撮影日記


2023年08月24日(木) 天気:雨のち曇

吸盤オープナーがあればなんとかなる

いつもお世話になっている方からお送りいただいた大きな荷物には,何本かのレンズも含まれていた。そのなかに,ずっと以前から気になっていたレンズがあった。

AF Zoom-NIKKOR 70-210mm F4Sは,ニコンからはじめて発売された(Nikon F3AFを除く)オートフォーカス一眼レフカメラNikon F-501AFが発売されたときに,さいしょに用意されたレンズの1つである(日本カメラショー「カメラ総合カタログ」vol.85 ,1986年2月)。
 70mmないし80mmから200mmくらいの望遠ズームレンズは,古くから各社からラインアップされてきた。Nikon F-501AFが発売される直前,ニコンのレンズのラインアップには,Ai Zoom-NIKKOR 80-200mm F4Sという標準価格108,000円というレンズと,比較的廉価なNikon Lens Series E 70-210mm F4という標準価格68,000円のレンズとがあった。AF Zoom-NIKKOR 70-210mm F4Sというスペックを見たとき,まず,Nikon Lens Sereis E 70-210mm F4との関連があるのではないかと考えてしまう。
 Nikon Lens Series Eは,Nikon EMが発売されたときにラインアップされた,廉価版レンズのシリーズである。伝統の「ニッコール」を名乗っていないことや,とくに初期型の外観は安っぽいものに感じるという特徴がある。だったら性能も今ひとつなのかなと思ってしまうが,実際に使った人からはそういう悪い評価は聞こえてこない。そうすると,自分でも実際に試したくなる。Nikon Lens Series Eとして発売されたレンズのうち,Nikon Lens Sereis E 75-150mm F3.5は以前に入手できて,良好な写りをすることが確認できた。Nikon Lens Sereis E 70-210mm F4もよい写りをするという評判は耳にするが,実際に使ってたしかめたことは,まだない。
 AF Zoom-NIKKOR 70-210mm F4SとNikon Lens Sereis E 70-210mm F4は,どちらも焦点距離と開放F値が同じである。また,どちらもレンズ構成は9群13枚ということになっており,最短撮影距離は1.5mである。さらに,標準価格は69,000円でこれも近いものになっている。ここまでは共通しているが,Nikon Lens Sereis E 70-210mm F4は「直進式ズーム」になっていて,ピントリングをそのまま前後させることで焦点距離を変化させられる。それに対して,AF Zoom-NIKKOR 70-210mm F4Sは「回転式ズーム」になっている。これは,ピントリングと焦点距離を変化させるためのリングが別になっていて,リングを回転させることで焦点距離を変化させられるものである。
 AF Zoom-NIKKOR 70-210mm F4SとNikon Lens Sereis E 70-210mm F4の両方を同じ条件で使うことで,写りに顕著な違いがあるのかどうかなどたしかめてみたいところであるが,今日のところはそのうちのAF Zoom-NIKKOR 70-210mm F4Sのほうだけが入手できたのである。

さっそく試し撮りをしてみたいところだが,このたびの荷物に含まれていたAF Zoom-NIKKOR 70-210mm F4Sには,大きな問題があった。このレンズには,目立つカビが生じているのである。視野の全面を覆うようなカビではないから,そのままでの写せないことはないと思うが,さすがにこのままでは気持ちが悪い。保管しているうち,カビが成長してしまうことがあるかもしれない。だから,可能な範囲だけでもカビを掃除してしまおうと考えた。

レンズを観察すると,鏡胴にイモネジが1つ使われているのが見つかる。

レンズの前玉を抑える枠には,カニ目回しなどで回せそうな切り欠きなどがない。
 それならば鏡胴そのものがネジ込まれているのではないかと考えられるのだが,鏡胴にはそのようなつなぎ目が見あたらない。イモネジをはずしたところで,どこかが緩みそうには感じられないのである。

そこで,「吸盤オープナー」を使って,前玉を抑える枠を回して外せないか試すことにした。
 しかし,簡単には外れそうにない。固着気味になっているだけなのか,そもそもそこは,外れるようにつくられていないのか。
 はじめは緩みそうな気配すら感じられなかったのだが,なんどか力を加えているうちに,少しばかりガタガタするようになってきた。そこに少しの可能性を信じることはできるのだが,なにせ握力と腕力が足りない。力の回復を待って,翌日も動かそうとすると,ガタガタする動きが少し大きくなったような気がした。さらに翌日,ようやく前群のレンズがすっぽりと外れたのである。

カビはこの表面だけではなく,前群を構成するレンズの間にも見えている。前群にも1つのイモネジが見つかったので,それを外すと2枚のレンズに分離した。そして,カビをなんとか掃除することができたのである。


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