5.6 | 10群13枚 | 880g | 64,000円 | 1983 |
キヤノン | 50mm-300mm F4.5 | ?群?枚 | ?g | 295,000円 | 1983 |
コシナ | 35mm-200mm F4-F5.6 | 12群15枚 | 560g | 75,000円 | 1983 |
コシナ | 75mm-300mm F4.5-F5.6 | 10群15枚 | 690g | 75,000円 | 1983 |
コシナ | 100mm-500mm F5.6-F8 | 10群15枚 | 1350g | 135,000円 | 1983 |
コニカ | 28mm-135mm F4-F4.6 | 12群18枚 | 800g | 118,000円 | 1983 |
サン | 130mm-650mm F5.6-F7.5 | 9群15枚 | 2310g | 137,000円 | 1983 |
トキナー | 50mm-250mm F4-F5.6 | 11群14枚 | 720g | 78,000円 | 1983 |
トキナー | 50mm-200mm F3.5-F4.5 | 11群14枚 | 745g | 58,000円 | 1983 |
ニコン「Zoom-NIKKOR AUTO 50mm-300mm F4.5」は,堂々の6倍ズームレンズだ。たいへん大きく,120,000円という高価なものである。50mm-300 F4.5というズームレンズは,この後,光学系が改良されるなどして,1999年版まで「カメラ総合カタログ」に掲載(Ai Zoom-NIKKOR ED50mm-300mm F4.5S,345,000円)され続けた伝統の高倍率ズームレンズである。そしてニコンの「50mm-300mm F4.5」というズームレンズは,登場してから15年もの間,35mm一眼レフカメラ用交換レンズとして,受注生産品であるコニカ「58mm-400mm F4」(手動絞り)を除いて,もっともズーム比の大きなレンズという地位をキープしていたのである。とはいえ,このレンズは大きく重く高価であり,一般の人が標準レンズのかわりに使うためのレンズではない。たとえば舞台の取材などに使われる(全身のショットから顔のアップまで1本でまかなえることを強調する意見を聞いたことがある),特殊なレンズの1つである。
この他にも,1980年のサン「35mm-140mm F3.5」の登場までは,ズーム比4倍以上のズームレンズは,長焦点側が300mmくらい以上の「超望遠ズームレンズ」と呼ばれるようなものばかりで,その重さはのきなみ2kgを超えている。だから,トキナー「35mm-200mm F3.5-4.5」の登場までは,あえて「高倍率ズームレンズ」というカテゴリが意識されることはなかったのであろう。
また,この表を見ると,1983年には,数多くのズーム比4倍以上のズームレンズが登場していることにも気がつく。このことからも,トキナー「35mm-200mm F3.5-F4.5」はまさに高倍率ズームレンズ時代の幕開けを飾ったことが言えるだろう。そして,1983年に登場したズームレンズで注目すべきものは,28mm-135mmというほぼズーム比5倍のズームレンズである。それまでにも,28mm-85mmくらいのズームレンズが登場しているが,短焦点側が28mmのズームレンズも,ズーム比が大きくなりはじめているのである。
日本カメラショー「カメラ総合カタログ」(1983年)
※1 「カメラ総合カタログVol.32」,日本カメラショー1968年
「カメラ総合カタログVol.46」,日本カメラショー1973年
「カメラ総合カタログVol.50」,日本カメラショー1974年
「カメラ総合カタログVol.54」,日本カメラショー1975年
「カメラ総合カタログVol.57」,日本カメラショー1976年
「カメラ総合カタログVol.61」,日本カメラショー1978年
「カメラ総合カタログVol.73」,日本カメラショー1982年
「カメラ総合カタログVol.77」,日本カメラショー1983年
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