撮影日記

2022年06月19日(日)　天気：晴

「関式サロン露出計」（丸型）の特許・実用新案を調べる

6月14日に，中国地方は梅雨入りしたとみられる，という発表があった。これは，昨年の梅雨入りにくらべて，１箇月以上も遅いものである。しかし，今年の梅雨入りが特異なのではない。平年（6月6日ころ）よりも3週間以上も早かった，昨年の梅雨入りがあまりにも特異だっただけである。

第二次世界大戦後，角型になってからの「関式サロン露出計」のモデル名の変更は，特許あるいは実用新案の登録に関連しているようすがうかがえる（2022年2月24日の日記を参照）。また，戦前，丸型の「関式サロン露出計」の広告にも，「新案特許願」あるいは「新案特許」という文字が見られる。これらの特許あるいは実用新案の具体的な内容は，どのようなものだろうか。
　特許や実用新案の内容は，「特許情報プラットフォーム J-PlatPat（独立行政法人 工業所有権情報・研修館）」(*1)で参照することができるようになっているので，「関式サロン露出計」を作成した「関実（せき・みのる）」氏の名前で出願されたものをさがしてみる。「特許・実用新案検索」で，検索項目に「出願人/権利者/著者所属」を選び，キーワードに「関実」を入力して検索を実行すると，「出願人/権利者」が「関　実」（および「セキ　ミノル」）の出願が21件あることがわかる。実際には，「株式会社小関実業」のようなものもヒットするので，「CSV出力」をしてExcelのフィルタ機能などを利用して見やすくするとよい。
　そうして見つかった出願のうち，文献番号「実全昭56-110420」発明の名称「写真用露出計算尺」（公知日1981年8月26日）に添えられている図を見れば，「関式サロン露出計」の後継品といえる「セノガイド」の工夫に関する資料であることがわかる。「セノガイド」の発売は，1980年代にはいってもモデルチェンジされながら続いていたことと整合しそうである。そのほか，「セノック」ブランドの写真用品の工夫につながりそうな内容の出願も見られる。
　しかし，これで見つかる特許や実用新案に関する出願資料は，おおむね1980年くらいまでである。それより以前の出願資料を，「出願人/権利者」で検索することはできないらしい。そのような場合には，「FI検索」というものを使えばよいと教えていただいた。「露出計(計算尺)のFIはG03B7/00なので」(*2)とのことである。「特許・実用新案検索」で検索項目に「FI」を選び，キーワードに「G03B7/00」を入力する。
　そのまま検索を実行するととんでもない量の資料が該当して結果が表示されないので，「検索オプション」の日付指定で「公告日」を「19370101」から「19451231」にする。「関式サロン露出計」初期型の発売は1938年11月ころだから，1937年から1945年までの範囲を検索すれば，戦前の「関式サロン露出計」に関する出願が見つかると期待できる。そうすることによって，48件の出願にヒットした。あとは，これを１つずつ開いて確認するしかない。その結果，関係しそうな「実用新案出願公告」として，つぎの３つの資料を確認することができた。

昭和十四年　實用新案出願公告　第四二六七號　寫眞用露出計算尺
　　出願　昭和十二年四月二十七日
　　公告　昭和十四年三月二十五日

昭和十五年　實用新案出願公告　第一三七四九號　寫眞用露出計算尺
　　出願　昭和十三年十月十五日
　　公告　昭和十五年九月二十日

昭和十五年　實用新案出願公告　第一三七五〇號　寫眞用露出計算尺
　　出願　昭和十三年十月十五日
　　公告　昭和十五年九月二十日

1939（昭和14）年3月25日付の実用新案出願公告4267号（実願昭12-013964，実公昭14-004267）は，とにかく読みなれない文体なのでなかなか内容がのみこめないのだが，おそらくこの露出計の基本になる構造「複数の回転盤とカーソルが同軸上にあるという構造」に対するもの，というものだと読めそうである。この出願が1937年4月27日で，出願公告が1939年3月である。雑誌の広告で「新案特許願」になっていたのは，1938年11月号から1939年8月号までの範囲なので，次期としては整合している。ただ，出願公告から，雑誌の広告の記載の変更に反映されるまでのタイムラグについては，よくわからない。

1940（昭和15）年9月20日付けの実用新案出願公告13749号（実願昭13-028132，実公昭15-013749）は，「関式サロン露出計」のあたらしい工夫のようであるが，回転盤の止めネジに関するものであり，後の製品に反映されることはなかったように見える。実用新案出願公告13750号（実願昭13-028133，実公昭15-013750）は，直線状（計算尺）状の製品についてのもので，これも後の製品にはつながっていないものと思われる。

＊１　「特許情報プラットフォーム J-PlatPat」（独立行政法人 工業所有権情報・研修館）
→https://www.j-platpat.inpit.go.jp/

＊２　twitter上の発言
→https://twitter.com/dinosauria123/status/1496714201695358977