撮影日記


2021年10月21日(水) 天気:曇

関式サロン露出計 角型は何種類あるのか

「関式サロン露出計」を,つづいてもう1種類,入手した。戦前からの丸型ではなく,角型のものである。ただ,昨日のものとは違って,サマータイムに対応する表記がない。そのためこれは,日本でサマータイムの制度が廃止になった1952年以降に発売されたものであると考えられる。
 表記なども,いろいろと変更されている。たとえば表面で目立つものとしては,フィルムの感光度表記に違いがある。サマータイム対応版では「DINとASA」であるのに対し,サマータイム後の版では「ASAとWESTON」である。また,サマータイム対応版にはなかったものとして,閃光電球に関するものと思われる「ミリセコンド」の目盛が,サマータイム非対応版には設けられている。

角型の「関式サロン露出計」 左:サマータイム対応版 右:サマータイム非対応版
右には,「まる閃」につづいて,7〜80の「ミリセコンド」の目盛がある。

この角型のサマータイム非対応版は,サマータイム対応版よりも後のモデルであると考えられる。なぜならば,日本でのサマータイム実施期間より前の「関式サロン露出計」は,「アサヒカメラ」1949年10月号の広告にあるような,戦前からの丸型のはずだからである。日本でのサマータイム実施期間は1952年4月11日までなので,このサマータイム非対応版は,1952年よりあとの発売と考えらえる。
 手元にある「アサヒカメラ」では,1949年10月号のつぎは,1954年8月号がある。ここにも「関式サロン露出計」の広告があり,「最新型VA型新発売」となっていた。

「アサヒカメラ」1954年8月号の広告とサマータイム非対応版を並べた。

広告の写真は画像が粗く,細かい文字が読み取れないため,入手したサマータイム非対応版と同一のモデルかどうかの照合ができない。右端の「感光度」の雰囲気が似ているとはいえ,確証には至らない。
 ここで新発売となっている,関式サロン露出計VA型の特徴として,
 「殊にシンクロ撮影の場合,即座に露出が判る独自の新考案が施された」
とある。もしこの「新考案」が,「ミリセコンド」の目盛のことであるならば,入手したサマータイム非対応版は,1954年8月ごろに新発売となったVA型ということになる。

さらに,インターネットオークションで検索してみると,入手したサマータイム非対応版とは表記の異なる,サマータイム非対応版が存在するのを見つけた。表記の違いとしては,表面の「感光度」の表記と,「閃 ミリセコンド」目盛の有無である。ここまでで,角型の「関式サロン露出計」には,少なくとも3種類があるらしいことがわかった。これらの相違点をまとめると,次のようになる。

角型「関式サロン露出計」の分類
種類サマータイム感光度表記閃 目盛備考
対応DINとASAなし入手 1950〜1952年ごろの発売?
非対応ASAとDINなし非入手 インターネットオークションサイトで目撃
非対応ASAとWESTONあり入手 1954年8月発売のVA型?

ここで,入手したサマータイム非対応版のほうがあとのモデルであると考えたのは,わざわざ設けた「閃 ミリセコンド」の目盛を廃止するとは考えにくいことと,感光度表記でDINを使うのをやめてWESTONに切りかえたのを,わざわざ戻すことは考えにくいためである。また,発売時期も含めて,ここにまとめた内容は,あくまでも現時点での仮説である。1950年から1953年にかけての広告などが参照できれば,このあたりの関係も少しは明らかになるかもしれない。


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