撮影日記


2008年09月30日(火) 天気:雨

フィルムを
安く楽しめる時代の
終焉も近いのか

ディジタルカメラが普及した理由の1つに,ランニングコストの安さを指摘する人もあるようだ。たしかに,フィルム代も現像代もかからないことに魅力を感じる人は多いだろう。DPE店に足を運んで現像を依頼し,後日,できあがったプリントを受け取るためにふたたびDPE店に足を運ばなければならないという面倒から解放されることも,大きな魅力のはずだ。逆に言えば,「写真」というものは,カメラを買うとき,フィルムを買うとき,現像を依頼するとき,プリントを受け取るときのように,何度も顧客にお店まで足を運ばせることのできるビジネスだったということだ。
 ところで,フィルム代や現像代は,具体的にいくらくらいかかるものだろうか。
 フィルムは,銘柄やお店によって価格に相当な差があると思われるが,たとえばヨドバシカメラのオンラインショップの価格を参照してみよう。それによると,もっとも一般的と思われる,フジカラーの感度ISO100のネガカラーフィルム「FUJICOLOR 100」24枚撮の3本パックの価格が810円となっている。1本あたり,270円ということになる。
 現像代については,いつもお世話になっているラボの価格表を参照してみよう。まず,35mm判24枚撮りネガカラーフィルムの現像料は525円(*1)である。L判サービスサイズプリントは1枚あたり42円(*2)なので,プリントが24枚あれば,1008円となる。あわせて,1533円だ。
 フィルム代も加えれば合計1803円,24で割った約75円という値が,プリント1枚あたりのコストということになる。

ディジタルカメラで撮影すればプリント代だけで済むのだから,1枚あたり30円以上の差がつくことになる。しかも,必要なコマだけプリントすればよいのだから,効率がよい。

フィルムを使う場合も,まずはフィルムの現像だけをおこない,必要なコマだけ選んでプリントするという方法を取ることは可能である。ただその場合,フィルム代とフィルム現像料は変わらないわけだから,ディジタルカメラを使う場合ほど劇的にコストがさげられるというわけにはいかない。
 ただ,上記で紹介したラボは,価格優先のラボではない。価格だけを考えれば,もっと安く現像・プリントを提供してくれるお店はいくらでもあるだろう。たとえば,いわゆる「0円プリント」のお店がある。フィルムの現像料は700円から800円くらいで高いのだが,同時プリント(ネガフィルムの現像と同時に,全コマのサービスサイズのプリントを頼む注文方法)の場合のプリント代は0円である,というサービスだ。その種のサービスの取次店には,とくに「0」という数字が大きく書かれた「同時プリント0円」という看板が掲げられていることが多い。最近,携帯電話の広告で「無料」という表現が誤解を招くという問題が起こっていたが,これとよく似た表現といえるだろう。
 「同時プリント0円」のサービスは,たしかに安い。フィルムにめいっぱい撮影している場合は,絶対に安いといえる。その一方で,1本のフィルムに2〜3コマしか写っていないような場合(意図的にそれだけしか撮らなかったにせよ,カメラのトラブル等で写らなかったにせよ)は,かえって高くつくことになる。また,現像やプリントの品質が高くないと指摘する人もある。実際に「同時プリント0円」のサービスを利用したことは何度もあるが,プリントに問題を感じたことは数少なくない。

品質に問題を感じながらも,そのような価格最優先的なサービスを利用するのは,もちろん理由がある。それは,現像・プリントの目的が,「大切な写真をつくる」ことよりも,「カメラの動作を確認する」ことの方に重きを置いている場合である。そして,「カメラの動作を確認する」ことが目的の場合は,すべてのコマをプリントしてもらう必要はない。フィルム現像だけでも十分である。つまり,「同時プリント0円」のサービスでも,内容が過剰であり,「高い」のである。
 だから,「カメラの動作を確認する」ための現像は,ダイソーにもっていくようになった。ダイソーは,いわずと知れた「100円ショップ」である。最近は100円ではない商品も増えているが,基本は「1品100円」である。そんなダイソーは,DPEも100円だった。もちろん,「同時プリント0円」サービスを100円で提供しているわけではない。私の記憶がたしかなら,「フィルム現像100円」「プリント5枚まで100円」「同時プリントの上限は500円」という価格体系だ。
 なお,フィルム現像100円の対象は,35mm判とAPSのカラーネガフィルムだけである。

さて。
 この夏には,RB67や各種のインスタントカメラのほか,何台かの「おもちゃカメラ」も入手した(2008年7月〜8月の日記を適当に読み返していただきたい)。「おもちゃカメラ」の動作確認というか「試し撮り」をおこなったフィルムの現像は,ダイソーにもっていって100円で済ましてしまいたい。
 しかし,いつのまにか,ダイソーはDPEの取り次ぎをやめてしまったらしい。
 いつも利用しているダイソーでは,お店にはいってすぐ右側に,DPE受付カウンタがある。今では,DPE受付カウンタがあったはずの場所には,なにか荷物が積み上げられているだけになっている。

ところで,カメラの動作を確認するためであれば,フィルムも価格最優先で選びたい。
 最近は,100円前後で売られているのをよく見かける,DNPの「CENTURIA」を利用している。
 「CENTURIA」といえば,コニカのカラーネガフィルムのブランドであるが,コニカ(コニカミノルタ)がカメラ・写真事業から撤退した後は,なぜかDNPが「CENTURIA」のブランド名を使用して,カラーネガフィルムを発売しているようだ。ただ,DNPの「CENTURIA」は「Made in USA」であり,コニカの製品を継続して製造しているというよりも,コダックによってOEM供給されているのではないか,と思われるのである。

そういえば,ダイソーでは,フィルムが100円で売られていたこともあった。かつては,アグファのフィルムが「ダイソーフィルム」として売られており,その後は,コダックの感度ISO200の製品が100円で売られるようになった。ちなみに,ダイソーで100円で売られていたコダックのフィルムは,箱に「中国製」と印刷されていた。
 いつのまにか,ダイソーでフィルムが売られなくなり,いつのまにか,ダイソーでDPEの受付が終了していた。それだけ,フィルムやDPEの需要が減ったということがあるのかもしれない。さらに,重要が減ったことによって,安価に供給することが(いかに品質を下げようとも)難しくなったのかもしれない。
 フィルムやDPEについては,毎年のようになんらかの値上げやラインアップの整理がおこなわれている印象がある。フィルムやDPEサービスの供給が完全に終了するのは,まだまだ先のことと信じている。ダイソーがDPEの取り次ぎをやめたことは,DPEの品質を重視する人にはどうでもよいことであろう。しかし,フィルムを使った写真を手ごろな価格で楽しめる時代は,もうあまり長く続かないのだろうか?そんなことを示しているような気がするのである。

*1 http://www.sigma-hiroshima.com/gs/genzo.htm

*2 http://www.sigma-hiroshima.com/gs/print.htm


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