撮影日記


2014年3月4日(火) 天気:晴れ

「ベスト半裁判の日」
絵馬には個人情報が満載

なにか願い事があるとき,神社で「絵馬」を奉納したことがある人は,少なくないだろう。もっとも多くの人が経験したものは,おそらく「合格祈願」ではないかと想像する。全国には菅原道真を祀った「天満宮」や「天神さま」と呼ばれる神社が多数あり,そこはとくに,学業に関する祈願をおこなう人が多い。菅原道真は梅が好きだったとされており,そのためか「天満宮」や「天神さま」は,梅の名所であることも多い。梅の開花時期も,高校や大学などの入学試験のピークも,どちらも2月から3月にかけてのことである。梅の花と,たくさんの絵馬を組みあわせた構図は,この時期の定番の1つといってもよいだろう。そして,撮られた写真は,雑誌に投稿されたりコンテストに応募されたり,あるいはWebで公開されたり,クラブの写真展で公開されたりすることも少なくない。

Baby Pearl, Hexar Ser.1 50mm F4.5, NEOPAN 100 ACROS

だが,ちょっと考えてみてほしい。絵馬には,なにが書きこまれているだろうか。
 まず,「願い事」が書かれていることは間違いない。そして「名前」,場合によっては「住所」も書かれている。これはまさに「個人情報」ではないか!「願い事」の内容は,そこが天満宮であれば「○○高校に合格しますように」「○○大学に合格しますように」のようなものが主流だろう。すると翌年には,どこに住んでいるなんという名前の人が,どこの学校に在学している可能性が高い,ということがわかる。「願い事」のなかには,「○○会社から内定がもらえますように」というものや「○○資格の試験に合格しますように」というものもある。翌年にその人は,その会社に在籍しているかもしれないし,どこの業界にいるかがわかるかもしれない。自ら,個人情報を晒しているわけだ。
 天満宮では少数派かもしれないが,友人や親戚などの名前や住所を書いたうえで,「○○という病気が治りますように」というものも見かける。この場合は,他人の個人情報,それも病歴という機微情報(あまり知られたくないと思われる情報)といわれるものを無断で晒している可能性もある。
 だから,絵馬を奉納することをやめよう!などと,無粋なことを主張するつもりは毛頭ない。そうではなく,絵馬を撮影して公開するときには,少し慎重になるべきではないか?と主張したいのだ。
 たとえばつぎの写真に写っている祈願の内容は,「世界平和」「友人と家族の健康」「オーストラリアがクリケットで勝つこと」のようで,個人名も記載されていないようだから,この絵馬ならば写真を公開してもあまり問題はないと思う。だが,この構図でも気をつける必要がある。これは絞り開放で撮影したため,1つ上にある絵馬に書かれた文字はほどよくボケて判読しにくくなっているが,P(プログラムAE)で撮影したコマではほどよく絞り込まれていて,書かれている名前が判読できていた。まあ,住所は書かれていないし,祈願の内容も肝心のところがうまく隠れているので,これも問題はないと思いたいところだが。

Nikon D70, AF-S DX Zoom-NIKKOR 18-55mm F3.5-5.6G VR

写真を撮っている人の姿は多く見かけたが,平日の昼間ということもあってか,高齢の方の姿が目立つ。写真を撮ることが主目的と思われる人が使っているカメラの多くは,ディジタル一眼レフカメラである。残りは,いわゆるミラーレスだ。写真を撮ることが主目的でないと思われる人は,スマートフォンで撮影している。すでに,コンパクトディジタルカメラを使っている人は,かなりの少数派になっているように見えた。
 今日は「ベスト半裁判の日」だったから,私はBaby Pearlを使って撮影をした。127フィルムをつくった余りの部分で110カートリッジフィルムもつくっていたので,PENTAX auto110も使用した。フィルムで撮影しているのは,私くらいのようだ…と思ったとき,ちょっと背の高いカメラで撮影している若い女性を見かけた。もしかして,と思って私は少しだけ彼女が撮影を終えるのを待っていた。そして期待したとおり,そのカメラの上から小さな紙片がするするすると出てきていた。これは,「チェキ」に違いない!周囲がディジタルカメラばかり使っているなかで,ただ1人「チェキ」を使っているその姿を見たときは,まさに神降臨を目撃したかのような気分であった。


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