撮影日記


2017年11月05日(日) 天気:はれ

樽床ダムは霧の中

以前は月になんども訪れたことのある三段峡も,最近はすっかりごぶさたしている。なんとか,紅葉の季節にだけは,欠かさずに訪れるようにしたい。
 昨日,中国山地方面では激しい雨が降ることもあったが,今日の天気予報は「晴れ」である。このような朝は,濃い霧が発生する可能性が高い。三段峡へ向かう川沿いの山々は,期待通り,濃い霧のなかにある。
 三段峡の最上流部にある樽床ダムに到着したのは,7時を過ぎたころ。すでに,クルマ2台ほどの先客があるようだ。樽床ダムによってつくられた聖湖の水面からは,濃い霧がたちのぼる。

Kodan DCS Pro 14n, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

7時半ころはすっかり夜が明けた時刻であるが,濃い霧のせいかあたりはまだ,薄暗い。それでも太陽は少しずつ高くなり,次第にダムの向こうを黄金色に染める。

Kodan DCS Pro 14n, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

例年であれば,この時期は紅葉がいちばんの見ごろとなる。そのためか,まだ霧が濃い時間帯でも,つぎつぎに人が訪れるようで,ときおりクルマの音や人の話し声が聞こえてくる。ダムの付近でカメラを手にした人がうろうろしているのが見えたが,ダムを訪れる人のシルエットを撮影しようとしていたのであろうか。

8時半を過ぎたころ,ダムから見下ろす峡谷にも朝日がさしこみはじめる。水面からたちのぼる霧が,朝日に輝いている。朝日はかなり強くなっており,霧はその姿を刻一刻と変えながら,目に見えて晴れていく。

Kodan DCS Pro 14n, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

9時前になると,木々がくっきりとした影を描くようになってきた。このころには,峡谷内から,霧はほとんど消えていた。

Kodan DCS Pro 14n, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

振り返ると,聖湖の水面からも霧は消え去っていた。昨日の雨で洗い流されたのか,空はいつも以上に澄んでいるように思える。青空と紅葉した木々の姿が,鏡のような湖面に美しく反射している。

Kodan DCS Pro 14n, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

よく晴れた青空,ほどよく紅葉した山々,そしてそれらをストレートに反射する静かな湖面,これらが順光でながめられる状態は美しく,見飽きないものである。
 しかし,ここまでの撮影で,4本あるKodak DCS Pro 14nのバッテリーを2本まで使いきってしまった。今日の目的地へも,急ぐことにしよう。

樽床ダムから急な坂道を下れば,すぐに三ツ滝という美しい滝がある。この坂が急ではあるものの,駐車できる場所からの距離はごく近いものなので,お手軽に滝を眺めたい人には最適であろう。ここから先の探勝路はさほど急ではなく,途中に,貴船滝,竜門,繰糸滝,出合滝などと名づけられた見どころが続く。
 今日の撮影でいちばんの目的地は,そこに続く位置にある,娘滝と名づけられた小さな滝だ。

Kodan DCS Pro 14n, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

探勝路が,小さな橋で小さな流れを渡るところ,その茂みの向こうにある小さな滝である。
 このあたりは,餅ノ木の集落を通る大規模林道から,三ツ滝方面への探勝路にはいってほどなくの場所であり,平坦で歩きやすい場所だ。だから,すいすい歩いてしまい,存在を見落としがちになるかもしれない。
 今日,この小さな滝を目的地としたのは,このカメラを使うためである。

フジのコンパクトディジタルカメラ,FUJI FinePix F10を専用の「防水プロテクター WP-FXF10」に収めたものである。つい2週間ほど前に,たまたま入手したものだ。取扱説明書のほか,予備のOリングやグリースまで残されていたので,じゅうぶんに実用できる状態である。

この防水プロテクターは,水深40mでの撮影にも対応できるように企画されている。それくらいの水圧に耐えられるのならば,滝の水しぶきにも,耐えられるのではないだろうか。

FUJI FinePix F10, WP-FXF10, FUJINON Zoom Lens 8-24mm F2.8-5

娘滝は,滝のそばまで容易に近づくことができる。こういう構図をつくりやすいと期待して,今日の目的地をここに選んだのである。

水深40mでの撮影に対応できるくらいだから,水面ギリギリの高さから滝の最下部を撮るために水につけても,カメラには問題ない。

FUJI FinePix F10, WP-FXF10, FUJINON Zoom Lens 8-24mm F2.8-5

水が落下して生じる泡を水中から撮るために沈めてもことも,カメラには問題ない。

FUJI FinePix F10, WP-FXF10, FUJINON Zoom Lens 8-24mm F2.8-5

このような撮影で難しいこととして,どのようにしてファインダーを覗くか,という問題がある。カメラは濡れても問題ないが,撮影者自身は濡れたくない。夏に海水浴に来たのであれば,そもそも濡れるために来ているのであるから問題ない。だが,風に冷たさを感じる時期に,山道を歩きに来ているのだから,濡れたくない。濡れるのが顔だけであればさほど問題ではないが,カメラのファインダーあるいは背面の液晶モニタを覗こうとするならば,頭から全身に水を浴びるだけの覚悟が必要である。そして,その水圧に負けぬように,カメラを支えなければならない。
 だから,これらの画像は,ファインダー等を覗かずにおおよその見当をつけて撮ったものである。ディジタルカメラだから気軽にできる,なんども撮ってはやり直すという方法で撮ったものである。

樽床ダムから娘滝までの道中も,ほどよく紅葉し,まさに見ごろであった。赤くなった葉と,まだ緑色の葉が,それぞれ太陽の光を透過して,美しい色の対比を見せてくれている。

Kodan DCS Pro 14n, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

足元に落ちている葉も,まだ,あまり傷んでいない。木の根元についたコケの緑との対比が,美しい。
 頭上でも足元でも,赤と緑がそれぞれの色を主張している。空間全体が,紅葉時の美しさに包みこまれている。

Kodan DCS Pro 14n, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

貴船滝までもどってきたのは,お昼前ころ。ここでも,防水プロテクターが活躍する。しかし,ここではしぶきが少なく,背景との明暗差も大きすぎて,構図がつくりにくかった。

FUJI FinePix F10, WP-FXF10, FUJINON Zoom Lens 8-24mm F2.8-5

この時間帯になると,探勝路で出会う人の数も多い。長距離を歩き通すことをめざしているかのような人もあれば,手短かにちょっと降りてきただけという人まで,さまざまな人がこの美しく快適な空間を歩いている。
 さらに,三ツ滝には,沢登り(あるいは岩登り)に挑もうとするかのようなグループの姿も見える。

Kodan DCS Pro 14n, AF Zoom-NIKKOR ED 70-300mm F4-5.6D

「あの人がいなければいいのになあ」と言いながら写真を撮っていたグループもいたが,なにを言うか。あそこに,ちゃんとした装備の人がいるからこそ,絵になるのだ。

Kodan DCS Pro 14n, AF-S VR Zoom-NIKKOR 24-120mm F3.5-5.6G IF-ED

人のいない滝なら,また,いつでも撮れるだろう。なによりも,あそこに人がいるからこそ,この滝の雄大さがよりわかりやすくなるというものだ。


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