撮影日記


2022年05月30日(月) 天気:小雨

古いSIGMAのレンズをデジタルのEOSで使いたい

たまたま安価に売られていたので,SIGMA AF 50mm F2.8 MACROの初期型を入手していた(2019年5月19日の日記を参照)。よく知られているように,古いSIGMAのレンズは,あたらしいCanon EOSのカメラでは正常に動作しない場合がある。このレンズは,1990年ころに発売された古いもので,もその現象にあてはまるもので,2003年に発売されたCanon EOS 10Dでは正常に動作しない。具体的には,絞りを開放以外に設定してレリーズすると,エラーになるのである。開放専用レンズとしてならば,いちおう使うことはできる。
 では,どれくらい古いEOSであれば,使えるのだろうか。たぶん,EOS・DCSシリーズ(1995年)やKodak DCS 520/560(Canon EOS D2000/D6000,1998年)ならば,動くだろうと想像できる。なぜならばそれらの機種のカメラ部分は,1994年に発売されたCanon EOS-1Nを利用したものだからだ。ただ,これらを入手できる機会は少なく,価格もそれなりに高くなりがちである。
 それらの機種とCanon EOS 10D(2003年)の間に発売された機種では,動くのだろうか。2000年に発売されたCanon EOS D30を安価に入手できたので,動作を確認してみた。

絞りを開放にした状態では,Canon EOS 10Dと同じように,正常に撮影ができた。
 つぎに,絞り込んだ状態でシャッターをレリーズしたところ,エラーも起こらずスムースに動作をする。

しかし,撮影した結果は,著しい露出オーバーとなっている。動作するときにエラーこそ起こらないものの,絞りは動作していないのであった。残念ながら,この時代のカメラにも,このレンズは対応できないようである。
 なお,Canon EOS D30とよく似た名称のカメラとして,Canon EOS 30Dという機種が,2006年に発売されている。Canon EOS 30Dは800万画素級の撮像素子を使ったデジタル一眼レフカメラであるのに対し,Canon EOS D30の撮像素子は300万画素級のものである。ようやくデジタル一眼レフカメラの価格が,趣味のために使いたい人にも手が届くようになりはじめた時代の機種である。

デジタルカメラが発売され,広く使われるようになった2000年代はじめころは,モデルチェンジのたびにすこしずつ撮像素子の画素数が増えていくようすが見られた。当時から,「画素数が多ければよいというものではない」ということが雑誌の記事などで語られることはあったが,画素数は性能の違いがいちばんわかりやすい数値でもあるから,どうしても画素数競争のような現象に見えてしまうものである。
 さて,実際には何画素くらいあればじゅうぶんなのだろうか。画素数が多ければ多いほど,細かいところまで写ることになるのだが,基本的には多ければ多いほどよい。ただ,画素数が多くなると1つ1つの画像データも大きなものになって,処理や転送,保存などが少しやっかいなことになりかねない。また,いたずらに画素数だけが多くなっても,ピント調整や露出の精度,レンズの性能などがついていけなければ,不十分ということにもなる。
 必要な画素数というものは,出力する用途にあわせればよい,と考えることができる。たとえば,写真出力や印刷物としての出力にじゅうぶんな解像度である300ppi(1インチあたり300ピクセル)で,一般的な写真の大きさであるL判の用紙(89mm×127mm)に出力する場合に必要な画素数は,つぎのようになる(1インチ=25.4mm)。

長辺の画素数:127÷25.4×300=1500(ピクセル)
 短辺の画素数: 89÷25.4×300≒1051(ピクセル)
 1500×1051=1576500 → 約150万画素

プリンタでよく使われるA4判(210mm×297mm)の場合は同じように計算して約870万画素となり,写真の大伸ばしで一般的な四切サイズ(254mm×305mm)の場合は同じように計算して約1080万画素となる。出力の解像度を200ppi(ふつうの用途であれば,これでもじゅうぶんである)にすれば,四切サイズでも約480万画素ですむ。つまり,600万画素もあれば実用上はほぼ問題なく,少し余裕をもたせてその2倍の1200万画素もあれば,困ることはほとんどないと考えることができる。デジタルカメラが出回りはじめたころに,「フィルムと同等の画質を得るには,600万画素は必要」という表現を聞くことが多かったが,それだけあれば一般的な四切サイズの出力まで対応できるということをあらわしていたのだろう。

1994年に発売されたKodak DCS 460は,世界で初めて600万画素の撮像素子を使った一体型のデジタルカメラであった。価格は349万円で,一般の人が趣味のために買えるようなものではなかった。600万画素の撮像素子を使ったデジタル一眼レフカメラが,趣味のために使いたい一般のユーザにとってずっと現実的な価格になったのは,2002年に発売されたNikon D100(30万円)やCanon EOS D60(35万円)あたりからのことである。
 それまでは,比較的低価格なデジタル一眼レフカメラとして,600万画素よりもずっと画素数の少ないモデルもいろいろとラインアップされていた。また,価格を抑えることではなく,報道目的などで連写性能を高めるためにあえて画素数を抑えていたと考えられるモデルもあった。出力する目的が,せいぜいカビネサイズくらいまでであれば,300万画素のCanon EOS D30でもじゅうぶんに仕事ができるのである。


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