撮影日記


2017年11月28日(火) 天気:くもり時々はれ

さいごのスチルビデオカメラ?京セラDA-1

先々週の火曜日も,大阪に出張だった。仕事の用事が終わったのは21時に近く,その後に梅田を通ったものの,八百富写真機店の罠にはまることはなかった。なぜならば,さすがの八百富写真機店も,21時には閉店してしまうのである。ただし,罠にはまる危険性はなくなるものの,そのころにはほかのお店も閉まっているので,お土産を買って帰ることもできない。

そして今日も,大阪に出張である。仕事の用事が終わったときにはまだ,なんとか八百富写真機店は営業中であった。
 大阪駅中央店のジャンクコーナーには,いつものように多くの商品が並べられている。
 まずはじめに目についたカメラは,これだ。

KYOCERA DA-1というカメラである。一見するとディジタルカメラにも見えるが,手前に並べたフロッピーディスクからわかるように,これはスチルビデオカメラとよばれたカメラである。
 スチルビデオカメラは,ムービーの家庭用ビデオカメラと同じような撮像素子を使い,アナログのビデオ信号として静止画を記録するカメラである。撮影した画像データは,専用の2インチフロッピーディスク(ビデオフロッピー)に記録される。1枚のディスクに,50カットの画像を記録することができる。

さいしょのスチルビデオカメラは,1981年にSONYが発表した「マビカ」試作品とされる(2016年2月20日の日記を参照)。当初はおもに報道などの業務用として使われていたようで,一般向けの製品とされるスチルビデオカメラは1988年ころから発売されるようになった。しかし,ムービーのビデオカメラにくらべれば安価ではあるものの,スチルビデオカメラはフィルムで撮るコンパクトカメラよりも高価であった。スチルビデオカメラで撮った画像はテレビで見ることができるとはいえ,プリントしたときの画質はフィルムのコンパクトカメラで撮った写真に及ぶものではない。パソコンに画像を取りこんで使うような環境も普及しておらず,登場が時期尚早だったともいえる。スチルビデオカメラは,1995年にCASIO QV-10が発売されて以降は,ディジタルカメラに完全にとってかわられることになった。

KYOCERA DA-1は,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」では,vol.112(1996年)およびvol.113(1997年)に掲載されている。CASIO QV-10よりも,あとに発売されたことになる。おそらく,さいごのスチルビデオカメラであろう。
 なお,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」に掲載されたさいしょのスチルビデオカメラ関連の機器は,vol.83(1985年)に掲載されている富士フイルムのTVフォトプレーヤP3である。このころはまだ,一般向けとされるスチルビデオカメラは発売されておらず,フィルムで撮った写真を写真店で「ビデオフロッピー」に書きこんでもらい,これをプレーヤで再生してテレビで鑑賞するということになっていた(2016年3月10日の日記を参照)。
 KYOCERA DA-1がもつ最大の特徴は,パソコンに画像を転送することができる「PC接続キット」が用意されていることである。CASIO QV-10がヒット商品になった理由としては,液晶モニタが内蔵されていて撮影した画像をすぐに見ることができる点と,撮影した画像をパソコンに転送して利用できるという点が指摘されることが多い。電気的に画像を記録するカメラで撮影した画像は,多少画質が悪くても,パソコンに転送して利用できることに大きな意味があるということだろう。
 KYOCERA DA-1は,撮影した画像をすぐに確認できる液晶モニタこそ搭載しなかったが,撮影した画像をパソコンに転送する機能はもたせたのである。これは,テレビに写すことを主にしていたそれまでのスチルビデオカメラとは,大きく異なる点である。このことからKYOCERA DA-1を,スチルビデオカメラからディジタルカメラへ移行する段階の機器だとみなすこともできるだろう。

日本カメラショー「カメラ総合カタログ」に掲載されたスチルビデオカメラ関連機器の一覧

このたび救出したKYOCERA DA-1の値札には「メディア3枚付き」とあったが,いっしょに輪ゴムで止められていたのは,ケースにはいった2枚だけ。3枚目のディスクは,カメラに装填されたままであった。
 電源として,2本のCR123Aリチウム電池を使う。電池を入れて,レンズのスライドカバーを下げれば,電源がONになった。装填されているフロッピーディスクが,コツコツと音を立てる。上面にある小さな液晶ディスプレイに,「08」という数値が表示された。このフロッピーディスクには,すでに画像が記録されているようである。シャッターレリーズボタンを押せば,ピッと音がして,フロッピーディスクの動作音がつづく。液晶ディスプレイの数値も,1つ増えていた。いちおう,撮影の動作をしているようだ。
 レンズカバーをもどして電源をOFFにし,上面の「PLAY」スイッチをONにする。フロッピーディスクの動作音がして,液晶ディスプレイに数値が表示される。ビデオ出力の信号を適当なモニタに接続すれば,撮影した画像が表示された。コマ送りなどもできたので,基本的な動作は問題ないと判断する。

実用性の面からは,スチルビデオカメラに存在の意義を見出すことはできない。しかし,ディジタルカメラが普及する前に,このようなシステムのカメラが存在していたことは,ずっと記憶に残されるべきことである。一般向けとされるスチルビデオカメラ関連製品としてさいしょのものと考えらえる,富士フイルムのTVフォトプレーヤP3と,さいごのスチルビデオカメラと考えられるKYOUCERA DA-1の2つを救出し保護できていることで,じゅうぶんに満足することにしよう。


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