撮影日記


2020年12月21日(月) 天気:晴

2020年に購入したレンズ

COVID-19の影響がみたび大きくなっていることから,観光支援事業「GoToトラベル」が全国的に停止されるようになっている。こういう事業があろうとなかろうと,人は用事があればでかけるし,用事がなければでかけないものである。個人的に,昨年にくらべて東京や大阪へ行く機会がめっきり減少しているのは,単に大きな仕事がこの春で一段落したから,一時的に頻繁な訪問が必要なくなっているだけであるが,結局,「GoToトラベル」の恩恵を受けることができた機会は,1回だけであった(2020年11月15日の日記を参照)。今朝の新聞では,イギリスで変異したウイルスに感染した事例が増えていることから,ロンドンでは3回目の都市封鎖がされたことが報じられており,なかなかこの事態が収束する気配は見えてこない。ともあれ,この年末には大阪への訪問の予定はないので,今年はもう,カメラやレンズが増えることはないだろう。そこで,少し早いが,今年のあいだに購入したレンズについて,ふりかえってみることにする。

一昨年以来の大きな仕事が続いていたこともあり,1月から3月までは,カメラもレンズもなにもあらたに入手することはなかった。4月になってようやく,今年はじめてのレンズを入手した。

タムロンがはじめて発売したズームレンズ,TAMRON ZOOM 95-205mm F6.3である。これは,ライカ判のスチルカメラ用レンズとして商品化されたものとしても,かなり初期のものである。これ以前および同時期に実際に発売になったとされるものは,1959年のVoigtlander-Zoomar 36mm-82mm F2.8,1960年のZoom-NIKKOR Auto 8.5cm-25cm F4-4.5,200mm-600mm F9.5-10.5,AUTO ZOOM ROKKOR 80-160mm F3.5などがあるくらいで,ごく少ない(2020年4月21日の日記を参照)。
 初期のズームレンズということで,後ろボケがひどく乱れて見えたり四隅の像が激しく流れたりするなど,良好ではないが特徴的な写りを示すものと想像していた。しかし,実際にこれで撮ってみると,すなおでまっとうな描写を示す。明るさや最短撮影距離などを欲張っていないせいかもしれない。

夏ごろには,テールボード型や一眼型,組立暗箱など,大判カメラをいくつか入手した。組立暗箱やそのパーツが含まれたガラクタ一式を入手したなかに,小さなレンズが1つ含まれていた。

そこに刻まれていた文字は,「GOERZ DOPP ANASTIGMAT SERIES III No.10643」というものであった。ドイツのゲルツ社のレンズで,シリアル番号があまり大きなものではない。古いゲルツのレンズは,一般的な書籍で扱われることは少ないようで,参考になるものが手元にはみあたらない。ダブルアナスチグマートを称していることからは,1893年以降のものであると考えることができ(*1),まだダゴールを名乗っていないことからは1903年以前のものと考えられる。また,Web上に公開されているシリアルナンバーに関する表には2種類のものがあったが,そのうち1つ(*2)によればNo.10643は「1886年〜1890年」となり,二重アナスチグマットを発売した時期と整合しないが,もう1つ(*3)ではNo.10643は「1896年以前」となって整合する。もし,この表が正しいとすれば,このレンズは1893年から1896年ころのものということになる。ずっと以前より,なんでもよいので19世紀のカメラやレンズがほしいと考えていたのが,予期せぬ形で実現されたことになる。

9月には,ずっと便利に使っていたズームレンズ AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED (2014年3月31日の日記を参照)が故障した。なにせ便利なレンズであるから,故障すると困るのである。同じレンズをまた買うか,この機会に似たようなスペックの別のレンズを買うか,考えることにした。

しかしすぐに,同じレンズが安く売られているのを見つけてしまった。なにも迷う必要のない価格であったので,同じレンズを買うことにしたのであった(2020年9月27日の日記を参照)。

今年,さいごに入手したレンズは,新品で売られているものであった。

FUJIFILM Xシリーズ用の交換レンズ,Made in Chinaの7artisans 25mm F1.8というレンズである。いま,愛用しているデジタル一眼レフカメラ,Kodak DCSシリーズやFUJI FinePix S Proシリーズは,古い製品である。いつまでもかわらずに使えるとはかぎらない。将来,それらにかわって使いたくなるようなデジタルカメラの候補を考えておきたい。その1つとして,それらよりはずっとあたらしいFUJIのデジタルカメラ,FUJIFILM Xシリーズがどのような画像を出力してくれるか,体験しておくことにした。このシステムに使える交換レンズが,7artisansやmeikeといったMade in Chinaのブランドからいろいろ安価に発売されている。これらもあわせて体験すると,おもしろそうである。これは,そのように考えて購入したレンズである(2020年10月19日の日記を参照)。
 このレンズで実際に撮ってみると,中央部はものすごくシャープで立体感も感じるような良好な描写を示す一方,四隅ではすこしピントがはずれると像が流れる傾向が見られる。初期のズームレンズTAMRON 95-205mm F6.3はこれにくらべれば,シャープさは不足しているが,四隅まで全体に安定して描写してくれる。じつに好対照に感じるレンズを,今年のはじめとおわりに入手したということになったようである。

このほかには,以前から気になっていたレンズの1つとして,AF Zoom-NIKKOR 75-300mm F4.5-5.6Sを入手している。ずっと以前に300mmレンズを購入しようと考えたときに候補にしたものの1つで,そのときには当時の新製品だったAF Zoom-NIKKOR ED 70-300mm F4-5.6Dを購入することにした(1998年6月30日の日記を参照)。ただ,三脚座があることや,描写については悪い評価も聞いていなかったので,いつかはあらためて入手したいと考えていたものである。

以前から気になっていたレンズとして,もう1つ,SchneiderのSymmar 210mm F5.6を入手した。本来は210mm F5.6のレンズであるが,前玉をはずして後玉だけにすると370mm F12のレンズとして使うことができ,そのようにして使うときの絞り値が,緑色の文字で併記されている。いわゆる「ジンマーの前玉はずし」という技を体験したくて,入手をした。ただしまだ,そのような撮影方法を試してはいない。

*1 「写真鏡玉」(藤井光蔵・藤井竜蔵 著,浅沼商会,明41.6)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/902527 (国立国会図書館デジタルコレクション)
 165頁(コマ番号88)に,「…ゲルツ会社は…二重アナスチグマットと称し市場に出せり。…時に千八百球十三年なりとす。」とある。

*2 ゲルツ レンズのシリアルナンバー表(無一居)
http://www.photo-china.net/column/goerz.html

*3 Thread: C.P. Goerz Berlin Serial numbers? (Dogmar)(Large Format Photography Forum)
https://www.largeformatphotography.info/forum/showthread.php?41822-C-P-Goerz-Berlin-Serial-numbers-
 4つ目のコメントに表が示されている。




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