撮影日記


2008年04月25日(金) 天気:晴

TC-16ASは
F-501で使うのが似合っている

ニコンの一眼レフカメラでは,「互換性」の高さを大きな特徴として認識している人が,少なくないようだ。それはとくに,レンズマウントのことを指す場合が多い。たとえばカタログでも「不変のFマウント」と称しているアレだ。たしかに,1959年の「ニコンF」以来,現在の「ニコンD3」などのディジタル一眼レフカメラに至るまで,マウントの形状は変化がない。形状に変化がないならば,どのレンズとどのボディの組み合わせであっても,とりあえず取りつけは可能だろう,と思われるかもしれないが,実際はそうでもない。レンズとボディの機械的な情報伝達機構の差異によって,取りつけが不可能な組み合わせは存在する。ましてや,情報伝達機構等の差異によっては,取りつけができたとしても,その機能が著しく制限されるケースは非常に多い。
 そこには,ミノルタやキヤノンが発売したオートフォーカス一眼レフカメラのシステムには,それ以前のシステムとのレンズの互換性がなかったこととの対比があるからこそ,ニコンの一眼レフカメラのシステムに多少なりとも互換性のあることが「高い互換性」として目立つことになっているのである。

しかしながら,実際に,ニコンの一眼レフカメラには,旧製品との互換性を意識したしくみが見られることは間違いない。たとえば,ニコンFやF2では,ファインダー部分を交換することで,露出計を内蔵しないカメラに外光式の露出計を内蔵させたり,その露出計の機能や性能をアップさせたりということに対応できるようになっていた。レンズの絞り値を伝達するしくみが変更されたときには,それ以前のレンズも使用できるように,情報伝達のピンを倒すことができるしくみをもったボディも発売された。
 1983年に発売されたオートフォーカス一眼レフカメラ「F-501」では,あたらしいオートフォーカス用のレンズだけではなく,それ以前のマニュアルフォーカス用のレンズも使えるようになっていたことは,ごく自然な成り行きのことに思われた。
 オートフォーカス一眼レフカメラ「F-501」が発売されたとき,最初から多くの交換レンズが用意されていたわけではない。また,それまでに多種多数のマニュアルフォーカス用の交換レンズを入手して,ずっと使い続ける人も数多くあった。それらのマニュアルフォーカス用レンズをオートフォーカス撮影に利用できる,AFテレコンバータ「TC-16AS」は,単に便利でおもしろいだけではなく,「互換性」を強調できるものだったといえる。たとえば,50mmのマニュアルフォーカスレンズを80mmのオートフォーカスレンズとして使えるようになるのだ。

AFテレコンバータ「TC-16AS」

「TC-16AS」は,「F-501」のあとに発売された上位モデル「F-801」でも使用できた。ところで,「TC-16AS」つきの「F-801」を三脚に据えて使用すると,少々厄介なことが起こる。「TC-16AS」はその下部の両端がふくらんで平らになっており,雲台に密着してくれるのは都合がよい。しかし,雲台にカメラを取りつけたままでは,「TC-16AS」を取りはずすことができないのだ。「TC-16AS」をベースにして,その先に取りつけるレンズを交換するだけなら問題ないのだが,「TC-16AS」をはずして別のオートフォーカス用レンズにつけ替えたいときには,カメラを雲台から取りはずさなければならない。
 ところが,「F-501」の三脚取りつけ用ネジ穴は,ボディの隅の方にある。おかげで,雲台にカメラを固定したまま,「TC-16AS」のつけはずしが可能なのだ。

F-801につけた状態(左)とF-501につけた状態(右)

「F-501」の三脚ネジ穴が端の方にあるのは,「TC-16AS」使用時の利便性を高めるためだったのだ!という可能性もありそうだが,底面に単3乾電池を4本入れるという構造上,三脚ネジ穴を端の方にしか設けられなかったと考えるのが自然かもしれない。
 ともあれ,「TC-16AS」は,主流がマニュアルフォーカスからオートフォーカスへ移行する過渡期において,とくに存在価値の高い製品だったことは間違いないだろう。これに対応するカメラボディがあまり多くなかったりすることも,それを裏づけているものと思われる。
 ともあれ,マニュアルフォーカス用レンズでオートフォーカス撮影ができる,というのは,おもしろい。「TC-16AS」に対応するボディを持っているなら,安く売られているものに出会った機会に入手しておくといろいろ楽しめるのではないだろうか。


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