撮影日記


2017年09月05日(火) 天気:雨のち曇

APSカメラの栄枯

APS (Advanced Photo System)は,1996年に発売されたシステムである。フィルムに磁気記録層が設けられ,カメラと現像所とのあいだでデータが連携されるようになっている。カメラもフィルムも,そして現像所の設備としても,まったくあたらしいシステムが導入されたのであった。APSはカラーポジフィルムも発売されるなど一時的に大きな話題にはなったものの,2011年にはフィルムの販売終了がアナウンスされることになり,ごく短命に終わっている。
 フィルムの販売が終了するに先立って,カメラも急激にカタログから消えていった。カメラの発売時期については,雑誌の記事等を参照することで,あとからでも把握できる。一方で,販売終了については,把握しにくい。メーカーが一般の人に対して出荷の終了を公表することはあまりなく,メーカーの出荷が終了しても販売店の店頭にはずっと見られることがあるから,販売終了時期はわかりにくい。
 そこで,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」(1995年版〜2007年版)への掲載の有無を統一的な基準として,各機種ごとのおおよその販売期間をまとめてみた。

この表は,メーカー名および機種名でソートしている。一見して,1998年から1999年にかけての時期が,もっとも多くの機種が発売されていたピークであることがわかる。多くのメーカーが2002年までにAPSカメラをラインアップしなくなっており,日本カメラショー「カメラ総合カタログ」2003年版でラインアップがあるのは,キヤノンの1機種とフジの3機種のみにまで減っている。2004年版ではフジだけがラインアップしており,2007年版ではすべてAPSカメラがカタログから消えた。2002年から2003年ころといえば,コンパクトディジタルカメラで200万画素から300万画素くらいのものが多く登場した時期である。各カメラメーカーとも,開発の軸をAPSカメラからディジタルカメラへ移していっていたのだろう。
 この表で見れば,2004年版ではじめて掲載されたフジの「ネクシアQ1ズーム」が,APSカメラ最後の新製品ということになる。

APSカメラとしは,いわゆるコンパクトカメラだけではなく,システム一眼レフカメラもラインアップされていた。次の表は,APS一眼レフカメラに限定したものである。

APS一眼レフカメラのラインアップを見ても,APSカメラのピークは1998年から1999年の時期にあったとみなすことができる。

ここに,ディジタル一眼レフカメラの発売状況を加えてみよう。

市場がAPSカメラを求めなくなったのか,メーカーがAPSカメラの発売をみかぎったのか,そのあたりの因果関係はなんとも言えない。しかし,APS一眼レフカメラと入れかわるように,低価格化を実現したディジタル一眼レフカメラが登場しているようには見える。
 結局,「APS」という名称は,ディジタルカメラの撮像素子の大きさをあらわすための語句としてのみ,残っているのが現実だ。まだ市場にはAPSフィルム(IX240カートリッジフィルム)の在庫もあり,現像のインフラも残っている。ごく短命に終わったAPSというシステムを楽しめるのは,いまが最後であろう。


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