撮影日記


2017年10月25日(水) 天気:はれ

Kodak DCS 460 あわや水没!?

PC-NIKKOR 35mm F3.5は,35mm判一眼レフカメラ用レンズとして世界ではじめての,シフトアオリが可能なレンズとのことである。Nikon Fの時代に発売されたこのレンズは,のちのAi方式とよばれるボディのカメラやディジタル一眼レフカメラではごく一部の機種を除くと装着そのものができない。かつてニコンでは,Ai方式以前のレンズをAi方式のカメラに装着できる改造サービスを受けていたが,このレンズはその対象外であった。また,絞りリングの一部を削ることで強引にAi方式に対応させる方法もあるが,PC-NIKKOR 35mm F3.5ではその方法が使えそうにない。可能だとしても,このレンズには,不可逆的な改造を加えたくない。

絞りリングを削って強引にAi方式に対応させた例(NIKKOR 300mm F4.5)

PC-NIKKOR 35mm F3.5を,私が所有しているディジタル一眼レフカメラでも使うために,Nikon F90Xを改造することにした。Nikon F90XのAi連動ピンを破壊してPC-NIKKOR 35mm F3.5を装着できるようにし,これをディジタルバックであるKodak DCS 460と組みあわせるのである(2017年10月22日の日記を参照)。これで,目的は達成した。PC-NIKKOR 35mm F3.5を,ディジタル一眼レフカメラで使えるようになった。ただし,Kodak DCS 460には撮影した画像を確認するための液晶モニタがなく,撮影データをパソコンに転送して処理しなければ,撮影結果を確認することができない。また,撮像素子がライカ判より少し小さい27.6mm×18.4mm(便宜的にAPS-Hサイズとよばれるもの)なので,約45mmレンズ相当の範囲しか写せないのがものたりない。あまり広角ではないレンズでは,シフトアオリのありがたみがわかりにくいものだ。

PC-NIKKOR 35mm F3.5が装着できるならば,それ以外のAi方式非対応のレンズ(オートニッコールやニューニッコールなどの非Aiレンズ)も難なく装着できる。ただし,絞りリングの動きをカメラボディへ伝達する手段がないので,カメラボディはつねにレンズが開放であると認識する。PC-NIKKOR 35mm F3.5の絞りはプリセット方式であり,カメラボディに絞りの情報を伝達する必要がないので使用に問題はない。しかし,それ以外の非Aiレンズでは,開放以外の絞りではカメラに内蔵されたTTL露出計を使った開放測光ができないことになり,これは問題である。
 だから,マニュアル露出モードにしてプレビューボタン(一時的に絞りこんで,絞りの効果をファインダーで確認するためのボタン)を押しこみ,絞りこみ測光をすればいいだろうと考えていた。しかし,世の中は甘くない。Nikon F90Xでプレビューボタンを押している間は,露出計がはたらかないようになっていたのである。これまでNikon F90Xで絞りこみ測光をしようなどと考えたことがなかったので,気がつかなかったのだ。せっかく非Aiレンズを使えるディジタル一眼レフカメラが用意できたのに,TTL露出計がまったく使えないのはあまりに残念である。撮影した画像を確認する液晶モニタが内蔵されていれば,露出計がなくても撮影結果のヒストグラムなどを見ながら露出を追いこんでいくという方法が使えるが,Kodak DCS 460にはそのような機能はない。

そこで,露出補正を利用して絞り優先AEを使うことにした。たとえばレンズを3段絞ったら,+3.0EVの露出補正をかけて絞り優先AE撮影をおこなえばよい。カメラはレンズが開放であると認識しているが,実際に露光されるときには3.0EV暗くなっている。その分を露出補正しておくのである。幸い,Nikon F90Xの露出補正は,0.3EV刻みで,±5.0EVまで設定できる。5段あれば,開放がF2.8のレンズならF16まで,開放がF1.4のレンズでもF8まで使える。Kodak DCS 460はISO 80相当であり,Nikon F90Xのシャッター速度は1/8000秒まで使えるのだから,じゅうぶんに実用になる。

Nikon F90Xにこそ,Nikon F-501AFのような「瞬間絞りこみ測光」(2015年3月18日の日記を参照)がほしいと思った瞬間である。

動作を確認できたので,「楠木の大雁木」で試し撮りすることにした。用意したレンズは,PC-NIKKOR 35mm F3.5とNIKKOR-N AUTO 24mm F2.8である。満潮に近いのか,石段の途中にまで水位があがっている。さっそく1カット撮ろうとしたとき,うかつにも手をすべらせてしまい,表面にぎりぎり水が届いている段に,上を向いた状態で落としてしまった。完全に水没したわけではないが,背面はかなり濡れてしまった。記録メディアを入れる蓋のすきまから,水も入ったようである。
 すぐに拾い上げて電源スイッチをオフにし,表面についた水をふきとる。電源スイッチをオフにしたことで,Nikon F90Xの電源はすぐに切れたが,Kodak DCS 460側の電源がオフにならない。これはヤバイ。内部で回路が短絡している可能性がある。Kodak DCS 460にはバッテリーが内蔵されており,バッテリーパックではないので,それを抜いて強制的に電源をオフにすることができない。ネジを回して蓋をあける。基板や撮像素子に水はかかってないように見えるが,内部はそれなりに水滴がついている。そのうち,電源がオフになっていた。この間に,回路がダメになってしまったのだろうか?そのころになってようやくバッテリーのコードが抜けたのだが,手遅れだろうか?とりいそぎ水を拭き取り,帰宅後,防湿庫へ収める。
 バッテリーの電圧を確認すると,9V程度にまで下がっている。電源がオフになったのは,回路がダメになったからではなく,たんにバッテリーが消耗しただけなのだろう。じゅうぶんに乾いたころ,恐る恐るバッテリーをつなぐと,Kodak DCS 460は起動した。しかし,すぐに電源が切れた。いったんバッテリーをはずし,あらためてつなぐ。同じように起動するが,インジケータはバッテリー切れを表示しており,すぐに電源が切れた。電源がオフになったのは,時間が経過してバッテリーの電圧が下がってしまったのが原因で間違いないだろう。
 なお,落下の衝撃のせいだろうか,充電用のコネクタをつないだコードが切れてしまっていた。念のために,もうしばらく乾かしてから,この部分の修理をすることにしよう。


← 前のページ もくじ 次のページ →