撮影日記


2019年08月11日(日) 天気:晴れ

いまはもう動かない コロムビア電蓄

真空管の写真が必要になった。とりあえず,真空管であれば,なんでもよい。そこで,屋根裏に放置してあるコロムビアの電蓄をひっぱりだしてきた。

残念だが,いまはもう,動かない。数年前に,おそるおそる電源コードをコンセントに差し込んで,電源スイッチをONにしてみたが,まったく反応をしなくなっていた。
 一体型のいわゆるポータブル電蓄ではなく,上半部がレコードプレーヤ,下半部が外部入力端子をそなえたラジオになっている。

ターンテーブルのサイズは,LPレコードよりずっと小さなものである。それでも,カートリッジは「ステレオ」のものになっており,レコードプレーヤ部からの出力も,LとRの2チャンネルが用意されていた。この出力端子をラジカセのライン入力端子につないでLPレコードを再生したところ,実用的な音量が得られたので,このカートリッジはセラミック型とよばれるものだと思う。もちろん,音声は,ステレオになっていた。

しかし,アンプとしても使えるラジオ部に設けられた入力端子は,1チャンネル分しかない。このセットだけでは,ステレオ録音されたLPレコードをステレオ音声で楽しむことができないのである。ステレオの音声を楽しむには,たぶんこれと同型のラジオ(アンプ)をさらに買い増す必要があったのだろうと思う。1950年代には,中波ラジオ局で2つの放送波を使ったステレオ放送(たとえばNHK第1放送で左チャンネル,NHK第2放送で右チャンネルの音声を放送し,2台のラジオで受信する)がおこなわれていたので,ステレオの音声を楽しみたい人は,同型のラジオを2つ買っていただろうことは想像できる。

ラジオ部分は,中波(MW)と短波(SW)の2バンド仕様になっている。まだ,FM放送には対応していない。また,外部入力(PH)端子は,ライン入力レベルに対応しているようで,このレコードプレーヤの音を再生することは(片チャンネルだけだが)もちろんできるし,ラジカセのライン出力からつないで,カセットテープやFM放送の音声を再生することも可能であった。

動いていていたころは,このラジオでNHK第1放送「夢のハーモニー」を聞いたり,ラジカセのライン出力をつないでFM放送の「ジェットストリーム」を聞いたりすることが多かった。やわらかくて心地よい音が出ていたので,それらの番組が流してくれる音楽に,とてもよく似合っていたと感じていたのである。
 「真空管アンプはやわらかい音がする」などという評価を見かけることもあるが,私はこのラジオが心地よい音を出してくれるのは,「回路に真空管を使っているから」ではなく,「スピーカーの空間が大きいから」だと信じている。


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