2025年01月18日(土) 天気:晴れ
フジブロWP FM2 さいごの1枚
4インチ×5インチ以上の大きさのフィルムを使って撮る写真は,一般に大判写真とよばれる。大判写真としてポピュラーなフォーマットには,「シノゴ」とよばれる4インチ×5インチのものや「バイテン」とよばれる8インチ×10インチのものがある。そのほかにもいろいろなフォーマットのものが使われてきたが,現在,既製品としてフィルムが入手できるのはこの2種類くらいになっている。
現在ではほとんど使われなくなってしまったフォーマットに,6インチ×10インチのものがある。このサイズのフィルムや乾板はいまでは市販されていないので,なんらかの方法でフィルムをつくる必要がある。そのようなときに,もっともお手軽な方法といえるのは,モノクロ印画紙を利用することである。モノクロ印画紙は,フィルムにくらべると単価が安く,大きなものも入手しやすい。また,セーフライトの下で扱えるので,都合のよい大きさにカットする作業も容易である。そのかわり,感度が低い。フィルムの感度がISO 100ないしISO 400前後のものが多いのに対し,印画紙を撮影用に使うときにはISO 1.5ないしISO 3程度のものとして扱う必要がある。また,セーフライトの下で扱えることは,つまり,赤い光には著しく感度が低く,赤いものは多少の濃淡があっても,ほぼまっ黒に写ってしまうことになる。そのため,階調が目ただず全体に硬調に感じる。ただしこの特性は,すべての色に反応するパンクロマチックなモノクロフィルムではなく,青い光にしか反応しないオルソタイプあるいはレギュラータイプの写りを再現できるものと考えれば,おもしろい。
6インチ×10インチというフォーマットは,「四つ切1/2」ともよばれる。四つ切の印画紙の大きさは12インチ×10インチであり,それを半分に切った大きさになる。そういう点でも,このフォーマットで撮るときには,フィルムではなく印画紙を使うのがとても好都合となる。フィルムのかわりに撮影の原版に使うと,当然ながらネガ像が写った印画紙ができることになる。それをイメージスキャナで取りこんでコンピュータ上で反転しポジ像を得るのがお手軽であるが,ネガ像が写った印画紙とあたらしい印画紙とを重ねて光をあてる,密着焼きの方法でポジ像を得ることもできる。そういう目的のためにはバライタ紙ではなく,反りにくく,密着させやすく,そして紙の繊維が目立ちにくい,RCタイプの印画紙が好都合である。少しでも硬調でなくなるようにするために,軟調の2号印画紙を使いたい。RCタイプの2号印画紙として,富士フイルムが発売していた「フジブロWP FM2」が安定して入手しやすく,なにかと好都合であった。しかし,2018年に販売の終了がアナウンスされた(2018年4月4日の日記を参照)。そのときまでにある程度は印画紙をまとめて購入していたが,フジブロWP FM2の四つ切サイズは,いよいよ残り1枚となっていた。
今日は,よく晴れている。満を持してというわけではないが,その最後の1枚を使うことにした。半分に切って使うので,2カットを撮ることができる。竜王公園から,広島の市街地を一望してみることにした。
FUJINON SW 120mm F8, FUJIBRO WP FM2
竜王公園からの眺めは,南東に向けて開けている。中央付近に,あたらしいサッカースタジアムが見えており,遠く海のほうまで見えている。しかしよく晴れたお昼前なので,ちょうど逆光という条件になり,青い光にしか反応しないという特性もあわさって,遠方の景色はかすんだように写ってしまう。一方,手前にあるテニスコートはちょうどよく写っている。
上の画像をトリミングしたもの
ともかくこれで,買い置きしていたフジブロWP FM2を,すべて使い切ってしまった。ちょっと調べたところでは,RCタイプの号数印画紙はどこも発売していないようである。RCタイプのマルチグレード印画紙を使うことになるだろうが,つぎに使う印画紙を決めるまで,印画紙を使った6インチ×10インチ判の撮影は,ひとやすみすることになる。最後の1カットがいまひとつの内容になってしまったのは残念であるが,しかたない。
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