撮影日記


2014年11月02日(日) 天気:曇のち雨

大井川鉄道の蒸気機関車を
「ぎょぎょっと20」で撮る

私はまだ,長野県を訪れたことがない。また,秋田県は列車に乗って通過しただけ,青森県は駅の構内を走っただけで,町に出たことがない(2009年2月25日の日記を参照)。さらに,新潟県については,駅前のコンビニに立ち寄ったことがあるだけだ(2009年3月16日の日記を参照)。
 それ以外の都道府県には,いちおうなんらかの用事があって訪れたことがある。しかし,宿泊をしたことのない県は,まだいくつか残っている。東北地方であれば,青森県,秋田県,岩手県。関東地方なら,群馬県。中部地方なら,新潟県,長野県,静岡県,岐阜県。近畿地方では滋賀県。そして,四国地方の徳島県が該当する。もちろん,夜中に列車やバスで通過したという程度のことは,「宿泊した」ものとして数えていない。「宿泊した」とみなすのは,アパートなどを借りてそこに住んだ,ホテルや旅館などに泊まった,友人や親戚の家に泊めてもらったなどが該当する。野宿やキャンプは「宿泊した」に含めるかどうかは,野宿やキャンプでしか夜を過ごしたことがないという都道府県がないから,どうするべきか考えていない。
 昨夜は,焼津市に宿泊した。はじめての,「静岡県での宿泊」である。これで,宿泊したことのない県が,青森県,秋田県,岩手県,群馬県,新潟県,長野県,岐阜県,滋賀県,徳島県の9県に減った。

今日の予定は,大井川鉄道の「SL急行かわね路13号」乗車である。昨日はあいにくの雨だったが,今朝は少し晴れ間も覗く,明るい曇りである。ただし天気予報は,午後からふたたび雨になることを伝えていたが,「かわね路13号」に乗っているあいだは,まあ大丈夫だろう。また,写真を撮るには,このくらいの天気がいちばん都合がよいかもしれない。
 大井川鉄道の新金谷駅では見学会も催されており,転車台には動態保存機のC12 164号機が乗っている。「ぎょぎょっと20」での撮影では画面周辺が大きく湾曲するが,転車台は円形だからこれが画面周辺にあってもあまり違和感を感じない。

Nikon EM, Amusument Lens Fish-eye type 20mm F8, HP5

このあと乗車予定の「かわね路13号」が入線してきた。機関車は,C56 44号機(*1)である。「ぎょぎょっと20」で撮ったため手前の線路が大きく湾曲しているが,機関車本体はあまり違和感なく写っている。

Nikon EM, Amusument Lens Fish-eye type 20mm F8, HP5

客車を牽引して発車線に入ってきたところを,柵の外から撮る。人混みのいちばん前でも「ぎょぎょっと20」なら,全体を撮ることができる。このあと,機関車は少し前に位置を変えたので,柵の外からは撮りにくくなってしまった。

Nikon EM, Amusument Lens Fish-eye type 20mm F8, HP5

そして,いよいよ乗車となる。連結されている旧型客車はすべてオレンジ色に塗られているが,これは先月まで運転されていた「きかんしゃトーマス」の牽引にあわせて塗り替えられたものだ。いわゆる旧型客車に乗車するのは,何年ぶりになるだろうか。展示用の客車の室内に入ったというものではなく,営業運転の旧型客車に乗ったのは,もしかすると1986年ごろの山陰本線だったかもしれない。そうであれば,28年前のことになる。今日の客車は,旧型客車としてはあたらしい部類に入るスハフ42形である。どうせなら,さらに古いオハフ33(*2)に乗って,板張りの床の雰囲気を楽しみたかったのだが,それは一足お先に「かわね路11号」として行ってしまっていた。そう,私は「鉄」ではない。「古いもの」が好きなのである。

Nikon EM, Amusument Lens Fish-eye type 20mm F8, HP5

「古いもの」が好きという立場から見れば,大井川鉄道はじつに楽しいところである。観光客向けのSL列車のほか,ふだんの普通列車として使われている電車が,南海のズームカー(*3)だったり,近鉄の吉野特急車(*4)だったりするのだ。とくに近鉄の吉野特急車は,近鉄南大阪線沿線で育った者としては,懐かしいの一言につきる。もっとも同形車はまだ,近鉄南大阪線で現役だから,「懐かしい」という表現には問題があるかもしれない。途中の家山駅には,京阪のテレビカー(*5)まで留置されている。ただこれは残念ながら,運用が終了したとのこと。
 「SL急行かわね路13号」は,大井川をなんども渡りながら,川に沿って走る。車窓の風景を一言でいえば,「隙あらば茶」だ。利用できる土地は無駄なく茶畑になっている,そんな印象である。
 沿線では,私鉄でもっとも短いとされる「地名トンネル」も見どころの1つだろう。このトンネルがおもしろいのは,短いことだけではない。ふつうトンネルというと山に掘られたものであるが,このトンネルはただの平地にある。もともとはその上に,荷物を運搬するためのケーブルが通っており,荷物の落下から線路を守るために作られた覆いだったそうだ。いまはそのケーブルが撤去されているため,ただの平地に意味もなく,トンネルだけが残っている状態になっている。このように,その本質的な機能を保持しながら役に立っていないもので,不動産に分類されるものは「トマソン」と呼ばれている。先日,逝去された赤瀬川原平らが発見した概念の1つである。
 そのほか,沿線ではSL列車など見慣れたものと思うのだが,手を振ってくれる人の姿もちらほらある。途中には川根温泉という入浴施設が見えるが,その露天風呂の利用者も手を振ってくれる。これらも,見ていておもしろいポイントだ。
 あとは,ところどころに,いかにも「撮り鉄」な人の姿が見えたのも,SL列車から見える風景の特徴の1つということになるだろうか。

*1 C56 44 (大井川鐵道株式会社)
http://www.oigawa-railway.co.jp/c5644.html

*2 客車 (大井川鐵道株式会社)
http://www.oigawa-railway.co.jp/k_kyakusya.html

*3 電車21000系 (大井川鐵道株式会社)
http://www.oigawa-railway.co.jp/d_nankai21001.html

*4 電車16000系 (大井川鐵道株式会社)
http://www.oigawa-railway.co.jp/d_kintetsu16000.html

*5 電車3000系 (大井川鐵道株式会社)
http://www.oigawa-railway.co.jp/d_keihan3000.html


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