撮影日記


2008年10月02日(木) 天気:晴

マミヤ35EEメリット

天気がいいので,ずいぶん前に入手したカメラをひっぱりだした。
 マミヤ35EEメリット(Mamiya 35 EE MERIT)というカメラである。

発売は,1962年2月(*1)。このカメラの最大の特徴は,その名前が示すように,EEすなわち自動露出機構が内蔵されていることである。ピント調整はゾーンフォーカス式となっており,連動距離計は内蔵されていない。自動露出という「だれにでも確実に写る」機能を取り入れると同時に,「価格を抑える」ということも目的にしたものかと思われる。となると販売対象は,いわゆる初心者層ということになるだろう。
 このカメラを,入手後,長く使わずに放置していたのは,その特徴であるEEが動作しなかったからである。露出計に使われているセレン光電池の劣化が原因か,あるいは内部のメカニズムが粘ってしまっているのか,そのあたりを確認しようとレンズを外そうと思ったのだが,レンズを止めているネジの1つがどうしても動かない。また,よく見るとこのカメラには,B(バルブ)がない上に,ビトウィン・ザ・レンズシャッターのようである。Bがなく,シャッター羽根がレンズの途中にあるということは,レンズを開放状態に保っておくことが難しい。それはすなわち,分解後に組み立てたとき,ピントがずれていないかどうかを確認することが困難なことを意味する。
 だから,分解に挑むことは,あきらめた。

久しぶりにいじくりまわしていると,ときどき露出計の針が,ぴょんぴょん振れていることに気がついた。シャッター速度を変更すると動いたりするので,おそらくシャッター速度ダイアルに連動する接点の接触不良なのだろう。マミヤ35EEメリットのシャッター速度は,1/30,1/60,1/125,1/250の4段階である。1/125のときは,ほぼ問題ないようだが。それ以外のときは,接触不良を起こす場合が多いようだ。このあたりは,気をつけて使えばなんとかなりそうである。
 絞りリングについては,2.8〜22とAUTOのポジションがある。AUTOにすれば,シャッター速度優先EEがはたらくようになる。2.8〜22はフラッシュ撮影のときに使うものであろうが,露出計がいよいよ動かなくなれば,マニュアル露出のカメラとして使うこともできそうだ。

ファインダー内の表示は,けっこう充実している。
 まず,ファインダー内の下部には,露出計の表示が見えており,指針が絞り値(2.8〜22)を指すようになっている。ピント調整はゾーンフォーカス式だが,どこに設定しているかをファインダー内で確認できるようになっている。さらに,フィルムの終わりを示す「END」マークも表示される。このカメラのフィルムカウンタは逆算式(フィルムを進めるたびに,カウンタの数字が減っていく)になっており,フィルムカウンタが0になったときに,ファインダー中央部に「END」という文字があらわれる。このとき,ピントの位置を示す記号は,ファインダー内に表示されなくなる。

レンズは,MAMIYA-KOMINAR 40mm F2.8という,3群4枚のものが採用されている。
 マミヤのカメラには,MAMIYA-SEKOR(マミヤ・セコール)というレンズが採用されているものが多いので,MAMIYA-KOMINAR(マミヤ・コミナー)という名称は,少し違和感がある。ちなみにKOMINARというレンズの名称は,長野県の「日東光学」が1950年に開発に成功したレンズのブランドであるとのこと(*2)。日東光学は,いろいろなカメラメーカー等に対してレンズの供給をおこなっていたものと思われる。たとえば,ソ連製一眼レフカメラ「メプロゼニット」用のレンズとして,MEPRO-KOMINAR 55mm F2.8というレンズも供給していたようだ。

カメラを持って,川の土手へ行ってみる。
 カメラを構えてシャッター速度ダイアルを動かす。露出計がはたらけば,問題ないだろう。露出計が示すのは,シャッター速度1/125秒で絞りF16。露出計も,実用の範囲にあるようだ。
 カメラは金属製のボディで,最近のプラスチック製のカメラにくらべれば,たしかに重い。重いが,それほど負担になる重さではない。巻き上げやシャッターレリーズボタンの動きは軽いので,それもカメラの重さを軽く感じさせるのに貢献しているのだろう。
 今日もよく晴れており,水の流れの近くには,釣り人たちの姿もちらほら見える。突如,静かなお昼どきを引き裂く轟音は,急な雷なんかではなく,鉄橋を渡る電車の音。

おっと,お昼休みが終わる。のんびりしているわけには,いかない。

*1 http://www.mamiya.co.jp/home/camera/museum/saishu-page/1960/mamiya35-ee-merit.htm

*2 http://www.nittohkogaku.co.jp/flame/image/01kaisya/kaisya%20enkaku.html


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