撮影日記


2018年02月07日(火) 天気:晴れ

「日本カメラ博物館」でKodak DCS (100)を見た

先週末までの雪はかなり激しかったようで,少しでも日当たりのよくなさそうな道の隅には,除雪された雪がまだ解けずに残っている。今回の東京での所用でさいごに立ち寄った場所の近くに,「日本カメラ博物館」がある。ここにもご多分に漏れず,雪が残っている。

「日本カメラ博物館」では,(2018年2月18日までの予定で)「世界を制した日本のカメラ〜もうひとつの日本カメラ史〜」という特別展が開催されている。古いカメラがおもしろいのは,「Made in Japanが『安かろう悪かろうの模倣品』から『世界最先端の最高性能』に至る過程を眺められるからという面がある」からではないかと,友人と意見が一致したことがあった(2015年5月10日の日記を参照)。だから,このような視点の展示は,きっとおもしろいに違いない。

平日の午後だからか,「日本カメラ博物館」の展示室は閑散としていた。それでも人の出入りはあり,まったくの貸し切り状態というわけではない。

展示の内容は,じゅうぶんに満足のできるものであった。

興味深く見ることができたコーナーの1つに,「占領下の日本のカメラ」がある。「Made in Occupied Japan」(MIOJ)表記がされるようになった背景や時期など,簡潔にわかりやすく解説されている。MIOJ表記のされたさまざまな実例や,進駐軍の売店等に向けて供給された製品につけられた「E・P」「シーピーオー」あるいは占領下の沖縄で製造された「Ryukyu」などの表記がされた実物が展示されている。さらに,東西にわけられて占領されたドイツでの「US-ZONE GERMANY」表記や「U.S.S.R. Occupied」表記の実物もあった。
 私の手元にも「U.S.S.R. Occupied」の表記がされた製品が1つあるが,これは金属や皮の表面に文字が刻まれたものではなく,スタンプが押されたようなものである(2009年5月16日の日記を参照)。ほんとうに当時のものなのかどうか,少々,不安のあるものだった。「日本カメラ博物館」の展示のなかにも文字の大きさなどは違っているが,同じように白いスタンプが押された例があったので,このように白いスタンプを押すことはふつうにおこなわれていたのであろう。

「四畳半メーカー」と表現されるメーカーによる,さまざまな種類の二眼レフカメラやスプリングカメラの展示も圧巻であったが,これは内容としてやや食傷気味である。むしろ,東南アジアや南米などで見つかったとされる,「Canon」「Nikon」「OLYMPUS」などのブランドを勝手に使った偽物の展示がおもしろい。模倣する側だったMade in Japanが,模倣いやそれよりもっと悪質な偽造の対象にまで,発展したということである。

個人的には,モーターを内蔵したユニットがシャッターレリーズダイアルを回すことで絞り優先AEを実現していたVivitar XC-3 (2003年5月19日の日記を参照)の正体が,COSINA Hi-Lite CSRであることを確認できたのは,大きな収穫であった。

常設展では「撮影不可」だったが,特別展の展示内容は「撮影可」であった。

特別展だけではなく,常設展のほうにも興味深いものは多い。

今回はとくに,「スチルビデオカメラ」とよばれた製品群や,初期のディジタルカメラを興味深く眺めることができた。
 とくに,Kodak DCS (100)は,こういう場所でなければ見られないものだろう。よく知られているようにこれは,世界ではじめてのディジタル一眼レフカメラであるとされている。カメラ本体はNikon F3を利用しており,その背面に撮像素子を含むユニットがつき,さらに別の画像処理ユニットにつながっている。それが,思っていた以上に,大きなものである。しかもその筐体には,記憶容量が「32MB」であることを示すシールが貼ってある。32MBというのは,Kodak DCSが発売された1991年当時としては,かなりの大容量だったことだろう。たとえば初期のコンパクトディジタルカメラでよく用いられていたスマートメディアで32MBのものが発売されたのは,1999年のことである。
 さらに,Nikon F-801S (実際には輸出用モデルのN8008s)を利用した,Kodak DCS 200,Nikon F5を利用したKodak DCS 620のほか,Canon EOS-1nを利用したKodak DCS 560や,後の機種だが比較的レアとされるKodak DCS Pro SLR/cも展示されていた。Kodak DCS 200の背面が,Kodak DCS 460の背面と似たようなものであることが確認できたことは個人的に大きな収穫である。ただし,Kodak DCS 200の背面には,ISO感度を設定できるような表記があったことが気になる点だ。そして,Kodak DCS 560や620以降の機種には,背面に液晶モニタが搭載されており,このあたりに大きな世代の違いがあることが実感できる。
 なお個人的な感想をもう1つつけくわえると,APS一眼レフカメラNikon PRONEA600i (実際には輸出用モデルのPRONEA 6i)を利用した,Kodak DCS 315 (あるいは330)の展示がなかったのが,とても残念である。

特別展だけでなく,毎回,自分なりのテーマを変えながら常設展を眺めるのも,おもしろいことだろう。「日本カメラ博物館」に,いつでも気軽に行けるようなところにお住まいの人が,とてもうらやましい。


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