撮影日記


2022年08月07日(日) 天気:晴

1本で2度おいしい 旧型メディカルニッコール

旧型メディカルニッコール(200mm F5.6)の電源ケーブルをつくったので,内蔵フラッシュが使えるようになった(2022年7月28日の日記を参照)。咲いているアサガオで,試し撮りをおこなうことにした。
 カメラは,ライカ判のKodak DCS Pro 14nを使う。撮影倍率は2倍として,内蔵フラッシュを使った場合と使わない場合とを,撮りくらべることにした。

 まずは,内蔵フラッシュを使った場合である。
 内蔵フラッシュの発光量は一定なので,絞りを使って露出を調整することになる。レンズには,3つのリングがある。いちばん先端側のリングは,画面内に写しこむ数値を選択するためのものである。写しこむ数値は,専用アタッチメントレンズの組み合わせで実現できる各倍率(1/6x,1/4x,1/3x,1/2x,2/3x,1x,1.5x,2x,3x)を示す数値,または,1〜38の任意の数値を選択できる。もちろん,なにも数値を写しこまないことを選択することもできる。
 2番めのリングは,フィルムの感度を設定するものである。これで感度をあわせてから,いちばん手前側になる3番めのリングで撮影倍率にあわせると,適切な絞りが選択される。

Kodak DCS Pro 14n, Medical-NIKKOR C Auto 200mm F5.6 (at 2x, ISO 100)

撮影倍率は,被写体との距離によって決まるわけで,距離に応じて絞りが決まるいわゆるフラッシュマチックになっている。フラッシュのガイドナンバーなどをもとに絞り値を計算する必要もなく,適切な露出が得られる。また,反射光式の自動調光ではなく,発光量は一定なので,被写体の色や反射率などに露出が左右されることもない。じつに簡単に,適正な露出が得られるのである。
 そして,肉眼ではなかなかわかりにくい,アサガオの雌蕊の細かいようすを眺めることができるのである。至近距離でフラッシュを発光させることになるので,F32くらいまで絞りこむことになり,それだけ被写界深度も深くなり,しっかりとピントがあった写真を撮影できる。

Kodak DCS Pro 14n, Medical-NIKKOR C Auto 200mm F5.6 (at 2x, ISO 100)

このように影のできないフラッシュ撮影にはまさにうってつけの機構であるが,たとえば花を撮るときには,逆光気味にして花びらを透過光で撮りたくなるものである。また,アサガオのような花では,奥までフラッシュ光を均一にあてることができない。そこで,シャッター速度を遅くして,いわゆるスローシンクロのような状態にして撮ってみた。このようにすることで,フラッシュ光の届かない花の奥も含めて,全体に明るくすることができ,同じ構図でもずっと雰囲気が違ってくる。
 ここでは風があって花が静止せず,被写体ブレをおこしているが,フラッシュ光によって雌蕊にはピントの中心が残っているように見える。これらのことが,たまたまほどよい塩梅になったようである。

Kodak DCS Pro 14n, Medical-NIKKOR C Auto 200mm F5.6 (at 2x, ISO 100)

旧型メディカルニッコールは先端にアタッチメントレンズを取りつけることで撮影倍率を決めるようになっており,それは絞りの選択とは連動していない。絞りは,いちばん手前のリングを使って,手動で選択することになる。そのため,内蔵フラッシュを使わずに,任意の絞りを使って撮影することも可能である。内蔵フラッシュを使い絞り込んで撮影すれば,細かいところまでシャープに写るメディカルニッコール本来の描写を楽しめるが,内蔵フラッシュを使わずに開放で撮影すれば,とろけるような滑らかなボケ具合を楽しむこともできる。

Kodak DCS Pro 14n, Medical-NIKKOR C Auto 200mm F5.6 (at 2x, ISO 100)

旧型メディカルニッコールは,シャープな高解像度な描写と,滑らかなボケ具合とを楽しめる,1本で2度おいしいレンズなのである。
 もしも,メディカルニッコールの新型と旧型,どちらを買おうか迷ったときは,旧型のほうを選んでみるのはどうだろうか。
 旧型メディカルニッコールなら,絞り込んで内蔵フラッシュを使った撮影,絞り込んでシャッター速度を遅くしたうえに内蔵フラッシュも使ったスローシンクロ撮影,絞りを開放にして内蔵フラッシュを使わない撮影といった3通りの撮影が楽しめるうえに,撮影倍率は3倍まで対応している。
 ただし,専用アタッチメントレンズと電源ユニット,接続ケーブル一式がきちんとそろっているセットで入手したいものである。


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