撮影日記


2022年11月08日(火) 天気:晴れ

皆既月食と天王星食

今夜は,皆既月食が見られる。皆既月食は,太陽,地球,月が,ほぼ一直線上に並ぶことで,太陽による地球の影に月がすっぽりと入ってしまうことによって,地球から見ると満月が少しずつ見えなくなり,やがて完全に見えなくなる現象をさす。多くの場合はわずかに完全な一直線上からずれるために,満月のときにはかならず月食が起こるというわけではない。とはいえ皆既月食そのものはさほど珍しい現象ではなく,日本でもおおむね2年に1回くらいは見ることができる。ただし,眺めるのに都合のよい時間帯に起こるとはかぎらないし,ましてやその夜がきれいに晴れるとはかぎらない。
 そうしてみると,今夜は条件がよい。月食のはじまり(月が地球の影に入って,欠けて見えはじめるようになるとき)こそ18時09分ということでやや早いが,皆既(月が完全に地球の影に入ってしまう)状態のはじまりは19時16分で,それが20時42分まで続く。眺めやすい時間帯に,皆既状態が長く続くのである。しかも,天気は晴れだ。
 さらに今夜の皆既月食には,特別なことがある。それは,皆既状態になっているあいだに,暗くなった月が,天王星を隠す「天王星食」も見られることである。天王星は,土星のさらに外側を回っている惑星である。木星や土星は明るく見えるのでわかりやすいが,天王星は約6等級(空がじゅうぶんに暗いところで,肉眼でようやく見える程度)の暗い星にしか見えない。小型のものでも望遠鏡を使えば見える明るさだが,たくさんある暗い星のなかで天王星を見つけられる自信はない。ところが今夜は,皆既中の月が天王星を見つける目印になるのである(2014年10月8日の日記を参照)。ふだん,見つけにくい天王星も,皆既中の月によって見つけやすくなるのである。しかも,月に隠される星が天王星ということで,間違える心配もない。
 ふつうの満月のときに天王星食が起こるのであれば,月が明るすぎて天王星を見つけにくいだろうが,皆既中だから月の明るさが問題にならないことが期待できるのである。
 また,明暗差が少ないので,写すことも難しくない。

わたしにとっては1000mmレンズなんて,こんなときにしか出番がないのである。このSIGMA MIRROR-TELEPHOTO 1000mm F13.5は,ヤシカ/コンタックスマウントのものだが,マウントアダプタを確保しているのでSONY αNEX-C3でも使える。F13.5というレンズをつけたとき,光学ファインダーの視野は絶望的に暗く,速いシャッター速度を使いにくいものである。しかし,いわゆるミラーレスのデジタルカメラで使うのだから,ISO感度の設定をそこそこ高くできるし,被写体は発光体である。液晶モニタの拡大表示機能を利用すれば,じゅうぶんにピントや構図を確認できるのである。

SONY αNEX-C3, SIGMA MIRROR-TELEPHOTO 1000mm F13.5 / at ISO12800, 1/4sec
上の画像(元データ)から1200pixel×800pixelの範囲をクロップしたもの。

SONY αNEX-C3は,シャッターレリーズボタンを押してから実際に露光されるまでのタイムラグが,少々気になるレベルである。そこで,FUJIFILM X-T10とReflex-NIKKOR 500mm F8との組みあわせも使うことにした。FUJIFILM X-T10は,ケーブルレリーズが使えることが好都合である。

1000mmレンズではなく500mmレンズであっても,わたしにとってはこういうときくらいしか出番がない。これは,天王星が皆既中の月に隠される直前くらい(20時25分ごろ)をねらったものである。

FUJIFILM X-T10, Reflex-NIKKOR 500mm F8 / at ISO6400, 1/4sec
上の画像(元データ)から1800pixel×1200pixelの範囲をクロップしたもの。
上の画像(元データ)から600pixel×400pixelの範囲をクロップしたもの。

カメラとレンズを固定してレリーズするというごく簡単な方法であるが,天王星食は写ってくれた。ISO感度を高く設定でき,液晶モニタを拡大表示できるいわゆるミラーレスのデジタルカメラの特徴が利用できたわけである。
 月に隠された天王星は,このあと(21時20分ごろに)月の後ろから出てくることになる。しかしそのときには,月の皆既状態は終わっていて,天王星にくらべてものすごく明るくなっている。だから出現時には撮影をせず,望遠鏡で眺めることに徹することにした。
 月がほかの星を隠す現象としては,2016年にアルデバランという明るい星を隠す現象があった(2016年11月16日の日記を参照)。今回は「皆既月食中に惑星を隠す」ということで,かなり珍しい現象となる。しかも,ふだん,自分の目で確認することが難しい天王星を容易に見つけて眺めることができるということでも,とても貴重な体験となったのである。


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