撮影日記


2023年03月25日(土) 天気:晴のち曇

Medical-NIKKORで撮るチューリップ

いよいよ,秋に植えたチューリップが咲きはじめた。さいしょに開花したのは,今年もポリクロマという原種系とされる品種である(2022年3月27日の日記を参照)。草丈は低く,花茎は細い。とても華奢に感じる花である。今年はこれを,メディカルニッコールというレンズを使って撮影することにした。
 メディカルニッコールには,先に発売された200mm F5.6のモデルと,後で発売された120mm F4のモデルがある。どちらも,医療の記録用として発売されたレンズである。接写専用のレンズであり,無限遠にピントをあわせることはできない。フラッシュ撮影を前提としたレンズで,先端にリングフラッシュが内蔵されている。そのため,被写体が見えにくくなるような影が生じにくい。発光量は一定で,被写体との距離に連動して絞りが決まる,フラッシュマチックとよばれるしくみになっている。そのため,つねに適切な露光が与えられる。また,とくに等倍付近からはかなり絞り込まれた状態になるため,被写界深度も深くなる。これらは,手術箇所や口腔内の記録のために,離れた位置から等倍前後の撮影を容易におこなえる工夫である。

▲Medical-NIKKOR 120mm F4とMedical-NIKKOR C Auto 200mm F5.6

使いやすいのは,Medical-NIKKOR 120mm F4のほうである。無限遠にはピントがあわせられないが,最大撮影倍率である2倍(専用アタッチメントレンズを併用)から,最小撮影倍率である1/11倍まで,鏡胴のリングを回して連続的に撮影倍率を変更することができる(図3-19)。

▲Medical-NIKKOR 120mm F4の撮影倍率選択リングを動かすと,絞りも変わる。

被写体との距離を一定にしている場合は,つまり,リングを回すことでピントをきちんと合わせられるのである。このリングには,1倍,1/2倍など,キリのよい倍率のところで,クリック感がある。このとき,撮影倍率を写しこむスイッチをオンにしていると,画面右下に撮影倍率を写しこむことができる。クリックとクリックの間に設定して撮影することも可能であるが,そのときは撮影倍率の表示の位置がずれるために,画面内に写しこまれない(2022年7月20日の日記を参照)。

Kodak DCS pro 14n, Medical-NIKKOR 120mm F4

Medical-NIKKOR C Auto 200mm F5.6には,6種類のアタッチメントレンズが付属している。これを1枚あるいは2枚組みあわせて前面に取り付けることで,撮影倍率を変更する。最大で3倍までの撮影ができるようになっている。このレンズはピントの位置が固定されていて,ピントを調整するためのしくみが設けられていない。撮影に使う場合は,マクロスライダーなどの微動装置を併用するか,思い切って手持ちで撮影することになる(2022年7月19日の日記を参照)。

▲Medical-NIKKOR C Auto 200mm F5.6に付属するアタッチメントレンズ。

Medical-NIKKOR 120mm F4の描写は,硬質なものに感じられる。このレンズは本来,細かい部位を接写して記録することをおもな目的にしたものである。それならば,これは妥当な描写性能ということになるだろう。
 Medical-NIKKOR C Auto 200mm F5.6の描写も(Medical-NIKKOR 120mm F4ほどではないが)かなり硬質なものに感じる。そのこともあってか,撮影倍率が3倍にもなれば,雌蕊に付着した花粉の1粒1粒までも見えてくる
。  接写用とされるレンズとしては,いろいろなものが発売されている。ズームレンズなどで「マクロ機構付き」というものでは,1/2倍までの接写に対応したものもあるが,多くのレンズではせいぜい1/4倍程度である。接写時の機能や性能を高めた「マクロレンズ」とよばれるものでは,無限遠から1/2倍までの撮影に対応しているものが多いが,無限遠から等倍までの撮影ができるものもある。
 それに対してメディカルニッコールは,無限遠付近での撮影はできないものの,等倍を越える撮影ができるようになっている。このように等倍を越える撮影ができるようになっているレンズは,ほかに例が少ない。等倍越えの視野こそ,メディカルニッコールならではのものと言える。なお,ニコンでは1/2倍から等倍くらいの撮影ができるレンズを「マイクロレンズ」とよび,等倍を越える撮影に対応したレンズを「マクロレンズ」とよんでいる。メディカルニッコールは,「ほんとうのマクロレンズ」ということになる。

Kodak DCS pro 14n, Medical-NIKKOR C Auto 200mm F5.6

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