撮影日記


2019年09月28日(土) 天気:曇ときどき晴

Kodak DCS 460の終焉

Zoom-NIKKOR Auto 50-300mm F4.5は,初期の高倍率ズームレンズである(2007年5月12日の日記を参照)。なかなか「使おう」という気にならず,ずっとケースの奥にしまいこんでいたものである。今日は,FUJIX DS-505Aで使えるかどうかをたしかめるために,久しぶりに持ち出すことにした。FUJIX DS-505Aは,ごく初期のデジタル一眼レフカメラである。撮像素子はごく小さなものを使っているが,縮小光学系を内蔵していることで,交換レンズをライカ判と同じ感覚で使用できる。ただし,縮小光学系との相性というものがあって,四隅がケラレて実用的に使えないレンズも少なくない(2016年4月19日の日記を参照)。
 Zoom-NIKKOR Auto 50-300mm F4.5とFUJIX DS-505Aとの相性は,どうだろうか。

Zoom-NIKKOR Auto 50-300mm F4.5は,じつに堂々とした,カッコのよいレンズである。
 そのかわり,見ての通り,とても大きくて重い。50mmという標準域から300mmという超望遠域までカバーすることは大きな魅力であるし,これで開放F値がF4.5という明るいレンズが実現されていることは,高く評価したい点だ。しかし,短焦点側の焦点距離と,長焦点側の開放F値をちょっとだけ我慢すれば,AF Zoom-NIKKOR ED 70-300mm F4-5.6Dという(1998年7月6日の日記を参照)コンパクトで軽く,廉価版レンズにしては描写のキレもよいレンズを選ぶことができる。しかも,最短撮影距離もうんと短いものになる。
 それでも,Zoom-NIKKOR Auto 50-300mm F4.5がすばらしく目をみはるような描写をするなら,無理をしてでも使う。しかし,それを古いズームレンズに求めるのは,酷というものだろう。何度か使ってみたが,いまだにこのレンズでは,「いい絵が撮れた」という経験ができていない。
 そして,FUJIX DS-505Aとの相性は,想像以上によくないものだった。

FUJIX DS-505A, Zoom-NIKKOR Auto 50-300mm F4.5 (at 50mm)

短焦点側でも長焦点側でも,内蔵された縮小光学系の影響で,四隅がケラレるのである。

FUJIX DS-505A, Zoom-NIKKOR Auto 50-300mm F4.5 (at 300mm)

残念な,実写結果である。

せっかく,Zoom-NIKKOR Auto 50-300mm F4.5を持ち出したのだから,Kodak DCS 460でも使ってみよう。

このレンズは,本来は非Ai方式のレンズであるが,メーカーによるAi化改造を受けている。だから,非Aiレンズに対応する改造(2017年11月21日の日記を参照)を施していないKodak DCS 460でも,問題なく使うことができる。ファインダーでの見え具合も気持ちよく,各焦点距離で試し撮りをおこなった。
 しかし,撮影時には気がついていなかったのだが,じつはこのときすでに,悲しい状況が発生していたのである。
 撮影したデータをパソコンに転送し,いつものようにRawTherapeeで処理をおこなおうとした。しかし,なにも写っていない。すべてのコマが,まっ黒である。
 まずは,メモリカードのエラーを疑った。カードを交換して適当にそのへんのものを撮るが,やはりまっ黒である。
 メモリカードに問題がないとすれば,カメラのトラブルを疑わねばならない。まずは,撮像素子まわりのようすを観察した。Kodak DCS 460は,デジタルバック部とカメラ部(Nikon F90Xの輸出銘品Nikon N90s)とを簡単に分離できる。これは,撮像素子の掃除にも好都合である。ここをこれまでに何度も分離しているので,撮像素子の取り付け部に無理をかけてしまい,断線等が生じたのではないか,という疑いだ。しかし,目に見える範囲では,問題は生じていない。

こうなると,撮像素子あるいは電子回路が,寿命を迎えてしまったようだと判断せざるをえない。

これはとても悲しいことではあるが,この現実を受け止めるしかない。

ただ,まっ黒に見えた画像をRawTherapeeで+8EVくらいに露光をあげてみたところ,ごく暗く,像が写っていることが確認できた。このことからは,もっとも重大な問題が生じているのは撮像素子そのものではなく,撮像素子からの信号を増幅する部分であるという可能性がうかがえる。トラブルを起こしている部品が,専用のLSIなどではなく,汎用のコンデンサなどであれば,もしかするとふたたび復活することがあるのかもしれな。
 ただ,いまは,それにチャレンジする余裕がない。
 しばらくは,静かにしておくことにしよう。


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