撮影日記


2023年08月12日(土) 天気:晴

露出計にJISマーク

JIS(Japanese Industrial Standards)は「日本産業規格」の略称で,かつては「日本工業規格」とされていた。それに適合していることを示すために,工業製品に「JISマーク」がつけられていることがある。このマークは根拠になる法律の改正にともない,2005年からあたらしい現在のデザインのものに変更されている。以前の「JISマーク」は,1949年から2004年の間に認証を受けた製品につけられていたものである。

中古カメラ店のジャンクコーナーやインターネットオークションなどの出品でよく見かける電気露出計の1つに,セコニック「オートリーダー L-38」という製品がある。受光素子および電源としてセレン光電池を使用しており,被写体に向けるだけで測光できる,反射光式の使い勝手が良い電気露出計にしあがっている。中古品としてよく見かけるということは,それだけ,たくさん売れた製品だということを示しているのだろう。
 しかし,発売されていた期間は時期は意外と短そうである。たとえば,「アサヒカメラ年鑑 1958年版」(1958年4月)に掲載されたセコニックの広告には,記載されていない。また,日本カメラ「カメラ年鑑 1958年版」(1957年12月)にも記載がない。発売されたのは,1959年ころ以降だと考えられる。1960年から発行されている日本カメラショー「カメラ総合カタログ」では1960年の版(vol.1 1960年3月,vol.3 同10月)に記載があり,1962年以降の版(vol.8 1962年2月)では「オートリーダー2」などにモデルチェンジされていて,「オートリーダー」の記載はない。日本カメラ「カメラ年鑑」では1961年版(1960年12月)に「オートリーダー」の記載があったが,1958年版,1964年版には記載がない。日本カメラ「カメラ年鑑」の1959,1960,1962,1963年版は入手しておらず,内容を確認していない。「アサヒカメラ年鑑 1961年版」(1961年3月)の広告には記載がある。発売期間は,1959年から1961年ころの2〜3年くらいであると考えられる。
 以前,友人から送ってこられた大きな荷物(2021年12月19日の日記を参照)には多数の露出計が含まれていた。それらの結果として,複数のSEKONIC AUTO-LEADER model38が集まった。同じ製品が多数ある場合は,調子のよくないものなどを整理してしまおうと考えていた。それらを並べて眺めたとき,見た目に異なる箇所があることに気がついた。

セコニック「オートリーダー(model 38)」には見たもの異なるものがある。

どれも同じSEKONIC AUTO-LEADER model38である。見た目の異なるポイントは,「SEKONIC」の文字がどこにあるか,という点である。左の2つは,指針を見る窓の下の金属部に「SEKONIC」という文字が刻まれている。それに対して右の1つは,指針を見る窓に「SEKONIC」という文字が入っている。
 では,どちらのタイプが古いのだろうか。シリアルナンバーを確認するために,裏面を観察する。

どれも同じセコニック「オートリーダー(model 38)」であることがわかる。

この3台それぞれのシリアルナンバーは「9 039253」「K9 137007」「K1 400830」となっており,規則がわかりにくく,このままでは新旧の判断が難しい。なお,スペースより前の「9」あるいは「K9」「K1」は印刷されているのに対し,そのあとの6桁は刻印されている。
 しかし,右の2つには旧「JISマーク」が入っているのに対し,左の1つにはなにもないことはすぐに気がつく。JISの認証を受けたことを示すマークは,製品の信頼度をアピールできることになるだろう。そして,認証を受けなければ表示することはできず,2004年に制度の変更があるまでは,表示しつづけられることになる。したがって,「JISマークが入っていない」ほうが,より初期のものであると考えられる。
 すると,セコニック「オートリーダー(model 38)」の「見た目」の変化は,つぎのように進んだと考えられる。そうすればシリアルナンバーの最上位の数字は,製造年の下1桁ではないかと想像でき,1959年の途中からJISマークが付加されたことが考えられる。

ロゴの位置JISマークシリアルナンバー
窓の下 金属部なし9 039253
窓の下 金属部ありK9 137007
窓の部分ありK1 400830

発売期間が短かったと思われる露出計でも,初期型や後期型などの区分ができるケースがあるのは,おもしろいことである。
 とはいえこの「見た目」の変化は,改良をともなうマイナーバージョンを区別するためのものではなく,JISの認証を受けたことを示したいだけの,やはり「見た目」だけの変更ではないかと思われる。そうはいっても,こういう違いが見つかるのはおもしろい。
 おもしろいのはいいのだが,調子がいちばんよい1台だけを残して整理してしまうつもりだったのに,少なくとも見た目の異なる3台を残さなければならなくなってしまったのは,想定外のことである。


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