撮影日記


2025年01月12日(日) 天気:雨のち曇

叡福寺への道

年末の話題の1つに,NHKで放送される「紅白歌合戦」がある。年明け後にそれを話題にするとき,「今年の紅白って,なになにがよかったよね」と,ついつい表現しがちかと思う。しかし,年明け後のことなのだから,話題にしようとしているのは「去年」の放送内容である。つまり厳密には,「今年の紅白歌合戦」を話題にできるのは,午前0時になるまでのことである。とくに,放送内容の後半部分を話題にしたいのであれば,「今年の」こととして語れるのは,せいぜい30分程度しかないのである。
 例年,大阪府南河内郡太子町にある,叡福寺へ初詣をおこなっている。しかしこの年末年始は,広島市内で過ごしていたので,例年のように1月1日にお詣りすることはできなかった。この一文で書きはじめようと考えていたとき,ふと「今年の年末年始」と書きかけてしまい,あ,そうじゃない。年始は今年のことだけど,年末は去年のことよね,と気がついたのであった。

ともあれ,この3連休を利用して,少し遅いが初詣をすることにした。せっかく朝早く起きてみたのだが,地面がしっかりと濡れていて,ちらほら雨も降っている。たしかに天気予報でも,ところどころ雨になるようなことを言っていた。それでも,お昼近くになると曇り空ではあるが,たまに晴れ間も見えてきたので,午後から出かけることに決めた。

叡福寺へ行くには,近鉄電車の喜志駅または上ノ太子駅を利用できる。喜志駅には日中15分おきに,上ノ太子駅には日中30分おきに電車の便がある。距離は上ノ太子駅からのほうがすこし短い。利用できるバス路線は3系統あり,喜志駅からの@「喜志循環線」は1時間に1便程度あり,上ノ太子駅からのA「太子町内循環線」とB「上ノ太子駅町内周回線」はあわせて1時間に1便程度ある(土休日の場合)。それぞれ循環ルートになっており,時間帯によって回る向きが異なる。タイミングが悪いと,バスが遠回りになって,すこしばかり時間がかかることになる。

大阪市内から叡福寺へ行く基本的なルートは,周辺になんにもないとされている喜志駅まで近鉄電車で行き,そこから図の@のバスに乗り換えるというものである。一昨年の12月までは,金剛バスという会社が運行していたが,さまざまな事情で廃業してしまった。路線の廃止ではなく,バスの運営会社の廃業である。その後,自治体などの支援によってバス路線が維持されているが,金剛バスが運行していたころにくらべて路線が縮小したり減便になっていたりする(2024年1月1日の日記を参照)。喜志駅からのバス路線は,ほぼ1時間に1便が運行されているが,お昼の時間帯には少し運行間隔が開くなど,以前にくらべるとやや不便になっている。問題は,ちょうど出かけようとしたときには,バスのタイミングとまったくあっていないことであった。つぎにまにあうバスまでにはかなり時間があり,それでは到着が15時前になってしまう。

そこで,叡福寺から見て,喜志駅とは反対側にある上ノ太子駅から行ってみることを考えた。こちらからも少ないながらバスがあるが,残念なことにこれもタイミングがよくない。ちょうど,図のBのバスにまにあうのだが,その便は時計回りに走るために,叡福寺へ行くにはずいぶんと遠回りになる。
 ところで,上ノ太子駅から叡福寺まで最短の道のりは,2kmほどしかない。バスを30分以上も待ったり,遠回りのバスに乗ったりすることになるのであれば,歩いたほうが早いのではないだろうか。これが,雨が降っていたり,真夏の炎天下だったりしたら,30分も歩きたくはない。幸いにも雨はやんだようだし,今日は寒いくらいなので,歩くにはむしろ好都合である。実際にどれくらいの時間がかかるのかたしかめておきたいし,ぶらぶら歩きながら,昨年末に入手したSONY α7(2024年12月31日の日記を参照)での試し撮りもやっておきたい。また,上ノ太子駅に行ける電車の時刻にも,ちょうど都合がよかった。喜志駅のほうには15分おきに電車の便があるが,上ノ太子駅のほうには30分おきにしか電車の便がないので,この点は要注意なのである。

上ノ太子駅に着いたのは,13時50分である。叡福寺は,山の向こう側に位置する。途中は宅地として開発されており,歩道が広く確保されているのは歩きやすい点であるが,わりと急な坂道であり,よい運動になる。周辺にはまだ,果樹園なども残っているような場所である。時節柄,すでに太陽は低く,夕方の雰囲気すらある。雲も多いが,それでも晴れ間はあって,穂を輝かせてくれている。ライカ判のカメラでは一般的に,50mmレンズが標準レンズとされている。そして,標準レンズとして一眼レフカメラとセットした販売されたレンズは50mmレンズのほかに,やや焦点距離が長めの55mmや58mmというレンズもあった。ただ個人的には逆に,すこしだけ焦点距離の短いレンズが好みである。35mmレンズだと広角レンズの雰囲気が強くなってしまうから,40mmから45mmくらいのレンズがちょうどよい。そんなレンズで,以前から気になっていたものの1つに,コニカから発売されたHEXANON AR 40mm F1.8というものがある。40mm台のレンズにはF2.8くらいのものが多いと感じているので,このF1.8という明るさは,大きな特徴になる。
 明るいレンズだけに絞りが開放の状態で使うと被写界深度が浅く,ピントの山が見えやすい。ただ,実際に撮ってみると,描写が歯切れよく感じるのはいいのだが,背景のボケがやや煩雑に感じる。それは欠点なのかもしれないが,この明るさと焦点距離は,使いやすいと感じるものである。そして低い光線は,なんとなく絵になりやすいように思うので,レンズを向けたくなるものである。

SONY α7, HEXANON AR 40mm F1.8

このレンズのことを語るには,本来,フィルムで使うべきかもしれない。そして,もっとフィルムで撮っておきたかったものであるが,入手したのが比較的最近のことになってしまったのは残念である(2018年6月11日の日記を参照)。それでも,こういうレンズをあらためて楽しむために,ライカ判サイズの撮像素子をもつ,いわゆるミラーレスカメラのSONY α7をいまさらながら入手したのである。ソニーEマウント用のマウントアダプタは,多くの種類がいろいろなブランドから発売されていて,どれも入手しやすい。

マウントアダプタを使ってSONY α7にHEXANON AR 40mmF1.8を装着した状態。

上ノ太子駅からののぼり坂は,1.5kmくらい続く。途中ですこし気になるものを撮っていたせいもあるが,20分くらい歩いてようやく,いちばん高いあたりに到達する。そこまで到達すれば,あとはここまでののぼり坂よりも急な坂をくだるだけである。どれくらいの坂かというと,「9%」という急な勾配を示す道路標識が設置されているくらいである。その坂をくだるとすぐに「和みの広場」が広がっているのが見える。その手前に叡福寺への参道があるので,目的地にはすぐに到達する。

SONY α7, HEXANON AR 40mm F1.8

ただし今日は,そこから入らずに,さらに坂を下りきったところにある山門まで歩くことにする。そこまでにかかる時間をたしかめたかったこともあるし,そこにあるバス停で帰りのバスの時刻をたしかめられる。あとは,それにあわせてゆっくりとお詣りをすればよい。ここで,レンズをMAMIYA-SEKOR ZOOM E 28-50mm F3.5-4.5というズームレンズに交換する。このレンズは,Mamiya ZEシリーズの一眼レフカメラ用のズームレンズである。Mamiyaといえば中判カメラがとくに有名ではあるが,ライカ判サイズの一眼レフカメラも発売していたのである。ただ,日本国内でよく売れていたたようなようすは感じられない。実際にこのカメラを使っている人を見かけたことは,ごく少ないのである。このシリーズをさいごに,マミヤはライカ判のカメラを発売しなくなった。

マウントアダプタを装着したMAMIYA-SEKOR ZOOM E 28-50mm

いろいろ撮りながらゆっくり歩いてきたこともあって,上ノ太子駅から叡福寺の山門まで40分近くかかった。急いで歩けば,30分程度になるだろうか。このころには晴れ間も広がっており,舗装されて歩きやすいとはいえ,山越えの道を30分間以上も歩いてきたものだから,少しばかり暑く感じてきたものである。

SONY α7, SONY α7, MAMIYA-SEKOR ZOOM E 28-50mm F3.5-4.5

年始の初詣の時期とは違って,甘酒の接待もなく,訪れる人は少ない。供えられている鏡餅もなければ線香の数も少ないが,そのかわり不用意に人が写りこまないように気をつかうこともない。

SONY α7, SONY α7, MAMIYA-SEKOR ZOOM E 28-50mm F3.5-4.5

今日は,3本のレンズを用意した。線香が用意されている箱に,いいぐあいに日光があたってきたので,ここで3本目のレンズに交換して撮る。

SONY α7, SONY α7, Tessar T* 45mm F2.8

3本目のレンズは,京セラ(ヤシカ)から発売されたCarl Zeiss銘のTessar T* 45mm F2.8である。HEXANON ARとは異なり,明るさはF2.8で控えめであるが,ボケの部分が素直で扱いやすいレンズの1つだと思う。

マウントアダプタを装着したTessar T* 45mm F2.8

コニカも京セラも,独自のレンズマウントをもつ一眼レフカメラを発売してきた。コニカは後にミノルタと合併して,コニカミノルタとなりデジタル一眼レフカメラのシステムを発売したが,これはミノルタのαシリーズの一眼レフカメラシステムの後継モデル的なものであり,コニカのHEXANON ARレンズを活用するものではなかった。京セラもデジタル一眼レフカメラを発売したが,それまで一定の評価と人気をもっていた,いわゆる「ヤシコンマウント」のものとは異なるレンズシステムを採用した新シリーズのカメラのものであり,1機種を発売しただけでカメラ事業から撤退してしまった。つまり,用意した3本ともに,基本的にデジタル一眼レフカメラで使うことができないレンズである。SONY α7をいまさらながら入手したのは,ともかくこれらのレンズをあらためて使ってみるのが目的である。
 ひとまわりしてくると,空にはまた雲が広がって,太陽が隠されてしまっていた。そのかわり雲の背後から光が広がっており,塔をシルエット的に撮るのに都合がよさそうである。塔を見上げたい角度,光がちょうど塔を取り囲むように見える位置を決めたら,レンズをふたたびMAMIYA-SEKOR ZOOM E 28-50mm F3.5-4.5に交換する。撮る位置を決めてから写りこむ範囲を調整したいときには,やはりズームレンズが便利なのである。気軽に撮り歩くようにしていたので基本的に絞り優先AEを使っているが,雲の形がわかりやすくなるように-1.3EVの露出補正をかけている。
 単焦点レンズであれズームレンズであれ,50mmよりちょっと短いくらいのものは,なにかと使いやすいと感じるのである。

SONY α7, SONY α7, MAMIYA-SEKOR ZOOM E 28-50mm F3.5-4.5

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