撮影日記


2009年01月13日(火) 天気:曇ときどき晴

とんどをステレオカメラで撮る

「写真は引き算である」という意味のことばを耳にすることがある。これは,たとえば「主題を引きたてるために,余計なものを写さないようにする」ことをあらわしている。なるほど,それは一理ある。また,具体的な内容がイメージしやすいため,とくに初心者に対しての説明には有効なものになるだろう。
 しかし,いつもいつも「引き算」がよい結果につながるとはかぎらない。周辺の「余計なもの」が写りこんでいれば状況の説明に適した写真になる可能性があるし,「余計なもの」が主題を引きたてることもあり得る。そこまできちんと計算して「絵」をつくるのは,簡単なことではないと思われるが。
 「ステレオ写真」の場合も,「余計なもの」が写りこんでいる方が,都合のよい場合がある。主たる被写体の立体感が目立たないような場合でも,「余計なもの」が適宜配置されていれば,空間全体の立体感がわかりやすくなるのだ。もしかするとこのような場合は,主たる被写体を引きたてるのに「必要なもの」であって,決して「余計なもの」ではない,というべきかもしれない。

先日おこなわれた「とんど」(2009年1月11日の日記を参照)のようすをステレオカメラで撮ったフィルムを現像したので,以下に紹介する。

KODAK STEREO CAMERA, KODAK ANASTON LENS 35mm F3.5, 400UC

ステレオ写真の場合,「手前にあるもの」と「奥にあるもの」があれば,立体視したときに立体感がわかりやすい。それらが適当に重なっていれば,立体視する前にはよく見えなかった対象物が,まさに浮かび上がってくるので,立体視したときの驚きが倍加される。
 上の写真は,組み上げられた竹や木々が燃え落ちたときの状態である。立体視すれば,崩れた竹や木が手前に突き出していることだけでなく,煙が手前に流れてきていることも見えることと思う。また,火を透かして向こうに人が見えることに,立体写真ならでわのリアリティが感じられることだろう。「手前にあるもの」と「奥にあるもの」が重なっている,ということである。

KODAK STEREO CAMERA, KODAK ANASTON LENS 35mm F3.5, 400UC

組み上げた竹や木々が燃え落ちて一段落すると,上の写真のように持ち寄られた正月飾りなどがつぎつぎに火にくべられる。さらに,「とんどの火で焼いた餅を食べると病気にならない」という話もあるため,竹の先に餅をはさんだり,網をつるしたりしてお餅を焼きはじめる人もある。
 次の写真は,竹の先につけたお餅を焼いているところである。立体視して,竹の先にあるお餅が,いかに遠くにあるかを感じていただきたい。

KODAK STEREO CAMERA, KODAK ANASTON LENS 35mm F3.5, DNP CENTURIA400

また,奥行きのある被写体も,立体写真に向いている。
 さいごの写真は,燃え落ちて崩れそうになっている個所をなおしているときのようすである。右手前から奥に伸びていく竹の立体感を楽しんでいただきたい。

KODAK STEREO CAMERA, KODAK ANASTON LENS 35mm F3.5, 400UC

これらのようなステレオ写真を撮るときは,日中でも高感度フィルムを使い,できるだけ絞りこんでパンフォーカス気味に撮りたい。もっとも,KODAK STEREO CAMERAを使う場合は,高感度フィルムと言ったところで,ISO200ないしISO400くらいのもので十分。なにせシャッタースピードの高速側は,1/200秒までしかないのである。


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