撮影日記


2021年09月17日(金) 天気:雨

6×4.5判と6×6判のコレレ

6×6判のフォールディング型コレレ

「コレレ」というカメラをいただいた。120フィルムを使う,ドイツ製のフォールディングカメラである。読みにくいが,貼り革に「Korelle」という文字が刻まれている。
 「コレレ」というと,日本では「レフコレ」とよばれるReflex-Korelleばかりが話題になるように感じる。Reflex-Korelleは,1935年以降に発売された6×6判の一眼レフカメラである。フォールディングタイプのKorelleは,同じメーカーから発売されたカメラで,Reflex-Korelleよりも前の製品である。1931年に127フィルムを使うタイプのものが発売され,1933年に120フィルムを使うタイプのものが発売された。

6×4.5判のコレレと6×6判のコレレ たたんだ状態では見分けがつかない。

120フィルムを使うフォールディングカメラであるタイプのKorelleは,ずっと以前に,家の大掃除をしたときに見つけ出したことがある(1997年12月31日の日記を参照)。そのKorelleは,6×4.5判のものであるが,このたびいただいたKorelleは6×6判のものだ。どちらも,1933年に発売されたものとのことで,外見はよく似ている。たたんだ状態では,見分けがつかない。

6×4.5判のコレレと6×6判のコレレ 蛇腹を伸ばしても同じような姿である。

蛇腹を伸ばした状態でも,基本的な外見は同じである。4本の支柱が伸びてレンズボードを支えるところや,カメラに向かって右側に開く蓋などは,同じしくみになっている。これらの点は,このカメラの姿を特徴づける要素でもある。

6×4.5判コレレの背面 フィルム送り確認用の赤窓が2つある。

大きく異なるのは,カメラの後ろ側である。
 6×4.5判のものは,120フィルムの裏紙に記された番号を読み取る窓が,2つある。ロールフィルムを使うカメラでは,撮影したらフィルムを1コマ分,送るための巻き上げ操作が必要である。最近のカメラでは,巻き上げが電動化されていて,自動的に次のコマにフィルムが送られるものが一般的である。少し前のカメラでは,レバーやノブなどを使って巻き上げるが,それらが動かなくなるところまで巻き上げると,ちょうど1コマ分のフィルムが送られることになる。そのようなしくみをもつカメラは,自動巻き止め式(自動巻き「上げ」ではない)とよばれることもある。
 それに対してこのKorelleには,自動巻き止めの機能はない。フィルムを巻き上げるときには,120フィルムの裏紙に記された番号を見て,ちょうどよいところで止めなければならない。このようなカメラは,自動巻き止め式に対して,赤窓式とよばれる。赤窓式は,基本的に故障する箇所がない。ある意味,とても丈夫である,ということになる。ただし,赤窓を通して番号が見えないような暗いところでは,巻き上げができない。たとえば夜景などの撮影には,少々不利である。

120フィルムの裏紙の例

赤窓式のカメラでは,フィルムを装填したらまず,赤窓に「1」が表示されるようにフィルムを送る。撮影したら,赤窓に「2」が表示されるところまでフィルムを送るようにして使う。このように,番号を見ながら1コマ分ずつ,フィルムを巻き上げていくのが,基本的な使い方である。
 しかし,120フィルムを使うカメラの画面サイズには,6×9判,6×6判,6×4.5判などさまざまなものがある。現在の120フィルムの裏紙には,6×9判用,6×6判用,6×4.5判用それぞれの番号が印刷されている。しかし,発売当初の120フィルムには,6×9判用の番号しか印刷されていないものがあったようで,6×6判や6×4.5判用のカメラには,このように複数の赤窓が設けられているものがあった。
 Korelleの時代にはまだ,6×4.5判用の番号が裏紙に印刷されていないものがあったのだろう。6×4.5判のコレレの場合,1コマ目を撮影するときは,まず右側の赤窓に「1」を表示させる。これは本来,6×9判用の番号である。撮影したら,左側の赤窓に「1」が表示されるように,フィルムを送る。つぎは,右側の赤窓に「2」が表示されるようにフィルムを送る。このように,6×9判用の番号を2回ずつ表示させることで,6×4.5判としてフィルムを送るようになっている。ともかく,赤窓の番号を見ることで,フィルムをきちんと送ることができ,いまフィルムのどこまで撮影が済んでいるかもわかるというものである。

6×6判コレレの背面 目盛のある大きな窓がある。。

ところが,6×6判のコレレの背面は,様相が大きく異なっている。
 まず,赤窓が隅のほうに1つだけある。そして,1から12までの目盛が記された窓がある。

6×6判コレレ 裏蓋の裏側 ローラーのある部品が取りつけられている。

裏蓋を開けてみると,6×4.5判のコレレにはなかった,ローラーのついた部品がある。このローラーを動かすと,1から12までの目盛が記された窓の中にある指針が動く。つまりこれは,フィルムカウンタなのである。具体的には,まず赤窓に「1」を表示させる。そして,フィルムカウンタの指針を「1」にあわせておく。撮影したら,フィルムカウンタの指針が「2」になるまでフィルムを送ればよいのである。1コマ分を巻き上げたら自動的にそれ以上は巻き上げられなくなる,自動巻き止めの機能にはなっていないが,これはずいぶんと凝った機構である。ただ,ローラーの摩擦でカウンタの指針を進めるようになっている点については,単純な赤窓式にくらべて信頼性が劣る。フィルムの両脇にパーフォレーション(穴)があけられている35mmフィルムであれば,それを利用して確実にカウンタを薦められるようにできるが,摩擦だけというのはどうしても少しばかり不安になる。

6×4.5判コレレ シャッターやレンズの銘が確認できる。

この時代のカメラでは,同じ機種であっても異なるレンズやシャッターが採用されている場合がある。わたしの手元にある6×4.5判のコレレのレンズには,Schneiderの3枚玉レンズ,Radionar 7.5cm F4.5が使われている。シャッターは,1/25秒,1/50秒,1/100秒,1/125秒と,B,Tが使えるPRONTORシャッターである。

6×6判コレレ レンズの銘は読み取りにくい。

このたびいただいた6×6判のコレレのレンズには,Ludwigの3枚玉レンズ,Enoldar 7.5cm F4.5が使われている。シャッターは,1/25秒,1/50秒,1/100秒と,B,Tが使え,エバーセット式(シャッターをチャージさせる動作が不要でいつでもレリーズできるタイプのシャッター)のPRONTOシャッターである。
 PRONTORシャッターは,PRONTOシャッターより後に発売されているので,もしかするとこの2台のうちでは,6×6判のモデルのほうがより早い時期に発売されたものかもしれない。


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