撮影日記


2007年05月19日(土) 天気:雨のち晴

西原に,謎の巨大絵皿

国道54号線をクルマで通ることが多いのだが,西原でのその道沿いに,以前からとても気になっていた物体がある。それは,この巨大な絵皿である。

国道54号線沿いに,謎の巨大絵皿がある。
MAMIYAFLEX II, SEKOR 7.5cm F3.5, E100GP

ともあれ大きな絵皿だ。これは,いったいなんだろう?

以前,再開発された段原地区に,突然,プレハブ物置が出現したことがあった。ボランティア活動などで地域を清掃するグループが,掃除道具を片付けるために設置したのだろうか?と考えるだろう。しかし,よく見ると不自然な点がある。たとえば,一部が変に組みつけてあったり,不完全な部分があったりするなど,本来の「物置」としての機能を失っているのではないか?と思われるものがあったりする。さらに不自然な点として,出現した「物置」の数が尋常ではないのである。あちらこちらに,次々に出現してくるのである。
 それを見たある人は,「これはきっと,『モノーキズム』というゲージツだ」とつぶやいたらしい(職場の先輩に聞いた)。そして,それは真実だった。これは「モノーキズム」ではなく,「プレファブリケーション・広島」というタイトルでおこなわれていた,インスタレーションと呼ばれる芸術表現活動だったのである。その背後には,当然のように,広島市現代美術館が関わっていた。ちなみに,広島市現代美術館のある比治山はサクラの名所としても知られる公園であり,そのようすは,広島市現代美術館のサイトでも紹介されている(※1)。段原は,その比治山のふもとに広がる町である。


「プレファブリケーション・広島」で設置されたプレハブ物置。(1994)
Mamiya Universal Press, Mamiya-sekor 127mm F4.7, RHP

「プレファブリケーション・広島」の光景を覚えている者としては,西原の巨大絵皿も「インスタレーション」の1つではないか?と考えてしまうのである。しかし,この絵皿が増えていく気配は見せない。
 芸術表現ではないならば,次にはこれが,なにかのお店の看板である可能性が出てくる。それではいったい,なんのお店だろうか?陶磁器の工房でもあるのだろうか,あるいは,画材の問屋さんなどがあるのだろうか。近くで見ても,この絵皿にはそのお店の名前をあらわすような文字もなければ,このお店がどこにあるのかを示す矢印のような記号も見あたらない。
 こうして,この絵皿の謎は,ますます深まっていくのである。

そんなとき,細い道の向こうに,2枚目の絵皿が見つかった。
 この界隈において,インスタレーションが展開されている可能性が高まってくる。きっと,3枚目,4枚目の絵皿もどこかに隠れているに違いない。とりあえず,2枚目の絵皿の近くへ行ってみることにした。

2枚目の絵皿は駐車場に設置されていた。
MAMIYAFLEX II, SEKOR 7.5cm F3.5, E100GP

2枚目の絵皿は,上の写真のように,駐車場に設置されていた。やはり,絵皿そのものには,文字等は記載されていない。ただ,この絵皿のある部分の駐車スペースは「原自然館」が使っているものであるようだ。つまりこの絵皿は,「原自然館」に誘導するためのものだったのだろうか?
 そもそも,「原自然館」とはなんだろう?周囲を見回すと,それはすぐにわかった。学習塾や武道の道場の看板も掲げられている建物の1階が,「原自然館」のようだ。今は無人のようだが,中には水槽がいくつも見える。定期的に管理されているのだろう。建物の裏に回りこんでみると,細長い水路があり,説明板があった。それを読んで,だいたいのようすがわかったように思う。
 この地区には,八木用水という水路があり,かつてそこは,生物が豊富な空間だったという。それがコンクリートで固められるなど整備され,「自然」に触れる機会が失われたのが現在である。これらのことを学習するために設けられた施設のようである。

それによって,絵皿に描かれているものが,かつてのこの周辺の風景をあらわすものであることがわかった。この絵皿は,「原自然館」へ誘導する看板としての役割を持つと同時に,かつての「自然」を思い出すための空間演出の役割も担わされているのかもしれない。
 さて,3枚目の絵皿も,どこかに用意されているのであろうか?


※1 http://www.hcmca.cf.city.hiroshima.jp/web/hijiyama/


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