撮影日記


2024年02月23日(金) 天気:曇

ワルツの露出計のシリアルナンバー

ワルツの露出計「Model EU」は,「ワルツ・スーパー電気露出計」(Walz SUPER EXPOSURE METER Model EU)という名称で,1951年の後半ころまでに発売されたことがわかった(2024年2月9日の日記を参照)。そこで,ほかにも入手しているワルツの露出計の同定を進めていくことにする。

この露出計は,やや角ばったデザインが特徴的である。また,目盛を広く囲うようにスクリーンで覆われていて,近代的な印象を受ける。一方で,裏面の受光部にはセレン光電池が広く収まっていて,こちらは時代相応の見た目になっている。

裏面の銘板には,「TYPE Etalon」とある。「アルス写真年鑑 1953年版」(アルス,1953年)に同型の露出計の広告があり,「…モダンなワルツ・スーパーと最新型ワルツ・エタロン」という表現がされている。この広告から,この露出計の名称は「ワルツ・エタロン」であることがわかる。また,「ワルツ・スーパー電気露出計」につぐ機種であり,1953年ころに発売されたものであると判断できる。
 「エタロン」は,薄膜を重ねた光学素子をあらわす用語である。セレン光電池を使っていることから,こういう分野の製品が使いたくなるような名詞であると考えられる。1950年代後半に露出計を発売していた「エタロン商会」とは,とくに関係はないのかもしれない。

この露出計は,「ワルツ・エタロン」と同じようにスクリーンが広く目盛を囲うようになっているが,やや丸みを帯びている。目盛板に「Walz SUPER EXPOSURE METER U」と書かれていることから,「ワルツ・スーパー電気露出計」の後継機にあたることに気がつく。また,裏面の目盛板にも同じように書かれている。

「カメラアクセサリー全書」(研光社,1955年)のに掲載された「正しい露出を期す 電気露出計」という記事に,前モデルである「ワルツ・エタロン」とともに「ワルツスーパーU型」として記載されていることから,名称が確認できる。また,ほかの書籍をたどってみると,たとえば「写真業界弐拾年の記録」(日本写真興業通信社,1954年)あたりから広告に「ワルツスーパーU露出計」という名前があらわれてくるので,発売年は1954年であると考えてよさそうである。
 前モデルの「ワルツ・スーパー電気露出計」は,ウエストンマスターを模倣したような外見であったが,「ワルツ・エタロン」や「ワルツ・スーパーU」では,ウエストンマスター風のデザインを離れていることは注目してもよいことである。

ここまでに,ワルツの露出計としては,つぎのような4機種が発売されてきたという状況が見えてきた。

時期モデルシリアルナンバー
1950年暮ワルツ露出計(T型?)
1951年夏ワルツ・スーパー電気露出計52 No.3481
1953年頃ワルツ・エタロン53 No.11242
1954年頃ワルツ・スーパーU5409 No.7519

このころのワルツの露出計のシリアルナンバーは,No.の前に2桁または4桁の数字がつけられているのが特徴的である。ところでこの2桁または4桁の数字は,製造時期をあらわしているように見える。「ワルツ・スーパー電気露出計」は「52」であるが,1951年後半以降に発売されたと思われるので,1952年製造だとするとつじつまがあう。また,この「ワルツ・エタロン」が1953年に製造されていることもつじつまがあうし,この「ワルツ・スーパーU」が1954年9月に製造されていたとしても問題ない。さらに,これらとは別に「ワルツ・スーパー電気露出計」が手元にもう1台ある。これのシリアルナンバーは「53」ではじまっており,これもこの考え方と整合している。

この時期のワルツ露出計のシリアルナンバーは,製造時期を判断したり,モデルを同定したりするのに使えそうである。安直なようだが,どんな製品もこういうシリアルナンバーのつけ方をしてくれていたら,後世の者にとってなにかと役に立つのだが。

*1 「アルス写真年鑑1953年版」(アルス,1953年) (国立国会図書館デジタルコレクション)
https://dl.ndl.go.jp/pid/2472057/1/104

*2 「カメラアクセサリー全書」(研光社,1955年) (国立国会図書館デジタルコレクション)
https://dl.ndl.go.jp/pid/2474972/1/52

*3 「写真業界弐拾年の記録」(日本写真興業通信社,1954年) (国立国会図書館デジタルコレクション)
https://dl.ndl.go.jp/pid/2486574/1/93


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