撮影日記


2022年09月29日(木) 天気:晴れ

空中写真で奥原写真機製作所をさがす

航空機などから地表のようすを撮影した写真は,空中写真(あるいは航空写真)とよばれている。このような写真は,地図の作成に利用されたり,そこから得られる情報は軍事行動に利用されたりしてきた。日本国内の空中写真は,国土地理院のWebサイト「地図・空中写真閲覧サービス」(*1)で閲覧することができるようになっている。1974年以後はカラー写真で撮影されており,細かいところも識別しやすくなっている。
 空中写真は,まっすぐに移動する航空機から,一定の間隔で撮影される。隣りあう範囲の写真とは,写しこまれる範囲がかなり重なるようになっている。そのため,隣りあう範囲の写真を並べると,立体視(実態視)することができる。このとき,高さが大幅に誇張されて見えるため,わずかな高低差でも判別しやすく,地形の特徴を読み取りやすくなる。
 空中写真の立体視を利用して,奥原写真機製作所の工場を確認することにした。高さが誇張されるので,建物の高さの違いが識別できるようになる。

「奥原写真機製作所」の工場があった位置を含む空中写真で立体視に使えそうなものは,1948年,1964年,1967年,1971年のモノクロ写真(1948年のものはアメリカ軍による撮影),1975年,1979年,1985年,2007年,2017年,2022年のカラー写真などがある。住宅地図を参照した結果からは,1977年には奥原写真機製作所の工場がなくなっていることがわかっている(2022年9月24日の日記を参照)。そこで,工場がまだ存在していた可能性が高く細かいところも識別しやすい1975年に撮影されたカラー写真を,まずは閲覧することにした。
 「地図・空中写真閲覧サービス」では,2つの空中写真を並べて表示する機能が用意されている。これを利用すると,パーソナルコンピュータのディスプレイ画面で立体視ができるので便利である。

▲ 国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より
撮影年月日:1975年1月26日 整理番号:CKK748 コース番号:C23
写真番号:15(左)および16(右)を立体視のために拡大し,並べたもの

1975年に撮影された空中写真を立体視をすることで,「奥原写真機製作所」の一帯には,似たような大きさの低層の住宅が整然と並んでいることがわかる。当時の住宅地図と照合すると,ここに写っている黒っぽい建物が,「奥原写真機製作所」の工場(住宅地図に「奥原写真工場」と記されている建物)であると考えられる。

▲ 国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より
撮影年月日:1975年1月26日 整理番号:CKK748 コース番号:C23 写真番号:16の一部分

ところが,1979年に撮影された空中写真では,「奥原写真機製作所」の工場と思われる黒っぽい建物がなくなっている。隣りあう範囲の空中写真とならべて立体視すると,以前のものよりも高い建物に建て替えられたらしいことがわかる。

▲ 国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より
撮影年月日:1979年9月11日 整理番号:CKK792 コース番号:C18 写真番号:15の一部分

1975年に撮影された空中写真に写っていた「奥原写真機製作所」の工場らしき建物が,1979年に撮影された空中写真には写っていないことは,1977年の住宅地図に「奥原写真工場」が記載されていないことと整合している。同時に,1975年の1月にはまだ,工場の建物が残っていたということでもある。

*1 「地図・空中写真閲覧サービス」 (国土地理院)
https://mapps.gsi.go.jp/maplibSearch.do#1
 
(このサービスでダウンロード可能な空中写真は,出典の明示をすることで利用可能ということになっている。 https://mapps.gsi.go.jp/article2.html)


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